【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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キハ189系気動車・特急「はまかぜ」、山陽本線・御着~東姫路間(2018年撮影)
大阪から東海道・山陽本線、播但線、山陰本線を経由して、日本海側の香住・浜坂・鳥取を結ぶ特急列車「はまかぜ」。
普段はステンレスの車体に赤い帯を巻いたキハ189系気動車が3両編成で、例年、冬のカニのシーズンは増結された6両編成で、定期列車は1日3往復運行されています。
兵庫の県庁所在地・神戸と但馬地方を乗り換えなしで結ぶ特急として重宝な存在です。
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キハ181系気動車・特急「はまかぜ」、山陽本線・明石駅(2010年撮影)
特急「はまかぜ」は、昭和47(1972)年3月の運転開始。
当初はキハ82系気動車、その後は、平成22(2010)年秋まで30年近くにわたって、キハ181系気動車が活躍してきた列車です。
JR初期の急行列車(但馬)が共存していたころは、播但線内はノンストップ運転でしたが、いまでは、播但線唯一の定期特急列車として、主要駅にも停車しています。
(参考)JR西日本ホームページ、国鉄監修・日本交通公社の時刻表(1987年3月号)ほか
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米田茶店かに寿し
特急「はまかぜ」でいただきたいカニの駅弁といえば、「米田茶店かに寿し」(1100円)。
神戸を拠点に京阪神地区の駅弁を手掛ける「淡路屋」が製造しています。
平成31(2019)年4月10日の「駅弁の日」に合わせて発売されたこの駅弁も、淡路屋の「通信販売」に対応しています。
現在は、東京でも1000円前後の駅弁5個の購入で「送料無料」となるのは有難いですね。
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かつて浜坂駅前にあった米田茶店(2018年撮影)
「米田茶店かに寿し」の“米田茶店”とは、平成31(2019)年1月まで山陰本線・浜坂駅前で、明治44(1911)年以来、1世紀以上にわたって営業していた駅弁屋さん「米田茶店」のこと。
惜しまれながら営業を終了した米田茶店のレシピや駅弁作りの思いを、「淡路屋」が継承し、掛け紙のデザインなどもそのまま活かして、改めて駅弁として作り上げました。
このような形で駅弁の味が受け継がれるケースは、近年、西日本でよく見られる傾向です。
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米田茶店かに寿し
【おしながき】
・酢飯
・ベニズワイガニの酢漬け 魚肉おぼろ 錦糸玉子 椎茸煮 グリーンピース 紅生姜
・ごま昆布佃煮
・奈良漬
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米田茶店かに寿し
兵庫・香住のベニズワイガニと、香住の酢を使って作られている「米田茶店かに寿し」。
酢の加減やふんわりとした錦糸玉子に、ローカル列車の車内にあふれる人情のような「優しさ」を感じることができます。
いまは香美町となっている香住は、山陰本線随一の名所・餘部橋梁がある町。
餘部橋梁からの日本海を思い浮かべていただくのが、ベストかもしれませんね。
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289系電車・特急「こうのとり」、山陰本線・梁瀬~和田山間
淡路屋が製造する「米田茶店かに寿し」は、通常であれば、兵庫県内の山陰本線・城崎温泉駅、豊岡駅などでも販売があります。
城崎、湯村をはじめとした北近畿の温泉旅には、最高のお供となりそうな駅弁。
再び日本海の美味しいものと素晴らしい温泉で癒される日を思い浮かべて、まずは「通信販売の駅弁」で家から1歩も出ることなく、旅気分を味わいたいものです。
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/