【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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E653系電車・特急「いなほ」、羽越本線・勝木~府屋間
2019年で運行開始50周年を迎えた、羽越本線の特急「いなほ」号。
当初は上野から高崎線・上越線・羽越本線経由で秋田方面を結んでいましたが、昭和57(1982)年の上越新幹線開業に伴って、新潟始発の新幹線連絡特急となりました。
現在、E653系電車の瑠璃色編成とハマナス色編成は、それぞれ運行開始50周年を記念した特製ヘッドマークを掲げて、日本海沿いを走っています。
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新潟三新軒
上越新幹線「とき」と、特急「いなほ」が接続するJR新潟駅。
新潟駅万代口近くで、昭和31(1956)年から駅弁を作り続けているのが「新潟三新軒」です。
全国の駅弁屋さんを訪ね、駅弁の製造過程とこだわりを伺う「駅弁屋さんの厨房ですよ!」。
「伊東」「小淵沢」「水戸」「出水」「長岡」「米沢」「松阪」「横浜」「姫路」「修善寺」「富山」「仙台」「一ノ関」「米沢」「山形」「郡山」「大館」「新津」と巡り、第19弾は「新潟三新軒」です。
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村上牛しぐれ
●新潟が誇るブランド牛「村上牛」!
今回、製造工程に密着するのは、新潟三新軒の名物駅弁「村上牛しぐれ」(1200円)です。
平成20(2008)年、新潟エリアで行われた、現在の“駅弁味の陣”の先駆けのようなイベント「にいがた駅弁合戦」で見事、優秀賞を獲得。
以来、10年以上にわたって、新潟三新軒の駅弁ではトップの人気を誇ると言います。
現在は、東京駅の「駅弁屋 祭」をはじめ、首都圏の各駅でもすっかりおなじみですね。
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村上牛
「村上牛」とは、格付け等級A3・B3以上の黒毛和牛「にいがた和牛」のなかで新潟県北部の村上市、関川村、胎内市で飼育された、A4・B4ランク以上のご当地ブランド牛のこと。
平成8年度・15年度の全国肉用牛枝肉共励会で最高位の名誉賞を受賞したこともあって、にいがた和牛のなかでは、抜群の知名度を誇ります。
村上牛はサシ(霜降り)が多く、甘みのある、とろけるような味わいが特長とされています。
(参考)村上市観光協会ホームページ
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新潟三新軒
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新潟三新軒
●新潟県産コシヒカリ&村上牛がたっぷり!
まずは、新潟産コシヒカリ100%を誇る白いご飯が220g、手に取られ盛られていきます。
白飯が敷き詰められたら、ご飯の角にそぼろをちょこん。
いよいよ、特に肉質の柔らかい村上牛を使用したというしぐれ煮がこんもりと載ります!
こちらのしぐれ煮、醤油・砂糖・酒などで村上牛を煮込んで、しょうがの風味を活かしながら、新潟三新軒オリジナルの味付けを施しているそうです。
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新潟三新軒
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新潟三新軒
その横から随時おかずが盛り付けられ、しぐれ煮にはごまを振ります。
さらにそぼろの上にバランを敷いて、刻み紅生姜が盛り付けられたら、早くも盛り付け完了。
ちなみに、おかずには当初、牛肉駅弁にたっぷり野菜を…ということで、生野菜を用いていた時期もありましたが、保存性・安全性向上の観点から、現在は茎わかめとなっています。
紅生姜も以前は丸くて大きいものでしたが、食べやすさを追求し、刻み紅生姜となりました。
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新潟三新軒
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新潟三新軒
抗菌シートを載せて、ふたをピタリと閉じたら、厨房を飛び出して、お隣の部屋へ。
コチラで割箸とお手拭きが添えられて、スリーブ式の包装にキュッと挟み込めば、名物駅弁「村上牛しぐれ」の完成です!
“のせ弁”は、やっぱり出来上がるまでが早いですね。
この後、段ボールに詰められて、新潟駅や首都圏の駅などへ輸送されていきます。
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村上牛しぐれ
【おしながき】
・白飯(新潟県産コシヒカリ)
・村上牛しぐれ煮
・牛そぼろ煮
・玉子焼き
・茎わかめ
・ごぼう煮
・紅生姜
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村上牛しぐれ
新潟駅の陳列ケースでもひと際目立つ、赤と黒のパッケージ。
そのスリーブ式包装をスライドさせ、ふたを開ければ、いい匂いに食欲がそそられます。
牛肉が冷めても柔らかいのは、上質な村上牛の証と言ってもいいでしょう。
なお、以前はご飯の上に薄くそぼろを敷いてからしぐれ煮を載せていましたが、お客様の声を活かして、いまでは紅生姜の下の辺りを、“そぼろゾーン”としているそうです。
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E653系電車・特急「いなほ」、羽越本線・間島~村上間
東京からは、上越新幹線「とき」~特急「いなほ」と乗り継いで、およそ3時間の村上市。
村上は、村上牛だけでなく、鮭のまちとしても有名です。
今回から注目していく「新潟三新軒」の駅弁も、新潟の肉・魚がいっぱい!
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第19弾・新潟三新軒編、次回からはこの「村上牛しぐれ」の誕生とほぼ時を同じくして就任した社長さんに、駅弁づくりのあれこれを伺っていきます。
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/