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天然記念物「タンチョウ」を地域に呼びたい! 丸森町の取り組み
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
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『丸森町にタンチョウを ~タンチョウ復帰による地域活性化を目指して~』パンフレット(丸森町観光案内所ホームページより)
国の特別天然記念物「タンチョウ」。タンチョウヅルとも呼ばれますが、一時、絶滅の危機に直面し、数十羽まで減ったことがありました。現在は北海道におよそ1600羽が生息し、このうち9割ほどが釧路湿原など、道東地方で越冬します。
このタンチョウを呼ぼうとしている町があります。宮城県の最南端、福島と県境を接する「丸森町」。ここで農業を営む梅津正喜さんは、74歳。
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梅津正喜さん(写真左)と奥様(写真右)(中央はアメリカからの奨学生ブレアさん 生物学を学び、丸森町の調査もしているとのこと)
中学校の同窓会で同級生が集まったとき、人口減少や高齢化が進むこの町を盛り上げる手立てはないものか…そんな話になって、同級生の1人が言いました。「江戸時代、丸森にも鶴が飛んでいたらしいよ」「へぇ、タンチョウヅルが丸森にいたの?」。
「私も知らなかったんですが、丸森町には江戸時代、鶴を狩猟し、伊達藩のお殿様に献上していたと言うんです。町内には、『鶴供養』という珍しい石碑が3つも残っていて、鶴がこの町で身近な存在であったことを知ったんです」
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「鶴供養」の石碑の1つ
タンチョウを丸森に呼び戻すことができたら、よその町では真似のできない町おこしになる! こうして平成25年9月1日、中学校の同級生33人で、「タンチョウ復帰を考える会」が発足しました。
どうすればタンチョウを呼ぶことができるのか……。北海道では、タンチョウの分散計画を行っているそうです。1ヵ所だけに生息していると絶滅する恐れがあるので、タンチョウが棲める環境をいくつか分散させる計画です。
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神官による供養も行っている
タンチョウが棲める環境を整えることは我々でもできるはずと、梅津さん達が始めたのが「冬水田んぼ」でした。収穫後の田んぼに再び水を張ることで、タンチョウが越冬するための、カエルやドジョウなどの餌が捕れるようにしました。
「この町は雪が少なく、盆地にあるので、真冬でもタンチョウが過ごしやすい環境があると思います。しかし、田んぼに餌を撒いて餌付けしようとは考えていません。あくまでもタンチョウが暮らせる自然環境を整えることが、我々の目的なんです」
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冬水田んぼのようす
その成果が少しずつ現れました。夏にホタルが増えたり、2~3年前から白鳥の姿がちらほら見られ、今年(2019年)の春は180羽も飛来しました。そのなかにはサギの姿も。サギは穀物のほか、カエルやドジョウなどを食べます。タンチョウも同じ雑食なので、環境は整いつつありました。
「仙台の北に位置する『蕪栗沼』周辺には、数年前にタンチョウの飛来が目撃されたんですよ。北海道から南下したタンチョウは、この町を流れる阿武隈川を目指して、そのうち飛んで来るはずだったんですが……」
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北海道・釧路での写真(「タンチョウ保護研究グループ」百瀬理事長ご夫妻のご案内で)
梅津さん達が手応えを感じていた矢先のことでした。10月12日~13日にかけて、台風19号が丸森町を襲いました。高台に家がある梅津さんは、そのときの光景をこう振り返ります。
「阿武隈川の支流、その堤防が決壊して行くのを見ていました。川の水が押し寄せた町は、大きな湖になってしまったんです。生まれて初めて見る光景でした……」
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台風19号の被害で、水路への取水口なども石でふさがれた
さらに梅津さんを驚かせたのは、水が引いた後でした。
「用水路や農道が壊され、田畑には泥や流木、石がゴロゴロと散乱していました。タンチョウを呼ぶ『冬水田んぼ』も、ひどい有様でした」
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水路の法面が崩落、土砂が水路を埋めている
以前の田畑に戻すには、来年か再来年、いや3年後かもしれません。いまはタンチョウの復帰どころではありません。
「見るも無残な町の光景に、住民はみんな肩を落としています。でも、会の仲間は諦めてはいませんよ。タンチョウを復帰させる、その気持ちはひとつです。いつか、あの鳴き声で町の復興を祝ってくれたら嬉しいですね」
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大内小学校での学習 立体「鶴たこ」をあげているようす
上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ