【ライター望月の駅弁膝栗毛】
有名な城崎温泉へ鉄道で入るには、京都または大阪が玄関口。
京都から山陰本線を走るのは、特急「きのさき」号が中心。
新大阪から福知山線・山陰本線経由で走るのが、特急「こうのとり」号です。
2つの特急は福知山駅で接続しており、乗り継ぐ場合は通しの特急料金となります。
「きのさき」「こうのとり」共に、赤いラインの287系・289系電車が活躍しています。
そんな「きのさき」「こうのとり」号も停車する、山陰本線和田山駅の駅弁屋さんといえば、「福廼家綜合食品」で、かつてはユニークな名前の駅弁が多く販売されていました。
本日(1月22日)までの開催の京王百貨店新宿店「第54回・元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」で、そのユニークな名前の駅弁が復刻販売されています。
その駅弁の名は?
その名は、「モー牛牛づめ弁当(復刻版)」(1,580円)!
平成7(1995)年から平成12(2000)年までの5年間販売されたという駅弁です。
「福廼家」は現在、和田山駅前の売店で「但馬の里和牛弁当」を販売したり、天空の城として知られる竹田城跡へのツアーバスなどへの積み込みがメイン。
駅弁大会は、大阪の「阪神百貨店」で「こだわり釜めし」の実演販売をするくらいでした。
今回は、和田山と播但線で繋がる、同じ兵庫県内、姫路駅弁「まねき食品」の協力を得て、京王百貨店新宿店でも「実演」という形で出店。
食材の調達などは「福廼家」が担当、京王百貨店での販売スタッフは「まねき食品」が担当し、かつての雰囲気は残しながら若干のアレンジをして、サフランライスと牛肉の「モー牛牛づめ弁当」が復刻されました。
じつはこの駅弁、ウシの顔がデザインされた容器のふたを開けると、なんと牛が「モー!」と鳴く、音の鳴る駅弁だったんです。
音が鳴る仕掛けは、ふたの裏側に貼りつけられた光センサーの装置。
この駅弁の存在が、後に日本初のメロディー駅弁と呼ばれる松阪駅の「松阪名物黒毛和牛モー太郎弁当」などが誕生する「きっかけ」になりました。
その意味では、駅弁に「音を楽しむ」という概念を持ち込んだ、画期的な駅弁なのです。
平成のはじめ、全国のJRには300ともいわれる駅弁屋さんがあったと言いますが、残念ながら、現在「駅弁マーク」の入った駅弁屋さんは100を切っています。
そのなかで、規模を縮小したり、やむなく廃業してしまった駅弁屋さんの名物駅弁が、都市部の大手駅弁屋さんによって継承されたり、復刻されるのも最近の傾向です。
インターネットで調べれば、ある程度の情報は分かる時代だからこそ、実際の旅が大事。
駅弁大会を満喫した後は、ぜひその駅弁のご当地を、自らの足で訪れて下さい。
それこそが、駅弁大会で美味しい駅弁をいただいた後、「ごちそうさまでした」の気持ちを最もよく表すことができる行動なのです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/