これからは弁当と共に続く、「SL銀河」の思い出
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「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
宮沢賢治没後90年の今年(2023年)、「銀河鉄道の夜」の世界を1つのテーマとして、岩手県の釜石線で運行されてきた「SL銀河」が、この週末(6/10~11)で運行を終えます。列車では、土曜運行の花巻発と、日曜運行の釜石発の列車で、それぞれ異なる業者が製造した車内限定弁当が販売されました。このうち、釜石発の列車で提供された弁当は、アレンジされて、一部の駅で販売が行われています。
平成26(2014)年4月から、岩手県の釜石線・花巻~釜石間を走ってきた「SL銀河」が定期運行を終えました。あとは今週末(6/10、11)ファイナルツアーとしての運行を残すのみとなります。列車の先頭に立つC58形蒸気機関車239号機は、昭和47(1972)年まで岩手県内を中心に活躍。自走も可能な青い客車のキハ141系気動車は、急勾配で蒸気機関車と協調運転を行ってきました。今回、この客車の老朽化を理由に運行が終了します。
SL銀河でもさまざまな観光列車と同様、“車内限定”の弁当が販売され、人気を博しました。令和元(2019)年のシーズンから、釜石発の上り列車で提供されてきたのが、釜石市の工藤食品が製造する「SL銀河帆立おこわ弁当」です。この弁当をアレンジして冷凍化し、自然解凍の状態で食べられるようにしたのが「銀河鉄道帆立おこわ弁当」(1450円)です。通常は東北新幹線と接続する新花巻駅で、週末や繁忙期は盛岡駅でも販売があります。
【おしながき】
・カシオペア座(帆立をカシオペア座の5つの星・Wに見立てたおこわ)
・ブラックホール(ひじきと揚げ煮)
・渦巻銀河(挽肉すき昆布巻き)
・月の玉子(銀河鉄道のSLを焼き印した厚焼き玉子)
・火星の花(花形人参)
・惑星(胡麻がんも)
・金星からの贈り物(いか松笠煮)
・流れ星(刻み野菜醤油漬け、ガリ)
Wに見立てた5つのベビーほたてが、もちもちのおこわの上に載り、SLの焼き印が入った玉子焼きも入って、SLの旅を感じさせてくれます。工藤食品は「釜石もち屋くどう」を展開する会社ということもあって、おこわは十八番。まさに“餅は餅屋”です。各駅の売店には、自然解凍された状態で陳列されていますが、テーマ性のあるしっかりとした弁当の作りに、あとから、もともとは冷凍弁当だったということに気付く方も多いかも知れません。
工藤食品によると、今週末に運行される「SL銀河」のツアー列車内では、参加者だけが手にすることができる、特別な掛け紙の「SL銀河帆立おこわ弁当」が提供されるそうです。一方、この「銀河鉄道帆立おこわ弁当」は、SLの運行終了後も、新花巻駅や盛岡駅で継続販売される予定だと言います。「銀河鉄道の夜」が世代を超えて読み継がれるように、「SL銀河」は終わっても、その旅の思い出は、弁当のなかに、これからも生き続けます。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/