【ライター望月の駅弁膝栗毛】
新幹線だけでなく、様々な在来線車両も保存されている「リニア・鉄道館」。
それぞれの世代によって、「懐かしいなぁ」と感じる車両があると思います。
昭和50(1975)年・静岡生まれの私が思い入れのある展示車両は、クハ111形式電車。
東海道本線の普通列車を中心に活躍した111系電車の先頭車両で、リニア・鉄道館には、トップナンバーの「クハ111-1」が保存されています。
静岡運転所(現・静岡車両区)所属車両であることを示す「静シス」の文字。
国鉄時代末期まで使われていた「静岡―東京」のサボ(行先表示板)。
小さい頃は、静岡~東京間を走るグリーン車付きの普通列車によく乗っていました。
JR発足後もこの車両は静岡の車庫にあって、静岡駅手前で列車から見えていました。
その後は平成21(2009)年まで、佐久間レールパーク(当時)で保存展示されていました。
昔ながらの青いモケットのボックスシートが並ぶ「クハ111-1」。
最寄りの身延線はまだ旧型国電で、富士で東海道線の湘南色の列車がやって来ると、その軽快な走りに、子供ごころにもワクワクした思い出がよみがえります。
静岡所属の111・113系電車にも、「禁煙区間:東京~平塚間」のステッカーが貼られて、中吊り広告も多く、静岡に居ながら“東京っぽい”空気が感じられる電車でした。
もう1つ馴染み深いのが、急行列車を中心に活躍した165系電車。
伺った日、ヘッドマークは飯田線の「伊那路」と表示されていましたが、私にとっての思い出は、やっぱり東海道線の「東海」と身延線の「富士川」。
「東海」は「ごてんば」を併結していた時代の153系電車「東海3号」のかすかな記憶から、大学進学で上京するときに乗った「東海2号」の記憶まで思い出されて来ます。
リニア・鉄道館には、「東海」などで活躍したグリーン車の「サロ165-106」もあります。
東京~大垣間の普通列車、“大垣夜行”の思い出がある方も多いことでしょう。
JR初期まで165系電車は大垣電車区(名カキ、現・大垣車両区)の所属だったこともあり、車内の禁煙案内が「禁煙区間:名古屋~多治見」などとなっていた記憶があります。
私は静岡に居ながら、165系電車には“名古屋っぽい”雰囲気を感じていたものです。
そんな「リニア・鉄道館」の2階には、なんとグリーン車マークのテーブルが…。
しかも、このグリーン車マーク、4つに分割することが出来る優れもの。
2018年でこのマークをはじめ、多くの国鉄特急のヘッドマークを手掛けたデザイナーの黒岩保美さんが亡くなって20年、2019年はグリーン車誕生50年。
時代を超えて、ちょっぴり幸せな気分にさせてくれる“グリーン車マーク”テーブルです。
このテーブルで弁当をいただくなら、同じ2階にある「デリカステーション」へ。
「ジェイアール東海パッセンジャーズ」が手掛ける名古屋駅の駅弁や東海道新幹線の車内販売で出されているコーヒーはもちろん、「リニア・鉄道館」限定の弁当も販売されています。
グリーン車マークのテーブルで新幹線などの車両を眺めながらいただいてもよし、お店の前にも、別に多くの飲食スペースが設けられています。
最近は陳列ケースから自分で手に取って駅弁を買うスタイルのお店が増えており、東京・名古屋をはじめ東海道新幹線の主要駅にある、ジェイアール東海パッセンジャーズの「デリカステーション」も多くはそうですが、リニア・鉄道館のデリカステーションはいまも対面販売!
やっぱり店員さんと顔を合わせ、話をして駅弁を買うと、美味しさも一味違うもの。
TOICAをはじめ、交通系電子マネーが使えますので、会計も小銭いらずで楽チンです。
ここで弁当を買うなら、やっぱり「リニア・鉄道館」オリジナルの幕の内弁当「復刻 昭和39年新幹線開業弁当」(820円)がお薦め。
経木の折が使われ、弁当の中身も掛け紙も、昭和39(1964)年の東海道新幹線開業当時に東京駅で販売されたものが、できる限り忠実に再現されています。
特に掛け紙には、当時の0系新幹線電車12両編成の編成案内も印刷されています。
【おしながき】
・ご飯
・白身魚フライ
・梅しそ鶏竜田揚げ
・ごぼう入り牛肉しぐれ煮
・蕗佃煮
・牛蒡甘辛煮
・玉子焼
・蒲鉾
・蓮根酢漬け
・漬物
・梅干
・さくらんぼ
「リニア・鉄道館」では、屋外の117系電車の車内でも食事を楽しめます。
117系電車は、昭和55(1980)年に関西地区の新快速として運転を開始。
名古屋地区でも、昭和57(1982)年から「東海ライナー」として活躍しました。
この車両、東は浜松までやって来ていましたので、中学生の頃、「青春18きっぷ」のシーズンに合わせて、117系電車に乗車できるような旅程を組んだ思い出があります。
117系電車には木目調の壁、こげ茶の転換クロスシート(向きを自由に変えられる座席)が装備され、従来の近郊形電車とは別格の居住性が特徴でした。
学生の頃は、浜松~米原間の快速(新快速)列車でもしばしばお世話になったものです。
そんな思い出に浸りながら、経木の折を片手に鉄道旅気分。
レトロな雰囲気の幕の内でありながら、思いのほか大きな白身魚フライがサプライズ。
さらに旅の思い出のお陰で、美味しさが3割くらい増幅された感じがします。
夢と想い出のミュージアムと銘打たれた、名古屋の「リニア・鉄道館」。
この冬は、運転台ガイドツアー(12月26日~1月6日の休館日除く毎日)や鉄道の表記ツアー(2月9日~3月17日の土休日)など、初めての催しを含む、様々なイベントが予定されています。
まずは“平成最後の”冬休み、「リニア・鉄道館」で自分自身の思い出を振り返りながら、新たな時代への夢を探してみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/