政府の後手に回った曖昧な方針が招いている混乱~新型コロナウイルス感染拡大防止策

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(2月27日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。新型コロナウイルスの感染拡大による各種イベントへの影響について解説した。

政府の後手に回った曖昧な方針が招いている混乱~新型コロナウイルス感染拡大防止策

衆院予算委員会でマスク供給不足について答弁を行う菅義偉官房長官=2月26日午前、国会・衆院第1委員室 写真提供:産経新聞社

立皇嗣の礼、一部縮小を検討~新型コロナウイルス、イベントに影響

菅官房長官は27日、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて、秋篠宮さまが皇位継承順1位の皇嗣(こうし)になられたことを国内外に示す、4月の「立皇嗣(りっこうし)の礼」の縮小や手法の見直しを検討する考えを示した。菅官房長官は記者会見で「感染拡大の状況を注視しつつ、必要な準備を進めたい」と述べた。

森田耕次解説委員)新型コロナウイルスによる肺炎拡大防止に向け、政府は26日、スポーツ団体や文化団体に対して3月15日までを目安にイベントや公演の中止を要請しております。こうしたことを受けて、菅官房長官は27日の記者会見で秋篠宮さまが皇位継承順1位の皇嗣(こうし)になられたことを国内外に示す、4月の「立皇嗣(りっこうし)の礼」の一部縮小、手法の見直しを検討する考えを示しています。

 

菅官房長官)「立皇嗣の礼」についてはこれまで天皇陛下のご退位及び皇太子殿下のご即位に伴う式典委員会において、本年4月19日に「立皇嗣宣明(せんめい)の儀」及び「朝見(ちょうけん)の儀」4月21日に「饗宴(きょうえん)の儀」を実施することを決定しています。引き続き政府として感染拡大防止に万全を期すと共に、感染拡大の状況を注視しつつ、「立皇嗣の礼」については必要な諸準備を進めてまいりたいと思っています。

 

森田)「立皇嗣の礼」は中心儀式である「宣明の儀」と「朝見の儀」を4月19日に、賓客と食事を共にする「饗宴の儀」を21日に開く予定なのですが、政府高官によりますと、特に立食形式で実施される4月21日の「饗宴の儀」が検討対象だということです。現状では予定通り準備を進めつつ、3月中旬以降に改めて開催の可否、適切な参列者の数を検討するということです。また、菅官房長官は27日の記者会見では3月11日に予定している政府主催の「東日本大震災追悼式」について「被災3県にとって重要な位置付けだ」としながらも、開催の規模や感染拡大の防止措置を検討していることを明らかにしました。政府内では中央省庁の出席者を閣僚クラスのみに限定しようという縮小案が浮上しているということです。「東日本大震災追悼式」についても3月に入ってから中止を含めて慎重に判断するということになっています。確定申告の受付期限についても延期ということで、4月16日まで延期ということになりました。さまざまな自粛、延期が続いていますね。

河合)「立皇嗣の礼」については、国民に大きな協力を求めている以上、政府としても姿勢をきちんと示さなければいけないということで、こういう発表になったのだと思います。ただ、4月の話なので、この情報を聞いたときに自粛要請が4月の下旬まで続くのかという印象を受けました。受け取る側としてはそういったメッセージになってしまうこともあります。国民の皆さんはとりあえずこの1,2週間だと思って頑張っている部分もあるので、この発表のタイミングはいかがなものかという感想を持ちました。一方、「東日本大震災追悼式」も縮小して感染防止策を取っていくということで、こちらは時期が近いのでやむを得ないと思う部分もあります。
しかし、どちらにしても政府の基本方針に曖昧なところがあって、どこまで自粛していいのか、国民は何を求められているのかということを個別具体に考え始めると、迷うところが多いですよね。ガイドラインのように具体的な行動が取りやすいような形として、国民が判断を迷いそうなところは政府がある程度方向を示さないと、混乱が広がっていってしまうと思います。

政府の後手に回った曖昧な方針が招いている混乱~新型コロナウイルス感染拡大防止策

新型肺炎、コロナウイルス感染防止対策で政府が全国小中高校に休校要請をしてから一夜明け、登校する小学生ら。今年度最後の登校になる可能性も=2月28日、東京都世田谷区 写真提供:産経新聞社

北海道内の小中学校が臨時休校に~欠勤余儀なくされる保護者

森田)学校の対応ですが、北海道の教育委員会は感染拡大を受けて、道内すべての公立小中学校を27日から3月7日まで一斉に臨時休校させることになりました。高校については、生徒各自が必要な予防策が一定程度判断できるということで見送っています。27日は、一斉休校となった北海道内の小中学校の校舎は、平日にも関わらず異様な静けさだったということです。出勤した教員たちは消毒作業をしたそうです。パート従業員の感染が確認された根室市の中学校では、教員たちが休校明けの3月5日、6日に控えている学年末のテスト範囲を変更する作業をしたということです。ある教員は、「入試を控えた中学3年生の生徒からは、面接の練習ができずに不安だという声が上がった」と語っています。また、家にいる子どもの面倒を見るということで、保護者の方が仕事を休まざるを得ないということもあるようです。

河合)27日、十勝毎日新聞の記事を見ていたのですが、お子さんの面倒を見るために保護者の方が休まざるを得なくなってしまっていて、帯広厚生病院の看護師さんも2割が出勤できなくなったということで、医療がかなり滞ることになってしまったということです。今回の国民への要請は医療崩壊を防ぐことが最大の目的であったのに、そのためにやった国民への協力要請でむしろ医療崩壊が起こってしまったという皮肉な状況が生まれています。
いずれにしても、国民への自粛要請をするのが遅過ぎたと思っています。既にかなり蔓延している状況ですので、やらないよりは確実にやった方がいいのですが、(効果は上がりにくくなっています)。いろいろと手立てが後手にまわっていってしまっていますよね。かつ、自粛要請の内容は何とも中途半端なのです。満員電車は未だに解消されていないし、私は今日の日中に京都へ行っていたのですが、京都では焼きたてパンのパン屋さんが商品を全部袋に入れて売っていました。

森田)むき出しで売っていると、飛沫がつく恐れがありますものね。

河合)1、2週間の協力要請であるのなら、惣菜や回転寿司など、商品提供のやり方もこの期間のみ変えることを要請すべきです。こうした抜けているところが多いなか、大型イベントを止めたり、延期したりする話だけが進んでいってしまっています。これは中途半端だと思うのです。

政府の後手に回った曖昧な方針が招いている混乱~新型コロナウイルス感染拡大防止策

日経平均株価 新型肺炎感染拡大で世界経済への影響懸念で一時1,000を越える大幅下落~ 取引開始直後、1,000円以上急落した日経平均株価を示す株価ボード=2月25日午前、東京都中央区 写真提供:産経新聞社

株価の下落止まらず

森田)27日の株価を見ますと、26日の終値よりも477円96銭安い2万1948円23銭。2万2000円を割り込んで引けてしまったということですから、4営業日連続で下落し続けています。

河合)2万円を切ると、どんどん景気の後退感が広がってきてしまうと思います。全体的に縮小のマインドが大きくなってきています。(経済活動が極端に委縮しないよう、われわれは新型コロナウイルス対策の自粛要請に)あまり過剰に反応しないことも大事だと思います。

番組情報

ザ・フォーカス

火曜〜木曜 18:00-21:20

番組HP

錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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