「医療従事者の激務」の背景にあるもの
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東京都医師会理事で「葛西中央病院」院長の整形外科医、土谷明男氏が4月13日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。医療従事者の激務の実態について解説した。
働き手の「自己犠牲」の上に成り立っている医療
飯田浩司アナウンサー)お医者さんの激務の実態についてですが、朝から診察して、そのまま当直というような話も聞くことがあります。
土谷)昔は当直しても翌日、普通に働いていました。
飯田)当直の翌日に、通常通り外来も診るというようなことですか?
土谷)そうです。場合によっては、そのまま手術をすることもありました。
飯田)志のような部分も大きく影響するのでしょうか?
土谷)医師に限らず、病院で働く人は「誰かのために働く」という意識が高いです。自分の時間を犠牲にして働くことを厭わない人たちが多いのです。そのような自己犠牲の上に成り立っているのが、これまでの医療だったのだと思います。
世界的に見てもよく働く日本の医療従事者
土谷)日本の医療はお金をかけていないのに、なぜ日本人は長生きができるのかということで、ヒラリー・クリントンさんが日本に見学に来たことがあるのです。
飯田)ヒラリー・クリントンさんが。
土谷)しかし、日本の医者や看護師がこれほど働いている現場を見て、「アメリカで同じことをするのは無理だ」、「参考になるものは何もない」と言って帰って行ったそうです。
飯田)何もないと言って帰ったのですか?
土谷)それほど、日本の医療関係者はよく働いていたということです。
診療科による偏りが激しい
飯田)つまり、そこに無理な荷重が掛かっているということですね。人手不足が続いていると、改善は難しいと思いますが、その辺りはいかがですか?
土谷)人手不足は医療業界だけではなく、どの業界でも言われていますが、特に医療の場合は偏りが激しく、それをならす仕組みがなかなかないのです。
飯田)偏りというのは、診療科による偏りということですか?
土谷)病院で小児科がすごく忙しいとなった場合に、他の診療科、例えば精神科の先生が「お手伝いします」と言ってもできません。受ける側の患者さんにしても、「他の科の先生が診てくれます」と言われたところで、「それならば待ちます」ということになると思います。
不人気な診療科でも給料の相違はない
土谷)そのような診療科ごとの偏りも大きいと思います。それも少しずつ是正していこうということにはなっていますが、医者に対して「この科をやれ」と制限するのは、それもまた難しい問題です。
飯田)お医者さんになる前の段階や学生時代に、それぞれが目指すところを強制的に調整することはできませんよね。
土谷)自分が働きたい診療科があるので、調整するのは難しいです。一般企業の場合、人がやりたくない仕事であれば給料が高くなります。では医療において、そのようなことがあるのかと言うと、診療科ごとの給料の設定の違いは、他の業界に比べて少ないです。
飯田)診療報酬の話になってくるから、半ば公定価格になるということですか?
土谷)その影響はあると思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます