【ライター望月の駅弁膝栗毛】

381系電車・特急「やくも」、山陰本線・直江～出雲市間

岡山からおよそ3時間、特急「やくも」号は、出雲を代表する河川・斐伊川（ひいかわ）を渡って、終着の出雲市へラストスパートをかけていきます。
昭和50年生まれの筆者にとっては、物心ついたときの国鉄特急といえばこのカオ。
初めて見た国鉄特急も183系「あまぎ」（東京～伊豆急下田間、踊り子の前身）でした。
振り子式の381系電車は、183系よりちょっと丸顔なんですよね。

島根牛すき焼き煮切り丼

日本海に面した山陰エリアでは、カニをはじめとした新鮮な魚介系駅弁に目を奪われてしまいますが、松江は肉駅弁も充実しています。
特に「一文字家」が、2017年の京王百貨店新宿店「第52回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」に合わせて投入した「島根牛すき焼き煮切り丼」（1,200円）は要注目。
何と言っても、きょうは11月29日、“いい肉”駅弁をいただきたいものです。

島根牛すき焼き煮切り丼

【お品書き】
・白飯（島根県産コシヒカリ）
・島根牛すき焼き風煮（牛肉・玉ねぎ・こんにゃく）
・煮玉子
・煮切り汁（すっぽん出汁）
・大根しそ漬け

島根牛すき焼き煮切り丼

島根牛のすき焼き風煮が、島根県産コシヒカリの白いご飯の上に載って、その真ん中に、一文字家の駅弁ではおなじみの“とろとろ玉子”がドーンと載っています。
島根ののどかな環境のなかで、のんびりストレスなく育った島根牛を使い、玉子が付いているとはいえ、ここまでは一見、よくある牛肉駅弁。
でも、「島根牛すき焼き風煮切り丼」は、ココへもうひと手間加えます。

島根牛すき焼き煮切り丼

およそ4年をかけて開発したという、別添の「煮切り汁」を加えるんです。
「煮切り」は牛肉を醤油や砂糖を水が少なくなるまで煮詰め、うま味を閉じ込める製法。
このときにできた汁に、一文字家伝統のスッポンを使った万能出汁、熱処理していない「まつえ蜂蜜」や地醤油、地酒などを加えたのが、一文字家の「煮切り汁」！
まさに、ありとあらゆる食材の「うま味」だけが濃縮された汁がここにあります。

島根牛すき焼き煮切り丼

バラや肩など厳選されたすき焼きに最適な牛肉から白飯へ「煮切り汁」が染みわたるなか、割り箸を玉子に入れると、黄身がトロ～ンと溢れていくのが至福の瞬間です。
一文字家によると出雲の米麹文化を駅弁に盛り込みたいという思いから出来た駅弁で、4年という歳月は、主にしょうゆ等に使う麹の選定にかけた時間なのだそう。
牛肉の美味しさはもちろん、じつは厳選されたこだわりの調味料に「出雲の食文化」がギュッと凝縮された「島根牛すき焼き煮切り丼」なのです。

381系電車・特急「やくも」、山陰本線・出雲市～直江間

特急「やくも」は基本4両編成ですが、週末や運行時間帯などによって、6～7両編成で運行される列車も多くあります。
現在、岡山発着で往復に「やくも」指定席が利用でき、山陰エリアが特急を含め4日間乗り放題の「山陰フリーパス」（10,000円、3日前まで販売、e5489当日受取可）も販売中。
お得に国鉄形特急に乗って、少し“いい肉”の駅弁を楽しんでみてはいかがでしょうか？