八戸線・八戸~久慈間を走るレストラン列車「TOHOKU EMOTION(東北エモーション)」。
「ランチコース」「デザートブッフェ」を両方堪能して、八戸へ再び戻ってくる人も多いと思います。
八戸着は16時過ぎですので、東京行の「はやぶさ」は何本もありますが、せっかく青森まで来て、列車だけ乗って帰るのは、ちょっと勿体ないですよね!
出来ることなら、もう少し「青森らしい体験」をして、温泉宿にも泊まってみたいもの・・・。
そんな思いを叶えるために、八戸駅から青い森鉄道の普通列車・青森行に乗り継ぎます。
なんたって、青森は日本有数の「温泉県」!
温泉地の数では、日本のトップ5に入る“温泉が多い”県ですからね。
青い森703系電車に揺られて20分あまり、空港のある町・三沢(みさわ)で下車。
その駅前には、青森の玄関口に相応しい“温泉リゾート”があります!!
(参考:青森県ホームページ)
やって来たのは、古牧温泉「星野リゾート 青森屋」!
温泉のシンボル、露天風呂の「浮湯(うきゆ)」は、この時期、新緑の中で湯浴みが楽しめます。
日が暮れれば、ライトアップが行われ、より池に浮かんだような幻想的な雰囲気に・・・。
掛け流しのお湯に身を委ねて、優しい灯りを眺めれば、旅の疲れも癒されます。
夏の深緑、秋の紅葉、冬のねぶり流し灯篭などなど、四季折々の景色が楽しめるのも特徴です。
浮湯に続く内湯の「ひば湯」は、青森を代表する木「ひばの香り」が楽しめるお風呂です。
「木曽ヒノキ」「秋田スギ」と並んで、日本三大美林の一つに数えられる「青森ヒバ」。
その独特の香りもまた、癒しの香りです。
掛け流されている古牧温泉の源泉は、効能豊かなアルカリ性単純温泉。
青森屋各所のお風呂に使われています。
温泉と並んで「青森屋」で外せないのが、ショーレストランの「みちのく祭りや」。
なんとココ、「青森ねぶた」「弘前ねぷた」「五所川原立佞武多(ごしょがわら・たちねぷた)」「八戸三社大祭」という“青森四大祭り”の気分を1年通じて楽しめるのです。
天井の高い食事処ではありますが、青森ねぶたの大きな2台の山車が練り歩く様子は壮観!
青森の美味しい地酒でほろ酔い気分になりながら、段々と気持ちも盛り上がってきます。
盛り上がってきたところで、私も花笠をかぶって跳人(ハネト)体験!
首都圏で暮らしていると、『青森ねぶたはスゴイ!』というイメージを何となく持ってはいるのですが、行ったこともないし、行こうとすると混んでるのがイヤとなって、結局、どんな祭りなのか、よく分からないまま、年齢ばかり重ねているんですよね。
その意味では「みちのく祭りや」で、青森の祭りをコンパクトに体感できるのは、大きな魅力です。
「みちのく祭りや」で青森四大祭り気分を味わった後は、本館1階の「じゃわめぐ広場」で開催される「じゃわめぐショー」を堪能。
津軽三味線、青森の民謡などに加えて、楽しいのはやっぱり「スコップ三味線」!
雪かきのスコップをセンヌキで叩いて三味線っぽいことをするのですが、既に30年以上の歴史があり、私も埼玉在住の“2代目世界一”の方をニッポン放送の番組で取材したことがあります。
実はその後、第3回世界大会で世界一に輝いたのが、青森屋の皆さん!
“世界一の技”を見られるのは勿論、参加して楽しむことも出来ます。
青森の文化を満喫したら、今どきの和モダンの部屋で、明日への英気を養います。
部屋は、「あずまし」「いくてら」「うんかん」「えんつこ」「おぐらみ」の5つのタイプから、アメニティや予算に合わせて選ぶことが出来ます。
この日は、去年(2016年)完成した新客室「おぐらみ」の一室へ・・・。
「おぐらみ」とは、青森の方言で「気品ある」という意味を持つだけあって、室内は青森県産のりんごを使用したという「りんご輪紙障子」が上品で落ち着いた空間を演出しています。
翌朝は朝イチで、青森屋の原点ともいうべき「元湯」へ・・・。
広大な敷地を誇るため、朝6:10から30分おきに本館~元湯間のバスも運行されています。
コチラは三沢駅近くにあり、地元の方の共同浴場機能を兼ね備えていることもあって、日帰り入浴も「450円」という東京の銭湯並みの値段で、掛け流しの温泉に入ることが出来ます。
勿論、旅の途中でフラッと立ち寄るのもアリですが、ココはやっぱり泊まりで楽しみたい!!
新幹線が八戸止まりだった時代、在来線特急の車窓からよく眺めていた「古牧温泉」。
“のれそれ青森”をコンセプトに「青森屋」として再生を遂げる中で、今回初めて宿泊したのですが、『今までなんでスルーしてたんだろ?』というのが、私自身、泊まった後の正直な気持ちです。
お湯よし、アメニティよし、アクティビティよし、そして紹介しきれていませんが地場の食事もよし!
特に青森の祭りを一ヶ所で見られるのは、ここを置いて他にはありません。
“青森にまだ行ったことが無い”という方は、まず「青森屋」で“青森はすごいぞ!”ということを体感してから、青森各地へ足を伸ばしてみるのがお薦め。
泊まるのが楽しい、青森の玄関口に相応しい温泉宿です。
※東北新幹線八戸駅からも無料送迎あり(3日前まで要予約)、三沢駅からの送迎は予約不要。
八戸からの帰路、駅弁で〆るなら、やはり青森を代表する駅弁「八戸小唄寿司」(1,150円)!
明治時代からこの地で駅弁を手がける「吉田屋」の看板駅弁です。
この駅弁は、今の八戸駅が「尻内駅」だった時代から販売されるロングセラー。
昭和33(1958)年、八戸市の若手有志5人による「八戸アイディアグループ」が考案し、「吉田屋」によって商品化され、今では八戸はもちろん、青森を代表する駅弁の1つとなっています。
包装を開けると、三味線の胴をイメージした容器から漂う、程よい酢の香り。
ビニールを外せば、鮮やかなピンクのサーモンをセンターにサバが脇を固める寿しが現れました。
この駅弁・最大のインパクトは、何と言っても、ナイフ替わりの“三味線の撥(ばち)”!
ココに撥があることで、青森の旅の途中で聴いた三味線の音色が思い出されてきて、旅の余韻に浸ることが出来るわけです。
「青森屋」からの帰りであれば、夕べの津軽三味線(スコップ三味線)の話題で、またひとしきり盛り上がることができますよね!
少し強めの酢で〆られた八戸近海産のサバと紅鮭の押寿司。
実はコレ、考案された当初は「サバとニジマス」を使ったものだったそうですが、商品化にあたって「サバと紅鮭」に変わったというエピソードがあります。
また、発売当初はほとんど売れず、昭和38(1963)年に横浜高島屋で行われた駅弁大会で実演販売したことがきっかけでその美味しさが伝わり、一気に有名駅弁の仲間入りを果たしたのだそう。
八戸市民の手で生まれ、都会で一旗揚げて、郷土へ錦を飾った駅弁とも言えますよね。
帰りの「はやぶさ」ではお腹いっぱいでも、土産としても重宝な「八戸小唄寿司」です。
東北エモーションはもちろん、新緑の奥入瀬・八甲田と組みあわせてもイイこの時期の青森。
6月上~中旬は東北新幹線開業35年で半額のきっぷも発売されていますので、足を運ぶには、最高のタイミングですよ!
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/