深刻な高齢者の「コロナ禍でのコミュニケーション不足」
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東京都医師会理事で「葛西中央病院」院長の整形外科医、土谷明男氏が4月11日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。コロナ禍における高齢者への影響について解説した。
治療が終わったあとの高齢者の生活をどう支えるか
飯田浩司アナウンサー)コロナ禍に入って3年目の春になります。整形外科を受診する高齢者の患者さんの傾向はいかがですか?
土谷)第6波の期間中は、入院する患者さんを受け入れることがなかなかできませんでした。
飯田)第1波、第2波のときにもお話を伺いましたが、いわゆる下りの医療(治療が終わったあとにリハビリを行うなど)という概念のところが詰まっているということですか?
土谷)そうですね。本人の体の手当てをするだけではなく、本人、ご家族の「今後の生活をどうするか」というところまで支えていかなければいけない状況になっています。
高齢者の生活を見守るためには、地域によるネットワークの構築が必要
飯田)病気や骨折などのように治して終わりではなく、「その先まで」となると、お医者さんの範疇を超えてしまいますよね。
土谷)おっしゃる通りです。地域全体で「高齢者をどう見守っていくのか」ということです。それには時間がかかります。患者さん1人について時間がかかるだけではありません。どこに行くかということも、それぞれの施設や病院が連携してネットワークを活かさなければいけませんが、ネットワークを構築するにも時間がかかります。根気がいる仕事になります。
高齢者への影響が大きかった「ステイホーム」
飯田)仕組みづくりということですものね。コロナ禍以前から言われていましたが、病気まではいかないけれども、徐々に虚弱になってしまう「フレイル」について、この番組でも取り上げてきました。コロナとフレイルの組み合わせは、現場で見ていると厄介ですか?
土谷)コロナ禍において、高齢者への影響が最も大きかったのはステイホームです。
飯田)家にいなくてはいけないので、外を歩けなくなってしまう。
土谷)出かけないので歩かないというような、身体的なことも大きな問題ですが、それ以上に、人と会わないということです。
人とのコミュニケーションがなくなり、心に影響を及ぼす
土谷)人間が健康であるためには、体の問題だけではないのです。最近は「心の影響」ということが強く言われています。コロナ禍で外に出ないということは、つまり人と会わないということです。この影響は、すぐに出るわけではありませんが、今後、少しずつジワジワと出てくるのではないかと思います。
飯田)昔の人は、「病は気から」などと言いましたけれども、コロナの影響で行動が変わり、コミュニケーションが少なくなる。最初は少しの差だったものが、時間とともに大きくなることがあり得るわけですか?
土谷)そう思います。
電話でいいので、祖母、祖父の方と会話をすることが大切
飯田)現役世代であれば、スマホで顔を見ながらビデオ通話でいいではないかということになりますけれども、そういうわけにはいかないですものね。
土谷)しかし、オンラインで顔を見ながら通話しなくても、普通の電話でもいいと思うのです。家族の人が「お母さん、調子はどう?」「おばあちゃんはどう?」あるいは「おじいちゃんはどう?」と電話をかけてあげるだけでも違うと思います。顔が見えなくても、電話だけで十分意味があると思います。
飯田)声を聞くだけでいいということですか?
土谷)話の内容は、どうでもいいのです。話の内容よりも、「コミュニケートしている」ということが大事だと思います。
番組情報
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飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます