JR東日本・TOHOKU EMOTION「ランチコース」(7,900円)~東北エモーション、中から見るか?外から見るか?①【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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JR八戸線の前面展望

JR八戸線の前面展望

鉄道好きの行動の1つに、運転席越しに前面展望を楽しむ「かぶりつき」というものがあります。
最大の楽しみは、列車同士のすれ違い。
特に単線区間では、すれ違いのできる駅が旅情あふれる一コマとなります。
反対列車が待っている様子も絵になりますし、待っていなくても、列車が左に行くか、右に行くか、眺めているだけで、人生の「選択」に思いが重ねられてきます。

鉄道旅にも、乗って楽しむか、撮って楽しむかの「選択」があります。
「乗る」を選択すると、走る様子を外から見ることは出来ません。
「撮る」を選択すると、車内の「お楽しみ」は体験できません。
では、もしも「両方」体験できるとしたら・・・。

今回、JR八戸線のレストラン列車「TOHOKU EMOTION」で、両方体験してみることにしました。
題して、「東北エモーション、中から見るか?外から見るか?」。
まずは、「中から見る」旅を楽しむことに致しましょう。

東北エモーション

東北エモーション

3月某日、午前10時半過ぎの八戸駅にやって来ました。
「東北エモーション」は、八戸駅の1番線を午前11:05に発車し、八戸線を久慈に向かいます。
全席がツアー商品として販売されているため。「団体専用列車」という扱い。
東京からは、朝7:36発の「はやぶさ3号」が八戸10:31着で接続しています。
ただ、地元の方曰く、八戸は“新橋と築地が一緒になったような街”。
夜は屋台が楽しめ、朝は朝市が楽しめるので、前乗りしてテンションを上げておくのも一手です。

東北エモーション

東北エモーション

発車10分前、例によって“支配人”の方が、closeの札をくるりとひっくり返して「open」!
「前回」乗車した際も感じましたが、この演出は好きですね。
普通のローカル線であれば、自分でボタンを押して開閉するキハ110系のドア。
でも、赤じゅうたんの上を歩いて、丁重な出迎えを受け、入口に取り付けられた庇とランプの下をくぐるだけで、全く違うストーリーが始まるような気持ちの高揚感があります。

*こちらの記事でご紹介しました。↓↓
1時間50分の絶景レストラン列車!~TOHOKU EMOTION「ランチコース」(7,900円)【ライター望月の駅弁膝栗毛】

「東北エモーション」2号車のライブキッチンスペース

「東北エモーション」2号車のライブキッチンスペース

キッチンの調理風景

キッチンの調理風景

乗車口となる2号車は、「ライブキッチンスペース」。
乗車開始に合わせるように、手際よく調理が行われていました。
この車両は、「食堂車」であることを示す「シ」が入った「キクシ112」という形式。
“レストラン列車”を謳う、「東北エモーション」のシンボル的な車両です。
料理人の魂のようなものを間近に感じながら、指定された座席に向かいます。

ウェルカムドリンクは、スパークリングのアップルジュース

ウェルカムドリンクは、スパークリングのアップルジュース

3号車・オープンダイニングスペース

3号車・オープンダイニングスペース

あおもりシードルで乾杯!

あおもりシードルで乾杯!

今回も久慈行の先頭車両、3号車・オープンダイニングスペースへ。
据え付けのテーブルにある引き出しから、フォークやナイフを取り出していただきます。
東北エモーションオリジナルの箸袋に入った割箸が用意されているのも有難いところ。
フリードリンクは、やっぱり「あおもりシードル」からスタートです。
ワインは山形の高畠ワイン(赤・白)、ビール・ノンアルコールビールがあります。

bl170424-9(東北エモーション)
~アミューズ~
エビとモッツァレラチーズのパートブリック包み 春の香り
(秋田・大館の柴田慶信商店の曲げわっぱ)

bl170424-10(東北エモーション)

~前菜のアソート~
三種のウニのムース仕立て コンソメゼリー
ホタテ貝とカンキツ類のスモークサーモン巻き ガルシアシェフ(モナコ宮)への思い
アスパラガスの塩湯でムースリーヌソース添え
季節の野菜、ヴィネグレットソース和え
白身魚とタコのマリネ
海老とブロッコリーのサラダ仕立て
(福島・会津桐 REBIRTH PROJECTによるデザイン)

ライブキッチンスペース

ライブキッチンスペース

2号車のライブキッチンスペースを再びのぞくと、メイン料理の仕上げに入っていました。
ソースのいい匂いが香ってきて、あゝ、メインが待ち遠しい!
「食」にこだわった観光列車は数多くあれど、厨房を持っている列車はやっぱり違います。
出来立ての一番美味しいタイミングで、温かいものを食べられる訳ですからね。
この「美味しい料理」こそが、「東北エモーション」をリピートしてしまう最大の理由なのです。

bl170424-12(東北エモーション)

~メイン料理~
川俣シャモ胸肉のローストとモモ肉の詰物 フォアグラのせ
ササニシキのリゾット添え マデラソース
(岩手・小久慈焼)

今年(2016年)の3~6月期は、宮城県塩釜市にあるフレンチのお店「レストラン・シェヌー」のオーナーシェフ・赤間善久氏が監修したメニューが提供されています。
これまでは半年ごとにメニューを変えてきましたが、今年は7月からの3カ月間を、同じシェヌーのスーシェフ・赤間善太氏が監修を担当することになっています。
このような“親子競演”、もちろん、東北エモーションでは初の試みなんだそうです。

bl170424-13(東北エモーション)
~プティフィール~
シナモン入り クロタン・ココ
桜の花のマドレーヌ
チーズタルト
チョコレートのサブレ
(福島 会津塗 BITOWA)

bl170424-14(東北エモーション)
~温かいお飲み物~
コーヒー
紅茶(ダージリン)
烏龍茶

さて、ココまでは、東北エモーションの「中で見える」もの。
ココからは、東北エモーションの「中から見える」ものです。

蕪島

蕪島

「東北エモーション」でも、景色の美しい区間では徐行運転が行われます。
最初の徐行区間は11:26頃、鮫駅を出て、進行方向左側に「蕪島」が見える区間です。
訪れた3月は、まさにウミネコの繁殖期で、海面に白い点々が見えるのは、みんなウミネコ!
毎年、この時期は、3万羽以上がやって来るといいます。
国の天然記念物にも指定されています。

葦毛崎展望台付近

葦毛崎展望台付近

程なく11:30頃、鮫~陸中白浜間のビュースポットで、しばしの停車。
葦毛崎は、幕末には異国船の監視、第二次世界大戦では、日本軍の監視所になった場所です。
最初のお酒を飲みながら、大きな太平洋を眺めて、前菜のアソートをいただきます。
ちなみにイカ漁のシーズンの夜は、漁火が見えるそう・・・。

八戸線・宿戸~陸中八木間

八戸線・宿戸~陸中八木間

そして12:15頃から再び、車窓には美しい三陸の海が広がります。
この宿戸(しゅくのへ)~陸中八木間の車窓には、通称「復興ドラム缶」が並びます。
八戸線も東日本大震災で大きな津波被害を受けてしまいましたが、何とか1年で全線復旧。
その際に地元の方が、「ありがとうJR」と書いたドラム缶を作って並べました。
しかもこの場所では、地元の皆さんが大漁旗を振って、温かく出迎えてくれるんです。

八戸線・有家~陸中中野間

八戸線・有家~陸中中野間

同じように大漁旗で迎えてくれるのが、12:20過ぎ、有家(うげ)駅を出たところの海岸。
線路と道路が並行していることもあって、「東北エモーション」を追いかけて来てくれることも・・・。
コレがホントに温かいんです!!

アレッ!? よく見ると、海岸の小屋に「駅弁膝栗毛」の文字が!
実は今回、この大漁旗を振っている皆さんの活動に、ちょっとお邪魔してみました。
果たして、「東北エモーション」を外から見ると、どう見えるのか?
次回、「東北エモーション、中から見るか?外から見るか?」、「外から見る旅」をご紹介します。

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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