【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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東京メトロ03系車両・普通列車、東武伊勢崎線・北春日部~春日部間
東武伊勢崎線・日光線と直通運転を行っている東京メトロ日比谷線(北千住~中目黒間)。
日比谷線は、昭和39(1964)年8月に全通、東京オリンピックの開幕に間に合いました。
昭和63(1988)年から活躍してきた2代目の03系車両も、いまやすっかり少数派。
新型の13000系車両に置き換えられた一部の車両は、地方のローカル私鉄に移り、早くも“第2の人生”をスタートしています。
(参考)メトロ文化財団ホームページ「メトロアーカイブアルバム」
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六本木ヒルズ
日比谷線でアクセスする東京の街といえば、何といっても六本木!
東京メトロ・六本木駅の1日平均乗降者数は、13万8950人(2018年度)にものぼります。
そんな六本木のランドマーク・六本木ヒルズで、日比谷線が全通した昭和39(1964)年と、令和2(2020)年を結ぶ鉄道の展覧会が行われていると聞き、この日は六本木駅で下車。
さっそく、高速のエレベーターに乗って52階を目指します。
(参考)東京メトロホームページ
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特別展 天空ノ鉄道物語
やって来たのは、3月22日まで開催中の「特別展 天空ノ鉄道物語」。
JR7社、東京メトロ、東京都交通局をはじめ、全国の鉄道各社が全面協力し、1964年~2020年のオリンピックイヤーを結ぶ形で、鉄道文化の軌跡を紹介しています。
昔の列車のヘッドマークや0系新幹線電車のシートの展示など、親世代には懐かしい一方、運転シミュレーターやアニメ、玩具など、子供たちも一緒に楽しめる展示となっています。
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天空駅(昼)
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天空駅(夜)
海抜約250mのスカイギャラリーには、架空の駅「天空駅」が出現。
実際にベンチや看板なども設置され、国内で初めて運行された蒸気機関車である「一号機関車」が段ボール素材によって、原寸大で完全再現されています。(作・島英雄氏)
特に日没後は、駅舎の上に星空やそのなかを走り抜ける鉄道の大きな映像が投影され、東京のきらめく夜景をバックに、幻想的な雰囲気を楽しむことができます。
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天空駅カフェ
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ドア弁
“駅”があるということで、何とオリジナルの“駅弁”、“駅そば”まであるのが興味深いところ。
「天空駅カフェ」では、「ドア弁」と名付けられたオリジナルの弁当が販売されています。
全国の駅弁をモチーフに作られた6種の弁当から2つ選ぶと、ドア型のパッケージで登場。(現在は贅沢鯛めし・黒豚みそだれ・から揚げ鶏・絶品蟹めし・かしわそぼろ・鮪カツの6種)
しかも、このパッケージ、チョット遊び心があります。
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ドア弁
スリーブ式包装の上にあるドアの部分が、何と横にスライドするようになっていて、ドアを開けると、弁当の中身がちょこっと、顔をのぞかせてくれるんです。
関係者の方によりますと、パッケージの開発に当たっては、列車のヘッドマークをはじめ、さまざまな案が出たそうですが、オリジナル性を追求するなかで、「ドア」がテーマになったそう。
今回は秋田の「から揚げ鶏」(650円)と、鳥取の「贅沢蟹めし」(1030円)をチョイスしました。
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ドア弁(から揚げ鶏)
【おしながき】
・鶏だしで炊いた炊き込みご飯
・鶏肉チューリップから揚げ
・とり天
・しば漬け
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ドア弁(贅沢蟹めし)
【おしながき】
・酢飯
・ズワイガニの棒肉、ほぐし身
・錦糸玉子
・塩昆布
・しば漬け
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ポリ茶瓶
これらの弁当は、カフェ店内で調理されており、「から揚げ鶏」は温かい状態で、「贅沢蟹めし」は酢飯ですので程よく冷まされ、食材に最適な温度で提供されています。
これに添えられているのが、昭和40~50年代の駅弁屋さんでは定番だった「ポリ茶瓶」。
いまも製造している業者が少なく、容器を仕入れるのは大変だったといいます。
さらに、メニューのなかにもう1つ…、気になっている飲み物があるんですよね!
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ヘッドマークラテ(北斗星)
その名も「ヘッドマークラテ」(850円:注)!
現在は、「はやぶさ」、「北斗星」、「トワイライトエクスプレス」の元・寝台特急から選ぶことができますので、私は最も乗った経験が多い「北斗星」をチョイスしてみました。
ちなみに、1/26までの前半では、「さくら」「カシオペア」「なは」の3種が販売されており、「カシオペア」が一番人気だったそうです。
(注)フードまたはデザートのセットにて650円(税込)、ラテはココアへ変更可能。
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ドア弁&ポリ茶瓶&ヘッドマークラテ
「みなさんの期待に応えられるもの、できれば期待以上のものをお出ししていきたい」と意気込むのは、「ドア弁」を作っている天空駅カフェ・店長の石原さん。
本来の“冷めても美味しい”駅弁とはひと味違う弁当ですが、いままで、あまり鉄道に興味がなかった方、あるいは駅弁はご無沙汰だった方には、知るきっかけの1つになるはず。
「ドア弁」をいただいたのなら、ぜひ次は、本物の“駅弁の世界”のドアを開けてみましょう。
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鉄道車両ドアインスタレーション
展示の1つには、全国19の鉄道会社の協力を得て作られた「鉄道車両ドアインスタレーション」があり、ドアの部分を触れると開閉して、なかからさまざまなイメージが飛び出してきます。
鉄道車両のドアだけを抽出して、映像アートのように仕上げているのは、新鮮に感じました。
ちびっ子たちは、このドアを触っていくのが、とても楽しいひとときの様子。
私も小さいころ、交通博物館で101系電車のドアの開閉を楽しんだ記憶を思い出しました。
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E231系電車・普通列車、山手線・恵比寿~目黒間
鉄道ファンのみならず、思いのほか女性だけで訪れている方や海外からの方の姿も目立つ、「特別展 天空ノ鉄道物語」。
鉄道をより広く、世代を超えた多くの方に親しんでもらい、ファンのすそ野を広げながら、「文化」としてより成熟させていきたいという、作り手のみなさんの意思を感じました。
私もまた、次の“旅のドア”を開けてみたくなりました。
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/