「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
鉄道開業150年を迎えた今年(2022年)、全国で懐かしの列車を彷彿とさせる列車が運行されたり、駅弁でも「復刻」をテーマとした駅弁が多数登場しました。なかでも山形駅の復刻駅弁は、山形らしさが満載です。1年の締めくくり、懐かしい掛け紙の幕の内弁当をいただきました。
その昔、上野から夜を通してやって来た、茶色や空色の汽車が走り抜けた奥羽本線を、いまは、スマートな流線形の新幹線が勢いよく駆け抜けていきます。鉄道開業150年を迎えた今年もあと2日。上京や帰省といった概念もまた、鉄道が通って多くの人が安価に移動できるようになって生まれたといえるかも知れません。そしていま、新幹線で短時間移動が可能になり、地方に拠点を置いて、全国で活躍する方も増えています。
今年秋、鉄道開業150年に合わせて、日本鉄道構内営業中央会に加盟している駅弁屋さん31社が参加して行われた「復刻駅弁」企画。駅弁屋さんによっては、年末年始も、引き続き販売しています。山形駅弁・もりべんが製造する「復刻幕之内弁当」(1250円)も、その1つ。昭和30年代、「森弁当部」時代の幕の内弁当の掛け紙を復刻しました。掛け紙には、蔵王の樹氷や霞城公園といった山形らしい風景が描かれています。
【おしながき】
・ご飯(山形県産つや姫) 梅干し ごま
・鮭の塩焼き
・だし巻き玉子
・ゲソ天
・肉団子
・いも煮(牛肉、里芋、ねぎ、舞茸、にんじん、いんげん)
・玉こんにゃく 辛子
・しそ巻き
・酢れんこん
・大根としその酢漬け
山形県産米・つや姫を使った白いご飯に、山形らしさを感じるおかずがいっぱい入った「復刻幕之内弁当」。いも煮や玉こんにゃくが目を引きますが、気になるのはいかのゲソを揚げた「ゲソ天」。山形の蕎麦屋さんでは当たり前に見られるそうです。諸説ありますが、山形・村山地方は内陸ゆえ、日本海から干したイカが運ばれ、水で戻して使われたとか。森弁当部時代をリスペクトしながら、いまどきのご当地らしさもしっかり詰め込んだ幕の内。今後もぜひいただきたい駅弁です。
(参考)山形県ホームページ
昔、いかのゲソが運ばれていたかも知れない最上川の畔を、山形駅のお隣・北山形から分岐する左沢線(あてらざわせん)の空色の列車がゆっくりと走ります。左沢線は今年で全通100周年を迎えました。朝夕の通学時間帯は、比較的長い編成の列車も走ります。鉄道開業150年の今年は、全国のローカル線で今後のあり方が関心を集めた1年でもありました。年末年始も、列車は時刻表通りの運行。年末年始、時間があるという方は、ふるさとの列車に揺られて、車では見られない「いいところ」を探してみるのも有意義かも知れません。令和5(2023)年も、よいお年をお迎えください。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/