令和に「昭和」を体験! 大井川鐵道「客車普通列車」でいただく、オリジナル掛け紙駅弁

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

列車の幕の内弁当(特選幕の内弁当)

画像を見る(全9枚) 列車の幕の内弁当(特選幕の内弁当)

SLの動態保存で知られる、静岡県の大井川鐵道。しかし、去年(2022年)9月の台風の被害で、いまも一部区間で運転見合わせが続きます。その大井川鐵道でいま、定期列車の電車を古い電気機関車が旧型客車を引っ張る「列車」が代走して、大きな話題を呼んでいます。まさに令和の世によみがえった“昭和の旅”。私もレトロな客車に揺られながら、開いた窓から自然の風を浴び、ボックスシートでオリジナル掛け紙の「駅弁」をつまんでみました。

E10形・E31形電気機関車+旧型客車・普通列車、大井川鐵道大井川本線・福用~大和田間

E10形・E31形電気機関車+旧型客車・普通列車、大井川鐵道大井川本線・福用~大和田間

7月13日まで運行予定の大井川鐵道「客車普通列車」。午後、ワンマン運転の「電車」で運行される定期列車の一部を、電気機関車が旧型客車をけん引する「列車」が代走し、日常の普通列車で非日常の“昭和の普通列車”を体験できると、平日夜でも盛況です。重厚なうなりを上げながらレトロな機関車が引っ張る旧型客車が、茶畑のなかを駆けていく様子は、どこか懐かしい風景です。

E10形・E31形電気機関車+旧型客車・普通列車、大井川鐵道大井川本線・家山駅

E10形・E31形電気機関車+旧型客車・普通列車、大井川鐵道大井川本線・家山駅

客車列車で運行されている列車は、金谷発16:05(注1)、17:38、19:10、20:40(注2)、家山発16:52、18:25、19:57の7本。ちょうどいまは1年で最も昼間が長い時期ですが、金谷19:10発の列車以降はすっかり夜汽車の雰囲気。3往復乗りっぱなしで昔ながらの長距離鈍行のような旅気分を楽しむ方も多くいらっしゃいました。下校の時間帯ですので、通勤・通学利用の方の専用席が設けられています。

(注1)新金谷まで電車、(注2)新金谷から電車

普通列車内で販売される乗車券

普通列車内で販売される乗車券

ドアが手動式の客車列車ということで車掌さんも乗務しています。無人駅から乗車すると、がま口を開けた車掌さんから手書きの乗車券を買い求めます。国鉄からJR初期のころは、無人駅から乗るときは、パンチ穴をパチンパチン開けてもらってきっぷを買ったもの。平成初めごろから、いまのレシートタイプに変わったと記憶しています。全て現金精算ですので、システムトラブルで、きっぷが発券できないということはありません。

1号車の各座席に設置されている「センヌキ」

1号車の各座席に設置されている「センヌキ」

さらに、この客車普通列車には、車内販売の方が乗務しています。瓶のジュース、サイダー等も販売され、1号車の窓枠のテーブルに付いている「センヌキ」で開けられます。フリーきっぷを活用して3往復を乗り通している乗客の方のなかには、3往復目になると、すっかり“出来上がって”いる方もいらっしゃいました。はしゃぐわけではなく、たまたま乗り合わせた方との語らいを楽しむのもまた、“昭和の旅”の醍醐味、大人の楽しみですね。

列車の幕の内弁当(特選幕の内弁当)

列車の幕の内弁当(特選幕の内弁当)

そして何より、車内では東海軒金谷工場製の「特選幕の内弁当」(1250円)が販売され、弁当には“大井川鐵道普通客レ 列車の幕の内弁当”と書かれたオリジナルの掛け紙が施されていました。これは乗車記念にもなりますね。いまや在来線特急や観光列車でも車内販売が風前の灯となっているなか、とてもワクワクする取り組みです。この弁当は、運行当日午後2時ごろから、新金谷駅前「プラザロコ」でも数量限定で販売があります。

(注:プラザロコの営業時間ほか、最新情報は大井川鐵道公式ウェブサイトで要確認)

列車の幕の内弁当(特選幕の内弁当)

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【おしながき】
・白飯 梅干し ごま
・鮪の照り焼き
・蒲鉾
・出汁巻き玉子
・ローストチキン
・えびフライ
・黒はんぺんフライ
・茶葉の天ぷら
・茄子とピーマンの味噌和え
・煮物(里芋、たけのこ、麩)
・五目豆
・桜えびの佃煮
・わさび漬け
・抹茶わらび餅

列車の幕の内弁当(特選幕の内弁当)

列車の幕の内弁当(特選幕の内弁当)

遠洋漁業が盛んな静岡らしく鮪の照り焼き、蒲鉾、玉子焼きと、幕の内“三種の神器”がしっかり入った正統派幕の内。名物の黒はんぺんフライ、桜えびの佃煮からわさび漬け、デザートの抹茶わらび餅まで静岡らしい食材がふんだんに使われ、ご当地感も満載です。また、添えられているわさびふりかけも静岡が本社のニチフリのものです。レトロな旅には白いご飯の幕の内弁当がよく似合います。

E10形・E31形電気機関車+旧型客車・普通列車、大井川鐵道大井川本線・大和田~家山間

E10形・E31形電気機関車+旧型客車・普通列車、大井川鐵道大井川本線・大和田~家山間

1980年代までは全国各地で当たり前のように走っていた旧型客車を使用した普通列車。平成以降は、次々と電車・気動車へと置き換えられ、いまではすっかり珍しい存在となりました。大井川鐵道は、2022年9月の台風の被害で、家山~千頭間の運休が続きます。観光需要の開拓が難しいなか、いまある車両、定期列車を活かして、知恵を絞りながら、平日午後から夜の新たな魅力を発掘。ぜひ、乗って楽しみたい「客車普通列車」です。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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