【ライター望月の駅弁膝栗毛】
桜咲く山形県上山市の「みゆき公園」に差しかかった山形新幹線「つばさ」号。
「みゆき公園」の名は、明治天皇が東北地方を巡幸された折、お休みになったことに因んだとされ、公園には有名な「斎藤茂吉記念館」があります。
近くには奥羽本線(山形線)の普通列車が停まる「茂吉記念館前駅」もあって、鉄道でも気軽に訪れることが出来る桜の名所でもあります。
山形新幹線の拠点となる駅・山形駅。
日中、およそ2時間おきに山形始発の列車も運行されており、山形以南は概ね毎時1本、朝夕は毎時2本の「つばさ」号が首都圏と山形を乗り換えなしで結んでいます。
そんな山形駅の駅弁屋さん「もりべん」のトップに立つのが、林邦宣社長(代表社員)。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第15弾は、「もりべん」編をお届けしています。
●いい売り声が響く、山形駅の「もりべん」売店
―山形駅では今、どのように駅弁が販売されていますか?
改札外の待合室と新幹線連絡通路にNREの売店があります。
あと、新幹線の連絡通路に「もりべん」単独の売店があります。
ココでは、元々山形駅の別の売店で売り子をされていた鈴木さん、そして、かつて山形新幹線「つばさ」で車内販売を担当されていた青木さんの2名を軸に、早朝などは他の社員もシフトに入りながら、駅弁を販売しています。
―この春から「つばさ」の車内販売で、「駅弁」の取り扱いが無くなりましたが・・・?
大きな影響がありました。
その分、駅のNREさんの売店に納める弁当の数は若干増えました。
多分に漏れず、山形駅でも駅ビルなどが充実しましたので、そちらのお店で惣菜弁当などを買われて、持ち込まれるお客様が増えている現状もあります。
まだまだ、車内販売が変わったことの告知が行きわたっているとは言い難いので、これから時間をかけて、新しいシステムに対応させていくしかないと思います。
●森弁当部時代から受け継がれる、伝統の山形駅弁
―山形駅弁には「森弁当部」時代からの商品も多く販売されていますが、レシピが受け継がれているのでしょうか?
レシピはそのまま受け継いでいますし、作り方もほぼ変えていません。
ただ、肉や米などの仕入れ先はだいぶ変えました。
あと、「牛めし」の肉は、バラだけを使用していましたが、肩バラをミックスさせました。
従来より、グッと食感が上がったハズです。
あくまでも、もりべんは「もりべんの駅弁」として進化させています。
―食材へのこだわりや、仕入れなどで「松川弁当店」との連携はありますか?
お米は基本、山形県産の「はえぬき」、一部の駅弁に「つや姫」を使っています。
「やまもり弁当」と「女性のための幕の内弁当」がつや姫ですね。
牛肉は、山形県産黒毛和牛を使っています。
ただ、「もりべん」は「松川弁当店」とは全く別の会社ですので、食材は「もりべん」がある山形県の村山地方の取引先を中心に仕入れています。
●まだまだブラッシュアップできる!山形駅弁
―社長に就かれて2年、今後、どのようにオリジナル性を出していきたいですか?
今は従来の駅弁をそのまま受け継いで作っていますが、(駅弁の販路拡大を考えると)、今後は弁当の構成などのリニューアルに向けた精査も必要になってくると思います。
(山形駅を拠点に営業している訳ですから)もっと、山形・村山地方ならではのご当地性を打ち出していく必要もあります。
あと、時代に合わせて、弁当の構成もバージョンアップさせていかなくてはなりません。
―今のお弁当にも、きっとファンの方が多いと思いますが・・・?
実際、いまも「懐かしいなぁ」と感じながら、駅弁を美味しく召し上がって下さるお客様は、たくさんいらっしゃると思います。
ですので、駅弁そのものをリニューアルするか、あるいは新商品を出して、徐々に切り替えていくのがいいか、見極めているところです。
その意味でも、今ある駅弁はぜひ今、楽しんでもらいたいと思います。
(もりべん・林社長インタビュー、つづく)
【おしながき】
・ご飯(山形県産はえぬき) 梅干し
・塩ます焼き
・玉子焼き
・蒲鉾
・身欠きにしん
・煮物(玉こんにゃく、筍、平茸、人参)
・天ぷら(イカ、エビと大葉)
・肉団子
・煮豆
・大根の酢漬け
・わらびの酢漬け
・オレンジ レモン
やさしい紅花色のふたを開けると、いわゆる三種の神器(焼き魚・玉子焼き・蒲鉾)が、しっかり入った幕の内弁当が現れました。
しっかり味がしみ込んだ山形名物・玉こんにゃくが2個入り、身欠き鰊はかつてこの地が最上川の水運と共に発展した日本海文化圏であることを教えてくれます。
そして、早朝から仕込まれる手作りの玉子焼きは、やっぱり美味です!
この10連休、久しぶりに「つばさ」号などの新幹線を利用された方の中には、おそらく楽しみにしていた「駅弁」の車内販売が無くなっていて、戸惑った方も多かったと思います。
利用して感じたこと、思ったことは、関係されている皆さんに伝えていくことも大事。
みんなで使う新幹線ですから、コミュニケーションを通して、みんなで育てたいものです。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」もりべん編、いよいよ次回、完結。
林社長に、令和時代のスタートに当たって、新たなチャレンジを伺います。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/