駅弁大会の「実演販売」ブースを訪ねたい、その理由

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

東京の京王百貨店新宿店で開催中の「第58回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」もいよいよ後半戦に入りました。大きな駅弁大会の見どころの1つは、お弁当の盛り付けを見ることができる駅弁の「実演販売」です。実演販売はシンプルに出来立てのお弁当をいただくことができるのはもちろん、駅弁好きなら訪ねておきたいもの。今回の見どころと合わせて、その理由を紐解いていきましょう。

画像を見る(全10枚) 京王百貨店新宿店

京王百貨店新宿店「第58回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」見て歩き(第3回/全5回)

2022年は日本の鉄道開業150年でした。明治の初めから昭和の終わりまでは、全国の鉄道網は、鉄道省や国鉄といった形で、国が大きく関与して作られてきました。1987年にJRが発足して35年あまり。国鉄時代の車両は大きく数を減らし、なかには全てJR世代の車両となった会社もあります。そのなかで、いまも活躍する国鉄生まれの車両は希少な存在。懐かしい音が聞こえてくると、しばしの間、郷愁の世界を楽しむことができますね。

103系電車・普通列車、山陽本線・兵庫~和田岬間

昨秋の鉄道開業150年に合わせ、全国の日本鉄道構内営業中央会(中央会)加盟の駅弁31社が参加して「復刻駅弁」企画が行われました。ただ、駅弁によっては、期間やエリアが限られ、ファンの間でも入手が困難を極めた駅弁もありました。1月22日まで、京王百貨店新宿店で開催中の「第58回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」は中央会が後援していることもあり、「鉄道開業150年記念駅弁」企画も展開されています。

淡路屋の実演販売ブースと柳本副社長

その1つ、神戸を拠点に京阪神の駅弁を手掛けている淡路屋は、「むかしの驛辨當」(920円)を実演販売しています。この駅弁は、戦後間もないころ、使用されていた掛け紙を復刻させた幕の内弁当。淡路屋は、昭和20(1945)年に、福知山線の生瀬から神戸へ移ってきましたから、神戸で再スタートを切ったころの掛け紙となります。外食券の表記があるなど、時代を感じさせてくれる一方、スタンプのスペースなど、デザインも考慮されています。

むかしの驛辨當

【おしながき】
・白飯 梅干し たくあん
・焼さわら
・蒲鉾
・だし巻き玉子
・牛肉煮
・昆布巻き
・たこ旨煮
・煮物(蓮根、こんにゃく、きぬさや、人参)

記念駅弁 初代かにめし

「鉄道開業150年記念駅弁」企画には、この他、福井駅弁・番匠の「記念駅弁 初代かにめし」(2480円)、出水駅弁・松栄軒の「鹿児島黒牛リブロースステーキと黒豚赤ワインステーキ弁当」(1800円)、草津駅弁・南洋軒の「今昔近江牛すき焼き辨當」(1200円)、名古屋駅弁・松浦商店の「150年記念弁当 東海味めぐり」(1580円)、宇都宮駅弁・松廼家の「復刻版とりめし」(1000円)が顔をそろえています。

斎藤松月堂・斎藤社長

一方、京王の駅弁大会へ行ったこと自体が記念になるのが、「特製どんぶり企画」です。今回は、3年ぶりに実演販売に参加した、岩手・一ノ関駅弁「斎藤松月堂」の新作、2つの鮭の味を楽しめる「平泉鮭めし丼ぶり」(1500円)が、京王の駅弁大会限定で干支のうさぎが描かれた丼で販売されています。陣頭指揮を執るのは、今年(2023年)が年男の斎藤社長。丼が限定数に達したあとは現地と同様、わっぱ型容器(1080円)での販売となります。

平泉鮭めし丼ぶり

【おしながき】
・ご飯(茶飯)
・鮭の塩焼き
・紅鮭のフレーク
・いくら醤油漬け
・厚焼き玉子
・きゃらぶき
・椎茸煮
・大根桜漬け
・蓮根酢漬け

神尾弁当部の実演販売ブース

時として行列ができることもある実演販売ブースですが、じつはアクリル板の向こうの調理スペースでは、駅弁屋さんの社長さんや幹部の方が、腕を振るっていることがよくあります。つまり、駅弁をいただくほうにとっては作り手の方の「顔」が見られるのが実演販売ブース。駅弁屋さんにとってもお客様の「顔」が見られる機会となっているのが駅弁大会なんです。商品とお金だけでなく、作り手・買い手の“心のやり取り”も、楽しめる可能性があります。

701系電車・普通列車、東北本線・一ノ関駅

寒さが厳しい時期は、ずっと家でぬくぬくとしていたいですね。でも、遠くへ行けなくても、百貨店へ足を運べば、気軽に旅気分を楽しめるのが駅弁大会のいいところです。もしも、実演販売ブースでお店の方と話をすれば、その地域への愛着も生まれてきます。そして、寒さが緩んできたら、駅弁大会でいただいた弁当のふるさとを、自分の足で訪ね歩く旅に出たいもの。駅弁大会は、「次の旅のはじまり」となる、きっかけの場所でもあるのです。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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