医師で医療ジャーナリストの森田豊氏が4月6日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。音の医学というテーマで医療と音のさまざまな関係について解説した。
ソニック・シーズニング
飯田浩司アナウンサー)「音の医学」というテーマで、医療と音のさまざまな関係について伺います。
森田)音楽を聴きながら食事をすると、ゆったりとした有意義な時間を過ごすことができますが、最近の研究では演奏の内容によって感じる味、すなわち味覚が変わることがわかってきたのです。
飯田)そうなのですか。
森田)それを音による味付け、「ソニック・シーズニング」と呼んでいます。音を聴くことによって、食べているものの味を強く感じるということです。
高い音の音楽を聴くと食べ物を甘く感じる ~低い音を聴くと苦く感じる
森田)ちなみに、食べ物をより甘く感じる音があるのですが、次のうちどれでしょうか? バイオリン、チェロ、コントラバス。
新行市佳アナウンサー)チェロだと思います。
飯田)バイオリンでしょうか。コントラバスのような低い音だと、ビターな味になりそうな気がします。
新行)そのイメージはあります。チェロは滑らかな、まろやかな音のイメージがあるので、甘く感じそうだと思ったのです。
森田)飯田さんが正解で、バイオリンです。オックスフォード大学の研究によると、人間は高い音の音楽を聴くと食べ物を甘く感じ、低い音を聴くと苦味を多く感じるということです。バイオリンやフルートは高い音域の楽器なので、食べたものをより甘く感じ、チェロやコントラバスは低い音程の楽器なので、苦味を多く感じるということなのです。
新行)そうなのですね。私は学生時代にコントラバス担当だったのですが、きっと苦味を感じていたのですね。
森田)本来、味覚は舌にある味蕾というセンサーによって脳に感覚が伝えられるのですが、舌とは関係なく、音によっても味付けされるということが研究でわかってきています。さまざまな感覚による知覚を「多感覚知覚」と呼ぶようになり、世界で研究が進められています。
中世以降のヨーロッパでは抜歯の際に音楽隊が演奏していた
新行)医療の現場で音楽が使われることもあるのですか?
森田)少し怖い話なのですが、中世以降のヨーロッパで歯を抜く際、すなわち抜歯をする際には、音楽隊が音楽を演奏していたようなのです。
飯田)抜歯するときに。
森田)歯科医師が職業として確立していなかった時代は、歯抜き師と呼ばれる職業の人が、抜歯を行っていました。当時は麻酔もなく、患者さんが痛くて悲鳴を上げるのです。だから音楽隊がトランペットやドラムでやかましく演奏し、患者さんの悲鳴をかき消していたということです。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます