米大統領選 ほぼ固まった「バイデンVSトランプ」を有権者はどう見ているのか

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日本経済新聞ワシントン支局長の大越匡洋氏が3月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。現地での米大統領選の状況について解説した。

2023年9月28日、米アリゾナ州テンピで演説するバイデン大統領(米アリゾナ州テンピ) AFP=時事 写真提供:時事通信/トランプ前米大統領(アメリカ・ニューハンプシャー州ナシュア)=2024年1月23日 EPA=時事 写真提供:時事通信

2023年9月28日、米アリゾナ州テンピで演説するバイデン大統領(米アリゾナ州テンピ) AFP=時事 写真提供:時事通信/トランプ前米大統領(アメリカ・ニューハンプシャー州ナシュア)=2024年1月23日 EPA=時事 写真提供:時事通信

米連邦最高裁判所がコロラド州の予備選挙へのトランプ氏の立候補資格を認める

米連邦最高裁は3月4日、大統領選に向けた共和党・トランプ前大統領の立候補資格を認めないとしたコロラド州の判断を退け、出馬資格を認める判断を示した。

高齢で白人男性同士のリマッチである「バイデンVSトランプ」のカードは、有権者に不人気

飯田)スーパーチューズデーを迎えましたが、いまどういった報道のされ方、雰囲気を感じていらっしゃいますか?

大越)もちろん、それなりに盛り上がってはいるのですが、少し白けたムードもあります。11月に行われる本選の構図は「バイデン対トランプ」でほぼ固まっており、人々の意識はそこに向いています。しかし、高齢で白人男性同士のリマッチであるバイデン対トランプのカードは、有権者に不人気なのです。友人たちからも「力が入らない」というような話をよく聞きます。

「バイデンVSトランプ」になった場合、投票率が上がらなければ、岩盤支持層を持つトランプ氏有利

飯田)投票率が上がらない可能性もありますか?

大越)それが大きな問題で、投票率が上がらなければ逆風になるのはバイデン大統領です。トランプ前大統領の支持層は岩盤のように固いですから。

飯田)そうなると、トランプ氏が有利になりますか?

大越)まだ8ヵ月ほど先なので100%とは言えませんが、スーパーチューズデーの前に出た各紙の世論調査では、バイデン対トランプの直接対決を想定すると、ほぼトランプ氏が勝つという状態です。

2023年9月28日、米アリゾナ州テンピで演説するバイデン大統領(米アリゾナ州テンピ) AFP=時事 写真提供:時事通信

2023年9月28日、米アリゾナ州テンピで演説するバイデン大統領(米アリゾナ州テンピ) AFP=時事 写真提供:時事通信

裁判の結果によって「トランプ氏有利」の世論調査もひっくり返るのか

飯田)コロラドの予備選挙に関しては資格が認められましたが、トランプ氏はたくさんの裁判を抱えていますよね?

大越)4つの刑事訴追を受け、91件の罪状で訴えられていますので、「選挙戦と裁判が同時に進む」という異常な状態ですね。

飯田)裁判の結果によっては、世論調査がひっくり返る可能性もあるのでしょうか?

大越)もちろん彼が完全な有罪になれば「投票できない」と言う人も多いのですが、トランプ陣営は判決を引き延ばす戦術を取っています。実際、トランプ氏の「大統領在職中にしたことはすべて免責だ」という訴えを連邦最高裁で審理することになりましたので、すべての裁判日程が後ろにズレており、いつ結果が出るのか見えない状況です。

飯田)モヤモヤしたなかで、本選の投票となる可能性が高いですか?

大越)11月5日のあとに判決が出るのか、逆に直前に出て選挙戦に大きな影響を与えるのか、本当に最後までよくわからないですね。

飯田)トランプさんに関しては2016年にも、連邦捜査局(FBI)の捜査によって10月辺りにメールサーバーの件が出て、大きく状況が変わったことがありましたね。

大越)今後、約8ヵ月の間に何が出てくるかによって変わると思います。

嫌な相手ではあるが、長期的に見れば「混乱を招く」ので、トランプ再選はありがたい状況になる中国

飯田)この大統領選挙を中国はどう見ていると思われますか?

大越)トランプ氏がもしも大統領に返り咲くと、短期的には関税を引き上げるようなことをしてくるので、嫌な相手ではあるのですが、アメリカの信用や信頼を勝手に崩してくれるわけです。そのため、中国にとっては長期的に考えるとありがたい状況だと思います。

飯田)仮にバイデン氏になったとしたら、いかがでしょうか?

大越)これはこれで話ができる相手ではありますが、対決姿勢が変わるわけではありません。嫌ではあるけれど、読みやすい相手としてはバイデン氏ですね。

トランプ前米大統領(アメリカ・ニューハンプシャー州ナシュア)=2024年1月23日 EPA=時事 写真提供:時事通信

トランプ前米大統領(アメリカ・ニューハンプシャー州ナシュア)=2024年1月23日 EPA=時事 写真提供:時事通信

今後は「自分たちで何とかする」という覚悟を持つしかない日本

飯田)どちらに転んだとしても、世界は変わっていくのでしょうね。日本はどのように対応したらいいのでしょうか?

大越)ヨーロッパ、オーストラリア、韓国、フィリピンなどもそうですが、多くの同盟国や仲間になれる国との関係を着実に固めることが大事です。アメリカが仮に、短期的に違う方向へ進んだとしても、ブレないように日本自体の足場を固めるしかないと思います。

飯田)自分で守るか、あるいはクアッドなど、さまざまな仕組みを組み合わせるしかないのでしょうか?

大越)重層的に、いろいろな枠組みを固めていく。ただ、日本は地理的にロシアや中国の隣にあり、引っ越すわけにもいきませんので、「自分たちで何とかする」という覚悟を持つしかないと思います。

4月に国賓として訪米する岸田総理

飯田)大統領選で揺れているなか、来月(4月)には岸田総理が国賓でアメリカを訪問する予定です。立ち回りが難しいと思いますが、いかがですか?

大越)4月10日に訪米予定ですが、おそらく親密ぶりを示すなど、グローバルな位置付けのなかで日米関係を訴えることになると思います。

飯田)あまりにもバイデンさんに寄ると、トランプさんに恨まれそうだなと思うのですが、そこはそこなのですか?

大越)そこはそこでしょうね。アメリカなので……。

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