東京都医師会理事で「かずえキッズクリニック」院長の小児科医、川上一恵氏が3月30日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。甘やかすことと甘えさせることの違いについて解説した。
飯田浩司アナウンサー)甘やかすことと甘えさせることは、どこが違うのでしょうか?
川上)甘やかすことというのは、それが子どもの成長にとって、決してよいことではない部分です。例えば、「お菓子が欲しい」と駄々をこねたらお菓子がいつでも与えられるといったことや、少し大きい子だと、「ゲームソフトが欲しい」と言ったらぱっと買い与えてしまう。これは「甘やかす」ことです。しかし、例えば2歳ぐらいの子どもが歩いていて、「抱っこして欲しい」と言ったときはどうするのがいいでしょうか? すでにたくさん歩いて疲れているのであれば、抱っこしてあげるのは「甘えさせ」になりますよね。でも、まだあまり歩かないうちから抱っこをして、お父さんだけが頑張って歩いているというのは、決して甘えさせではなく、ただの甘やかしかも知れません。その辺りの使い分けに対する親の認識がとても大事になります。
飯田)そのヒントとなる子育て法として、先生が1つ提案してくださったのが、『ナルちゃん憲法』という本です。いまの上皇后陛下の美智子さまが、子育ての際に書いたメモから出たものということですが、これはどういうものでしょうか?
川上)いまの上皇后陛下が海外などへ公務でお出かけになるとき、侍従さんたちにやって欲しいことをメモにされていたそうです。『ナルちゃん憲法』はそれをまとめたものです。「駄々をこねたときには叱ってあげて欲しい。でも1日に一度はしっかり抱っこをして、愛情を伝えて欲しい」というようなことを、いろいろと細かく書かれています。このなかに、甘やかすことと甘えさせることについても書かれています。もう60年前のことですが、本当に、いまにもつながる素晴らしいことだと思いますし、皇后陛下や上皇后陛下というのは、ある意味ワーキングマザーの最頂点の方ですよね。そういうなかでお子さま方をお育てになって来ていますが、周りは天皇家ということで忖度して、お子さま方を甘やかしてしまうというのは、普通の方であればやってしまいますよね。
飯田)確かにそうですね。私も自分の子どもを叱るのが難しいと感じることがあり、つい大きな声で叱ってしまうことがあります。この本には、その辺りの工夫のようなものも書かれているそうですね。
川上)そうですね。ただ叱るだけではなくて、工夫しながら解決して行くことが大切です。例えば牛乳が苦手だったときに、ほんの少しの量を入れて、「ないにしてちょうだい」とおっしゃるのだそうです。飲んで空っぽになったら褒めて、「じゃあもう1つ、ないにして」というようにする。このように、できたことの積み重ねを繰り返すことで、嫌だったこともクリアして行けることがあるのです。これは、いま保育園でも同じようにやっていますし、おうちでもできるだけやってあげるといいです。大きなハードルを一息に越えさせるのは難しくても、それを小さなハードル10個ぐらいに切り分けてあげて、1つずつ越えさせて行けば、子どもも常に達成感を味わいながら、1歩ずつ難しいことを超えられると思います。
飯田)つい、できないことばかりが目についてしまいますよね。
川上)できれば、「こうするとうまく行くよ。やってごらん」「お父さんやお母さんと一緒にやってみよう」というようにして、越えさせてあげるといいと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます