【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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E353系電車・特急「かいじ」、中央本線・春日居町~石和温泉間
甲府盆地を囲む山並みをバックに、ぶどう&桃畑のなかを走る特急「かいじ」号。
特急列車が高速で通り過ぎるたびに、土埃と金属にフルーティな香りが入り混じった、線路沿いの果物畑ならではの匂いが漂います。
「かいじ」号は山梨県内の大月、塩山、山梨市、石和温泉にも停まる甲府発着の特急列車。
立川~甲府間なら900円の追加料金(えきねっとチケットレス)で乗車することができます。
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甲府駅前・武田信玄像
今年・令和元(2019)年は、甲府開府から500年。
永正16(1519)年、武田信虎公がつつじヶ崎(現・武田神社)に館を構え、その2年後には、ご存知、武田信玄公が生誕しました。
甲府駅南口の信玄公の銅像は、有志による浄財で昭和44(1969)年4月に完成したもの。
じつはコチラも、今年で50年という節目を迎えていたんですね。
(参考)甲府市ホームページ
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甲府城跡
甲府駅近くには城の石垣が見えますが、これは武田氏の後に造られた「甲府城」。
江戸時代前半は、主に徳川家が藩主を務める甲府藩の中心として、後半は幕府直轄領・天領の中心的な場所となりました。
城内にはぬるい温泉が湧いていたとも云われ、全国的にも珍しい温泉付き城郭だった様子。
いまはかつてのお城を東西に貫くように中央本線が通り、甲府駅も城跡の一部にあります。
(参考)甲府市ホームページ
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甲州牛ちらし寿司
この甲府開府500年を記念した駅弁が、期間限定で登場しています。
その名も「甲府開府記念弁当 甲州牛ちらし寿司」(1280円)。
小淵沢駅弁「丸政」が製造し、甲府駅構内売店の「MASAICHI」などで販売されています。
その昔、海のない甲斐の国へ馬の背中に載せてあわびを運んだ樽をイメージした陶器製の容器が使われており、手に取れば、ずしりと500年の歴史の重みを感じます。
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甲州牛ちらし寿司
【おしながき】
・酢飯(ワインビネガー)
・甲州牛の炭火焼肉
・あわび
・椎茸煮
・山菜煮
・栗甘露煮
・錦糸玉子
・はじかみ
・銀杏
・刻み梅
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甲州牛ちらし寿司
面白いのは、ちらし寿司の酢飯にワインビネガーを使うことで山梨らしさを出していること。
この酢飯には、刻み梅も混ぜ込まれており、カリッと心地よい食感を生んでいます。
加えて、丸政定番の炭火焼肉に混じって、甲府の隠れた名物・あわびの煮貝のスライスも。
スリープ式の包装と陶器製の器を家に持ち帰れば、甲府開府500年の夏に、山梨を旅した記録にもなり、やがて、それはよき旅の思い出にもなることでしょう。
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313系電車・普通列車、身延線・小井川~常永間
甲府のあわびの煮貝は、静岡・伊豆の海で獲れた新鮮なものを醤油で煮つけて樽詰めにし、富士川沿いをさかのぼり、甲府に着く頃、ちょうどいい味わいになったと云われています。
現在、そのルートを走る鉄道は、かつての富士川舟運に取って代わった身延線。
たくさん駅に停まって、のんびり走る普通列車でも、甲府~富士間は3時間程度。
江戸時代、あわびの煮貝を苦労して運んだ時代を思えば、あっという間なのです。
(参考)甲府市ホームページほか
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/