「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
3月2日から、東日本エリアの新幹線・在来線が乗り放題となる「鉄道開業150年記念ファイナル JR東日本パス」の利用期間が始まります。この機会に北東北へ旅の計画を立てられている方も多いのではないでしょうか。「駅弁膝栗毛」も今回から6回シリーズで秋田駅弁・関根屋を特集、秋田の鉄道旅にピッタリのお供をご紹介いたします。1回目は昨秋に登場した秋田の新ブランド米・サキホコレの新作駅弁の製造に密着しました。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第41弾・関根屋編(第1回/全6回)
真っ白な雪の秋田を駆け抜ける真っ赤な車体の新幹線。秋田新幹線「こまち」は2022年、開業から四半世紀の節目を迎えました。現在、朝6時台から夜8時台発車の列車まで、毎時1~2本の列車が運行され、東京~秋田間は最速3時間37分で結ばれています。7両編成の車両は、6両が普通車で1両がグリーン車。とくに普通車は鮮やかな黄金色の座席が特徴で、実り豊かな秋田の大地をイメージしたと言います。
そんな実り豊かな秋田の幸を集めて、明治35(1902)年の駅開業以来、秋田駅の駅弁を作り続けているのが「株式会社関根屋」です。現在の社屋は、駅東口すぐのところにあって、たとえ吹雪の日でも、駅弁はしっかり製造され、しっかり時間通りに、駅構内の売り場に、納められています。駅弁膝栗毛の恒例企画「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第41弾は、真冬の秋田、創業120年を迎えた「株式会社関根屋」を訪ねました。
秋田駅弁・関根屋でいま、最もホットな弁当といえば、令和4(2022)年10月29日に登場した新作駅弁、「特上サキホコレ弁当」(1780円)でしょう。秋田の新しいブランド米「サキホコレ」の本格デビューに合わせ、一昨年のプレデビュー時に登場した「サキホコレ弁当」をバージョンアップさせた二段重ねの弁当が発売されました。高級感のある黒い折箱が使用され、掛け紙にも、サキホコレのロゴとともに「特上弁当」と刷られています。
「特上サキホコレ弁当」の要は、何といっても、一の重にぎっしり詰められた「サキホコレ」の白いご飯。サキホコレは、おなじみのあきたこまちと比べると、大粒のご飯が特徴です。関根屋によると、「ご飯に弾力があって美味しい」と話すお客様が多いのだそう。もちろん、ご飯は炊き上がったあと、十分に冷まされた状態で折箱に1つ1つ丁寧に手作業で詰められていきます。
「特上サキホコレ弁当」は、通常版の「サキホコレ弁当」と違って、真ん中の白いご飯を、秋田牛のすき焼き風煮と秋田比内地鶏の鶏そぼろご飯が両脇を固める盛り付けとなっています。調理場では、ちょうど秋田牛の牛肉煮が、手作業で作られていました。この日、外は吹雪でしたが、調理場は湯気が立ち上り、牛肉と自慢のたれのいい香りがいっぱい。じつは牛肉には、もうひと手間かかっているのですが、こちらは後日、改めてご紹介……。
ご飯だけでなく、おかずにもたっぷり秋田の食が詰まっているのが「特上サキホコレ弁当」。ひと手間掛けた鮭の塩麹焼きに、とんぶり入りの揚げ蒲鉾、玉子焼きと、いわゆる“三種の神器”も入った、秋田ならではの幕の内弁当に仕上げられていきます。秋田ならではのご飯のお供・いぶりがっこも、大根と人参が入っていて、違った味が楽しめるのも特徴です。少人数で手際よく、あっという間に盛り付けられていきました。
盛り付けが終わると、2つの折箱が重ねられて二段重となり、割り箸とおしながきが挟み込まれて、掛け紙がかけられて「特上サキホコレ弁当」の完成となります。出来上がった弁当は、秋田駅改札前のNEWDAYSや待合室の売店へ搬入されて陳列される一方で、大曲・角館・田沢湖の秋田新幹線「こまち」各停車駅の他、東京駅の「駅弁屋祭 グランスタ東京」へも運ばれていきます。
【おしながき】
(一の重)
・サキホコレの白いご飯 梅干し
・秋田牛すき焼き風煮(椎茸・筍入り)
・秋田比内地鶏肉そぼろ
(二の重)
・鮭塩麹焼き アスパラ添え
・とんぶり入り揚げ蒲鉾串
・厚焼き玉子
・鶏のお狩場焼き
・わかさぎ唐揚げ
・煮物盛り合わせ(有頭えび、人参、さつまいも、ふき)
・いぶりがっこ盛り合わせ(大根、人参)
白いご飯と梅干で「サキホコレ」の旨味をたっぷり味わいながら、秋田牛の牛丼気分や、比内地鶏の鶏そぼろご飯も味わえてしまうのが、「特上サキホコレ弁当」のいいところです。関根屋によると、「サキホコレという高級な米で作っているお弁当なので、おかずも高級なものであって欲しい」というお客様からの声に応える形で二段重の駅弁を開発したと言います。いま、秋田を旅するなら、ぜひ味わっておきたい駅弁と言えましょう。
東日本エリアの新幹線・在来線が3日間乗り放題となる「鉄道開業150年記念ファイナル JR東日本パス」(えきねっと限定、利用3日前まで販売、大人2万2150円)は、3/2(木)~15(水)までの14日間、予め指定を受ければ、4回まで新幹線・特急などの指定席も利用可能となります。全車指定席の「こまち」などで秋田まで来たら、おトクになった分で、ちょっといい駅弁を選びたいもの。次回からも、秋田の名物駅弁をご紹介いたします。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/