政策アナリストの石川和男がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のエネルギーリテラシー」に、ポスト石油戦略研究所代表でエネルギーアナリストの大場紀章氏がゲスト出演。紅海やアデン湾で続く、イエメンの親イラン武装組織フーシ派による船舶への攻撃が日本の石油輸入にもたらす影響について、「ほとんど関係ない」として冷静な対応を呼びかけた。
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※イメージ
イエメンの親イラン武装組織フーシ派は昨年11月以降、パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍と戦うイスラム組織ハマスに連帯を示すめた、紅海やアデン湾周辺で船舶への攻撃を繰り返している。これに対し、先月には米軍や英軍がフーシ派の拠点を攻撃するなど中東地域の緊張が高まっている。
日本の石油輸入先の約95%は中東地域で、影響が懸念されるが大場氏は「今回、攻撃が行われているルートはバベル・マンデブ海峡から紅海を通って、スエズ運河に至るルート。つまり、地中海とインド洋を結ぶルートで、そこを通る船は主に中東やアフリカから欧州間の往来。日本が輸入している石油は、ホルムズ海峡を通ったペルシャ湾経由。今回攻撃対象になっているルートは、ほとんど関係がない」と指摘。
また、欧州とアジアを結ぶ船舶が紅海ルートを避け、喜望峰やパナマ運河に10日以上かけて迂回することによる海運コストの上昇については「平年の2倍から3倍になっているが、コロナの時は10倍まで上がっていた。コロナの時ほどの流通の混乱には、まだ至っていない」と述べた。
さらに、「今回フーシ派は、おそらくあえて石油タンカーを外して攻撃している。(1月末日時点で)三十数隻攻撃された中で、石油を積んでいたのは2隻だけ。それも誤爆ではないかと言われているくらい。(攻撃が始まった昨年11月以降も)かなりの数の石油タンカーが通過しているが、あえて避けて攻撃している可能性が高い。フーシ派も周辺の産油国からあまり敵対視されてしまうと、支援が得られなくなってしまう。石油を輸出できなくしたいわけではない。世界中を敵に回してしまうと、フーシ派もやりづらい」と分析した。
そのうえで、「石油危機のようなことは現在起きにくい状況。あまり過激に反応しないのが大事」と冷静な対応を呼びかけた。
これに対して石川は「中東依存度という言葉が古いのかもしれない。マーケットメカニズムなどを冷静に見ていき、アメリカの石油がいい時はアメリカのもの、中東がいい時は中東のもの、あるいはアジアのものといった判断が適切だ」と述べた。