なぜ陽性患者の「たらい回し」が起きたのか ~新型コロナウイルスへの医療体制

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東京都医師会副会長で「平成立石病院」理事長の猪口正孝氏が3月31日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。医療機関の受け入れに関する「東京ルール適用件数」について解説した。

なぜ陽性患者の「たらい回し」が起きたのか ~新型コロナウイルスへの医療体制

ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」

「東京ルール適用件数」 ~通常は1日30件程度

飯田浩司アナウンサー)医療提供体制について、通常医療の部分も含まれると思いますが、東京都では救急車が医療機関5ヵ所に受け入れ要請して断られた場合、あるいは20分以上経過しても搬送先が決まらないという事案の件数を「東京ルール適用件数」としておりました。かつて、新型コロナが流行する以前から、患者を受け入れる医療機関が見つからない問題があり、こういう数字を出して対策しようという試みがされていました。しかしコロナ禍で、東京ルールの適用件数もかなり増えてしまったということですか?

猪口)東京ルールは通常、1日30件程度なのです。それが、2022年1月~2月にかけては、いちばん多いときで1日あたり300件を超える日がありました。

飯田)約10倍。

猪口)いまも1週間の平均で150件前後ですから、通常の5倍は毎日起きているということです。「たらい回し」という言葉が使われて、私たちは心外だったわけです。たらい回しという言葉は「診たくないからあっちに行って」と聞こえますが。

飯田)故意にするというように。

猪口)通常時から満床である、処置中であるなど、さまざまな理由で医療機関が診られない状況があり、そのときに「選定困難事例」ということで、「そういう場合にはどうしましょう」ということを決めてあるのが「東京ルール」なのです。

なぜ陽性患者の「たらい回し」が起きたのか ~新型コロナウイルスへの医療体制

猪口正孝氏、飯田浩司アナウンサー

新型コロナ感染者の患者を断らなくてはならない理由

飯田)診たくても診ることができない。皆さん、ものすごく葛藤しながら断っていらっしゃるという話をお医者さんから聞きます。

猪口)多くの病院では、「絶対に断らない」ということを掲げているにも関わらず、断らざるを得ないという状況が今回のコロナ禍で起きています。特にオミクロン株が流行してから、その数が一気に増えてしまいました。コロナがこれだけ流行ってくると、すべての救急の患者さんをコロナ感染症であるという前提で診なくてはいけなくなってしまうのです。

飯田)すべての患者さんを。

猪口)軽症で発熱がなくても、「コロナに感染している可能性がある」という前提で診ます。救急車が1日に何台も来るような病院においては、救急車用の専門ブースが3つ~4つ並べてあるのですけれども、患者が感染症だという前提で診るので、マスクやフェイスシールドをして、ガウンを着て1人の患者さんを診ます。その患者さんが感染者だとすると、次の患者さんに感染させてはいけませんので、使ったものは全部脱ぎ、次の患者さん用にまた着なければいけないのです。

飯田)新しいものを着ないといけない。

猪口)1人の患者さんを診るのに3回くらい着替えなければならず、非常に効率性が悪くなります。一気に救急患者を診る効率が落ちてしまうのです。

飯田)確かにそうですよね。いままでのように、横に飛び回ることが一切できなくなっている環境でやらなければならない。

猪口)そうすると今回のように、「東京ルール適用件数が1日あたり300人」という数字が出てしまうのです。

これまでの経験を活かして将来的な医療体制をつくることが大事

飯田)そうなると、仕組みやマンパワーだけで足りるものではなくなりますね。

猪口)将来的には、そういう部分を考慮したような医療体制の準備が必要になるだろうと思います。今回、第3波~第6波といろいろな経験をしましたので、それを踏まえた上で将来的な体制をつくることが大事なのではないでしょうか。

番組情報

モーニングライフアップ 今日の早起きドクター

毎週月~金曜日 朝6:15~

番組HP

医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます

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