「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長・魚谷浩~月1回開かれる「漁師ナイト」

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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長の魚谷浩が出演。震災から10年経ち、東京と宮城を結ぶ現在の活動について語った。

「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長・魚谷浩~月1回開かれる「漁師ナイト」

魚谷浩

黒木)今週のゲストは東京・中野にある「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長の魚谷浩さんです。宮城県から直送される海産物を提供する「魚谷屋」さんですが、東日本大震災の発生から10年となります。改めてこの10年の歳月、魚谷さんはどう感じられていますか?

魚谷)私は被災した者ではありませんが、その後、石巻に住んだ者として、人が前に動き出す瞬間やそういうきっかけにたくさん出会わせていただきました。この10年、自分のなかでも大きな変化がありました。人間的にも成長できたし、人とのコミュニケーションの取り方も、10年前とは大きく変わりました。

黒木)私も震災直後に石巻に行きましたが、その際に私を案内してくれた方も、東京の会社を辞めてボランティアをしに来た方でした。石巻市の雄勝へ案内してもらい、非常に胸が傷みましたが、その方に「私のような1人の人間に何ができるか」と伺ったら、「まず、見て感じてください。あなたがどう感じるかということで、これからのあなたの気持ちも変わる」と答えてくれました。その10年前に感じた気持ちが私のなかでも残っているので、石巻の子どもたちが何歳になったなとか、石巻から鮭を送っていただくと漁師さんが獲ったのだな、元気に暮らしているのだな、と思うことがあります。魚谷さんは4年間、石巻で暮らされて、ボランティアから市民になられました。私はそこまでできなかったのですが、やはりそれぞれいろいろな思いがある10年なのでしょうね。

魚谷)地元が兵庫県なのですが、兵庫県を出てから、学生期間を四国で過ごしたり、いろいろな地域に思い出ができたのですけれど、これほど思い入れと感情があふれて、第2の故郷のような気持ちになった場所は他にはないです。怒られたこともありますし、喜んでいただいたこともあり、信頼関係もつくれたなと思っています。

黒木)震災前の漁業と震災後の漁業というのはどうでしょうか?

魚谷)私が関わらせてもらっている漁業者さんについて言うと、震災前と震災後で確実に変わったと言います。ちょうどそのときにスマートフォンが流行り出していて、スマートフォンにされた方がSNSを使い始めたのです。SNSでは、ボランティアに来た外の人とつながることができる。その後、連絡を取る手段としてSNSで連絡先を交換して、漁師さんが発信したSNSにいままで関わってくれた人が「いいね」を押してくれるわけです。そうすると、漁師さんたちも自分たちの生業を直接画面で見せることができるし、「欲しい」と言ってくれた方には市場を通さず、直接送ることができる。そのダイレクトにやり取りができる関係というのは、震災後に多く増えたのです。そんななかで、漁師さんたちが最終的に食べてくれる人を知れるので、つくるものに対してプライドを持ったり、いままでと違う手間暇をかけたりして、素材のよさも上がって来ているなということを感じます。

黒木)みなさんとつながっているということですが、魚谷屋さんでは月1で漁師さんたちがお見えになるのですか?

魚谷)はい。月に1回、「漁師ナイト」と題して、漁師さんがスタッフとして働きます。スタッフとして働いているなかで、何も知らずに来たお客さんが話をしてみると、「実はこれ僕が獲ったんです、育てたんです」という話をするのです。そこで漁師さんの生きざまなどを知ってもらうとファンになる。直接ファンになるとSNSでつながることができるので、そこからの関係性が築かれ、その漁師さんから海産物を直接取り寄せることができる。そういうファンづくりの一環で漁師ナイトを始めたのですが、コロナ前は月に1回必ずやっていました。これが漁師さんだけではなく農家さんもやりたいと言ってくれたり、酒蔵の方が来てくれたりして、宮城と都内近郊の方のハブの要素を担っているかなと思っています。

「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長・魚谷浩~月1回開かれる「漁師ナイト」

魚谷浩

魚谷浩(うおたに・ひろし)/「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長

■1979年・兵庫県神戸市生まれ。
■小さなころから料理に興味があり、幼少時から母親の手伝いでキッチンに立っていた。
■学生時代は香川県で過ごし、アルバイトをきっかけに飲食を仕事にして行こうと決意。以来、マネジメントも学びながら食の仕事に従事。
■2011年の独立を目標に10年間勤めていた飲食企業を退社。同時期に東日本大震災が起こり、独立を延期しボランティアに参加。
■震災復興で訪れた宮城の漁師町で多くの人々の気持ちと触れ合い、宮城の魅力を発信しながら宮城のみんなと一緒に元気になれる店を開こうと発起。
■2015年、地方のPRを兼ねた飲食店を開業するため東京に移住。
■2016年6月、これまでに出会った仲間とともに『宮城漁師酒場 魚谷屋』を開業。
■現在「宮城漁師酒場 魚谷屋」店主を務める。

<宮城漁師酒場 魚谷屋>
■東京都中野区に2016年開業。豪快さとスタイリッシュさを兼ね備えた漁師酒場。
■クラウドファンディングで支援を募集し、開店に至った。
■生産者の思いをダイレクトに伝える漁師直営の居酒屋で、グランドメニューがなく、その時期の最高に自信を持っておすすめできる食材だけを、漁師がプライドをかけて直送。毎月変わるメニューが人気。月に1度、漁師が来店し、漁師と語ることもできる。

<フィッシャーマン・ジャパン>
■「漁業をカッコよく」をコンセプトに集まった東北の若手漁師集団。一般社団法人。
■魚谷屋は、この一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンを母体とした株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティングが運営。

番組情報

黒木瞳のあさナビ

毎週月曜〜金曜 6:41 - 6:47

番組HP

毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

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