風呂デューサー・毎川直也~銭湯や温泉の仕事を始めた理由
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
1年のうちで最も寒いこの時期。銭湯の大きな湯船で、熱い湯にどっぷり肩まで浸かって、ゆっくり温まりたいものです。
この銭湯にハマって、銭湯の番頭さんになった人がいます。大田区に住む、毎川直也さん・32歳。名刺の肩書は、プロデューサーならぬ「風呂デューサー」です。
法政大学文学部で地理学を学び、就職は不動産業を考えていましたが、リーマンショックの影響で100社を回っても内定がもらえず。ムシャクシャした気分を晴らしたくて銭湯の湯船に浸かっていると、「銭湯や温泉の仕事も悪くないな…」と思うようになります。
両親が共働きで、小さいころからおじいちゃんに連れられて、銭湯に行っていた毎川さん。学生時代は、長い休みのたびに遠くの温泉地を回り、銭湯や温泉で800軒以上のお風呂に入ったそうです。
就職は小売業に決まりますが、満員の通勤電車に揺られ、上司からは「売上だ、ノルマだ」といつもプレッシャーをかけられ、押しつぶされそうな毎日…。恋しくなるのは温泉でした。
「やっぱり温泉に関わる仕事がしたい」と会社を辞め、スーパー銭湯、老舗銭湯、宮城県の温泉旅館で修行を積み、現在は大田区西蒲田の銭湯「改正湯」で、「若い番頭さん」として働いています。
「4代目の社長がいて、従業員は僕1人です。9年前にリニューアルした銭湯で、黒湯天然温泉の他、真っ白なシルク風呂、黒湯炭酸泉が女性にも人気の銭湯ですよ」
毎川さんの1日は、朝10時ごろに起きて、11時に自転車で銭湯へ。脱衣所やロビーを掃除してから、湯船にお湯を張ります。午後3時に一旦帰宅すると、奥さんが料理を作って待っています。
食事を終えると1歳の息子とじゃれあって遊び、午後5時半~8時半まで店番をして、また家に帰って夕食。夜中の12時半に銭湯が閉まり、風呂掃除を終えて帰宅するのが午前3時ごろ。そして家族が眠る布団に入ります。
「会社に勤めていたときのような、精神的なキツさがないんです。お客さんもいい人ばかりで、人と人との触れ合いが楽しいですね。それから子供と遊ぶ時間は、他のお父さんより多いと思いますよ」
銭湯「改正湯」が休みの金曜日は、「温泉・銭湯ライター」として執筆活動も続けている「風呂デューサー」の毎川さん。その他、鳴子温泉の湯治場で働いた経験と、都会の真ん中の銭湯の経験を活かして「都市湯治(としとうじ)」を考案し、イベントなどを定期的に企画しています。
「湯治場で学んだんですが、お湯に浸かって英気を養う『充電』と、都会で溜まったストレスを吐き出す『放電』を、実は街にある銭湯も兼ね備えているんです。銭湯の大きな風呂に入っていると気持ちよくなり、『ここは、お湯と自分だけだ…』と、頭がボーッとなりますよね。これは〝無我の境地〟ならぬ、〝湯我の境地〟なんです」と、毎川さんは微笑みます。
毎日が温泉と銭湯のことで頭がいっぱいの毎川さんですが、このところ、温泉への〝熱〟が冷めつつあります。どうしてなのか?
「いや~、いま息子が可愛くて可愛くて。休みの日に銭湯や温泉の取材をしているんですが、いまは息子との時間の方が大事なんですよ」
ちなみに、息子さんはこの春で2歳になります。誕生日が4月26日、「よい風呂の日」生まれです。
■『改正湯』
住所:東京都大田区西蒲田5-10-5
営業時間:15:00~24:30
定休日:金曜日
入浴料金:大人470円/中人180円/小人80円
手ぶらでセット:216円
(シャンプー・リンス・石けん・歯ブラシ・タオル)
※店舗によってセットの内容や金額が異なります。
・湯船の壁面に水槽があり、金魚が泳いでいるのが見えて、「魚のいるお風呂屋さん」として親しまれています。
・黒湯天然温泉、黒湯炭酸泉、白湯(シルク風呂)、銭湯には珍しい「毛染めブース」なども設置。
■風呂デューサー毎川直也さんのオフィシャルサイト「日々湯治」
http://furoducer.net
■毎川直也さんの「びゅうたび」
https://www.viewtabi.jp/writer/maikawa-naoya
■毎川直也さんのインスタグラム
https://www.instagram.com/furoducer/
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ
番組情報
眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ