辺野古基地移設問題~必ずしも反対ではない普天間・名護市住民

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月20放送)に元航空自衛官・評論家の潮匡人が出演。沖縄県の基地負担軽減について解説した。

辺野古基地移設問題~必ずしも反対ではない普天間・名護市住民

政治 会談に臨む玉城デニー沖縄県知事(左)と安倍晋三首相=2019年3月19日午前、首相官邸 写真提供:産経新聞社

玉城デニー知事が安倍総理に移設工事の中止を要請

沖縄県の玉城デニー知事は19日、安倍総理と会談を行い、アメリカ軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事を中断し、1ヵ月の協議の場を設けるよう要請をしている。安倍総理は移設計画への理解を求め、玉城氏との会談自体は今後も応じる意向を示している。

飯田)玉木さんの知事就任後、4度目の総理との会談。今月(3月)の1日以来ということです。沖縄の知事は総理と会う機会が多いなという感じもありますが。

潮)会わないと「会ってくれない」などと文句を言われますので、時間を作って下さっているのだろうと思います。90年代からこの移設工事は事実上、進捗していないわけです。今更また中断と言われてもね、という気も率直に思います。
沖縄の県民投票の結果を受けての要請ということですが、沖縄の人たち、あるいは政権に批判的なメディアは、沖縄の民意を国が踏みにじっているという脈絡でこの問題を取り上げ、議論されていることが多いように思います。しかし、先の県民投票も細かく地区別に見ると、必ずしもそう言って良いのかという疑問が起きます。普天間を辺野古沖に移設することが中核的なテーマですが、その普天間周辺の住民、或いは移設先により近いところの人たちは、先の県民投票やその前の地元の首長選挙、市議会議員の選挙などを見ると、必ずしも移設に反対ではない結果が見てとれるのです。そうした地元の民意を沖縄県という、本当の地元からより遠い人たちが踏みつぶしてしまっているとも言えるはずです。より直接的に影響を受ける人たちの意向も尊重されるべきだと思います。

辺野古基地移設問題~必ずしも反対ではない普天間・名護市住民
民意は間違えることもある

潮)同時にこのような直接民主主義の考えということ、その民意とは、そんなに素晴らしいものなのかという疑問を私は抱きます。日本は国政レベルでは間接民主主義をとっています。実は欧米の国のなかでも、基本的にそういう考え方が主流となっています。
その発端を言うと、イエス・キリストが十字架につけられたときに、その周りにいた民衆はそれを支持したことを、欧米のキリスト教諸国の国民であれば皆幼い頃から聞いて知っています。民意は間違えるのだという、いわば神に対する畏れのなかから、間接民主制も生まれて来たと私は理解しています。県民投票をやった、圧倒的な民意を見ろという一方的な言い方には、個人的には賛同できません。

飯田)得ている情報の偏りなども考えると、直接民主制をやってしまうと一方に流されてしまう可能性がある。その危うさはいろいろな研究も出ていますよね。

潮)いまの知事はそうでないのかもしれませんが、前々知事を含めてもともと、この案に合意して今日に至っているのです。「政権が代わったのだから、また判断は異なる」と言って良いのであれば、日韓間の問題でも「日本と合意したのは韓国の前大統領だ」と、俺は知らんと言って良いのですかということにもなります。やはり手続きは尊重されるべきではないかと思います。

辺野古基地移設問題~必ずしも反対ではない普天間・名護市住民

【沖縄県民投票】投票締め切りと共に配布された地元紙の「反対多数」の号外を見る人たち=2019年2月24日午後、那覇市 写真提供:産経新聞社

抑止力としての沖縄の役割

飯田)潮さんに是非伺いたいのが、抑止力という部分の話です。沖縄が日本に返還されるとなったときに、それに対して一部危惧したのが韓国であった。北朝鮮の抑止力を考えて、沖縄にあるアメリカ軍がどこかへ行ってしまうのではないかということです。その確約をしてくれというものが、最近の外交文書で出ていますが、東アジアの情勢が変わって来ているなかで、沖縄の役割をどう考えたらいいのですか?

潮)実質的な抑止力という観点からは、維持されるべきだと思います。とは言え普天間の危険性を除去するために、何らかの手を打たないといけない。例えば普天間が緊急事態において、米軍機のラインを受け入れる基盤的な役割について、すでにこれまでの合意のなかで、九州にある航空自衛隊の2つの基地がそれを担うことになっています。実際、そこに今後予算がついて整備されるとのことですが、先日の国会で一部野党が、そのことを基地機能の強化につながると批判的に取り上げているわけです。そこにアメリカ軍が来るということになれば、例えば北朝鮮の攻撃目標になるのではないかと。それはそうかもしれませんが、では普天間をどうやって移設すれば良いのかという、根本のところに戻っていつも議論が迷走してしまう。いまのプランが良くないとおっしゃるのであれば、普天間はどうするのかをセットでご提案いただかないと。移設工事の中断だけを繰り返し求められても、政府としては聞く耳は持てないのだと思います。

飯田)そうすると、いちばんまずい「普天間の固定化」がまた続いてしまう。

潮)そういうことです。それは除去しなければと、与野党あるいは国も沖縄県も含めて、これまでの合意があるわけです。アメリカもこれで良いと言っているのに、またちゃぶ台返しをするのか、ということになると、このまま固定化されることにつながるのではないかと思います。

飯田)アメリカ軍としては、別にそれでも良いよという感じなのですか?

潮)これまでの経緯をずっと見ている当事者から言えば、お前らいい加減にしろよというのが本音なのではないでしょうか。

辺野古基地移設問題~必ずしも反対ではない普天間・名護市住民

沖縄県名護市内の民間施設付近で、辺野古埋め立ての土砂搬出作業に抗議する市民=2018年12月3日、沖縄県名護市 写真提供:時事通信

在日米軍の抑止力を自衛隊が担う

飯田)それからもう1つ、その抑止力に絡んでですが、沖縄の基地の負担軽減は前からずっと言われていた。抑止力との天秤にかけたときに、例えば自衛隊が一部肩代わりできないかということも議論されていますが、これはどうですか?

潮)先程申し上げた航空自衛隊の基地が整備されて行くことが、正にそうした一翼を担うわけであり、最終的には失われる在日米軍の抑止力を自衛隊が担うという形で、セットで解決して行くのが最も望ましい姿ではないかと思います。

飯田)そうすると日本版の海兵隊のような整備も、将来的には睨んでいることも無きにしも非ずですか?

潮)そうですね。将来的なことを言えば、当初案にあった海上に動かない巨大な空母のようなものを浮かべるようなプランを含めて、いろいろ考えていいのだろうと思います。ただ、いまそれを持ち出して、この代替案にとなると実現するまで何年先だということになります。並行して、将来の課題とは言え、実際に海上に訓練を行う場所を整備するようなことも含めて議論するのは良いのではないでしょうか。

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