平松佑介~3代目となる老舗銭湯を継ぐきっかけは娘の一言
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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に東京・高円寺にある老舗銭湯「小杉湯」の3代目、平松佑介が出演。家業を継ぐまでの経緯について語った。
黒木)今週のゲストは東京・高円寺にある老舗銭湯「小杉湯」の3代目、平松佑介さんです。老舗銭湯の3代目でいらっしゃるのですけれども、子供のころからここで育って、お客様と一緒にお風呂に入ったり、遊んでもらったりしていたのですか?
平松)はい、そうです。
黒木)ということは、ずっと自分がこの銭湯を継ぐのだ、と思っていらっしゃったのですか?
平松)ええ。何だか歌舞伎みたいだと思うのですけれども、小さいころから小杉湯が遊び場で、近所のおじいちゃんやおばあちゃんが遊び相手でした。みんなからも「3代目、将来は頼むぞ」ということを言われていたので、自分がやらなくてはいけないのだということを植え付けられていたのでしょうね。
黒木)地域の方に乗せられたというのもあるかも知れませんし、地域の方が銭湯をすごく愛していたのですね。
平松)そうですね。その愛情も感じていましたし、何より両親が楽しそうに働いていたので、すごく単純にうらやましいなという思いがありました。
黒木)大学を卒業されたときには、ご両親がまだお若かったこともあって会社に就職されたのですが、その会社が輸入住宅。
平松)小さいころから、自分は銭湯を継がなくてはいけないという環境のなかで育って来たので、20代のうちは自分ができる挑戦をしたいという気持ちで、営業という世界に飛び込もうと思って就職しました。
黒木)成果を出されたお話を読むと、いま買う人ではなく、3~4年と長く考えてプランを立てている方に絞ったということですね。その辺りの信用というか、長い時間をかけてその方に売りたいという思いが、地域の方に愛されて育った環境を感じました。
平松)本当にそうですね。銭湯のなかでは、争いごとが起きないのですよ。僕のなかにある「人って素晴らしいな、世界って素晴らしいな」という思いが、銭湯で育ったことによって染みついているのですね。だから営業の世界に入ったときも、誰かと競うということではなくて、ご家族の人生に寄り添えたらいいなということが自然とできたのだと思います。
黒木)しかしそこもスパッとお辞めになり、何とお友達と起業してしまった。それも不思議に思いますけれども。
平松)そうですね。やはり挑戦したいという気持ちがすごく強くて、銭湯を継ぐ前にできることをやろうという思いがありました。いろいろな行動をした結果として、いろいろな出会いがあり、会社のベンチャーの創業に加わるということをしました。
黒木)そこも辞めて3代目に、やっとおうちに戻って来たわけですけれども、きっかけはお嬢さんの一言だった。その決断力はすごいですね。お嬢さんに言われた言葉を、ぜひ平松さんからおっしゃってください。
平松)娘が2人いるのですけれども、長女が一緒に遊びに行くときに、「お父さん、お仕事に行かないでね」と言ったのです。よくある言葉なのかも知れませんが、僕にはそれが衝撃的でした。というのは、僕自身が家に帰ったら、家業で父親が家にいて、母親も家にいてというのが当たり前の環境で育っているので、自分の描いていた父親像と違和感があったのですね。だから、娘に対して自分が「ただいま」と言うのではなく、「おかえり」と言ってあげられるような父親になろうと思ったのが、最終的なきっかけですね。
平松佑介(ひらまつ・ゆうすけ)/株式会社小杉湯 代表取締役 小杉湯3代目
■1980年生まれ。東京都出身。
■2003年、スウェーデンハウス株式会社に入社。4年目で全国トップの営業成績を記録し社長賞を受賞、トップセールスとして活躍。
■2011年8月、株式会社ウィルフォワードを創業。国内最大手のタクシー会社の採用コンサルティング、WEB制作、マーケティング、法人営業部署の再生、広報部門立ち上げなどの組織変革や、中小企業の採用コンサルティングに従事。
■2016年10月より杉並区高円寺にある銭湯・小杉湯の3代目として働く。小杉湯に隣接した解体を控えた風呂なしアパートを舞台に、多様なクリエイターが共にくらし、それぞれの専門分野と銭湯を掛け合せた活動を展開した「銭湯ぐらし」や、銭湯の価値を再定義し新たな文化を作る「銭湯再興プロジェクト」を進行中。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳