「若者力大賞」にみる日本の姿
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「報道部畑中デスクの独り言」(第177回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、2020年で第11回の開催となった「若者力大賞」について---
日本ユースリーダー協会(会長・三村明夫 日本製鉄名誉会長)という団体が、毎年「若者力大賞」を表彰しています。社会的活動に取り組む次世代リーダー、リーダーを育成している指導者・団体を検証するという取り組みは、今年(2020年)で11回目を迎えました。
これまでに田中将大投手(第1回 少年野球教室などで子供たちに夢を与える)、歌手の平原綾香さん(第4回 震災をめぐる歌を通じたボランティア活動)らも授賞者に名を連ねています。
2月18日に開かれた表彰式で、グランプリにあたる若者力大賞を受賞したのは、高濱宏至さん(34)。主宰するNPO法人で、途上国に太陽光パネルとパソコンを贈るプロジェクトを進めています。
特にパソコンの寄贈事業は、旅先のフィリピンのマニラ近郊で、縁石で勉強する少女にあったことがきっかけだったと言います。生まれた環境で教育の機会が左右されていいのか…教育にはパソコンとインターネットが必要と考え、NPO法人を設立しました。
「日本という国に生まれたことそのものが、私自身ラッキーだった」と語る高濱さん。それだけで終わらせまいと考えたのが、このプロジェクトだったそうです。スピーチではスクリーンにパソコンを抱えて喜ぶ少女、真剣にパソコンの画面を見つめる少年たちの姿が映し出されました。
不要となったパソコンの提供、最初は企業からまったく相手にされなかったそうですが、地道な努力で現在は協力企業・組織が50社以上に上ります。ほとんどコストがかからないこのプロジェクトは、企業で不要となったパソコンをリフレッシュして、その国々の言語仕様として贈ります。その費用はマイクロソフトなどからの協力でまかなっているとか。
企業もCSR(企業の社会的責任)の一環として、理解を示してくれたと話していました。高濱さん、交渉力もしっかりしています。
また、ユースリーダー支援賞(個人部門)として表彰されたのが、内科医の横山太郎さん(39)。病院勤務中に中高生とともに超高齢社会を考え、実行する会を始めたと言います。少年少女への講義の他、介護施設や病院、訪問診療などを実体験させ、「10年後の未来に対して明日からできることは何か?」を考えているそうです。
スピーチでの一言は、まさに目からウロコが落ちるものでした。
「“高齢化問題”という言葉は、好きな言葉ではない。長寿になったのに、それを問題視するのはどうなのか。“問題”という言葉をつけないような世の中にして行きたい」
私どもメディアは問題意識として、こうした言葉をつい使いがちですが、お題目ではなく、改めて言葉の持つ意味を理解すべきと感じます。
同じくユースリーダー支援賞の団体部門を受賞したのは、北京生まれのヤン・ミャオさん(39)。NPO法人代表のヤンさんは流ちょうな日本語で語りますが、留学生のころは知り合いもおらず、自分と社会の境界線を感じ、いつも孤独だったそうです。
ある日、道に迷ったときに通りがかりの人が、行きたい場所の近くまで案内してくれたことをきっかけに、日本語を猛勉強したと言います。一方、子どもが生まれたときにはこれまで感じたことのない焦りと不安が…。育児サークルで自分が外国人と言うと、それまで盛り上がっていた場が静まり返ったことも体験しました。
こうした体験が医療や育児など、日本に住む外国人を支える取り組みにつながったということです。涙ながらに語るその姿に、会場でウルウルする人もいました。
年を取ると年長者からは「最近の若い者は…」などと愚痴る声も聞かれますが、会場では目の前の問題に正面から向き合う若者たちの姿がありました。また、海外で活動する彼らからは、普段見落としがちな日本の姿…すき間の部分が見えたようにも感じます。
なお、この日は表彰式の後、参加者による懇親会も予定されていましたが、新型コロナウイルスの影響で取りやめになりました。(了)