長岡駅「きつねいなりと鮭菊ずし」(1,050円)~「みんな大学@越後長岡」の新作駅弁開発会議に潜入!

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越乃Shu*Kura

キハ48形・快速「越乃Shu*Kura」、信越本線・青海川~鯨波間

鯨波海岸を行く臨時快速列車「越乃Shu*Kura」。
「日本酒」をテーマに車内で試飲などが出来る、酒どころ・新潟らしい観光列車です。
運行区間で列車名が変わり、基本は上越妙高~十日町間の「越乃Shu*Kura」、上越妙高~越後湯沢間の時は「ゆざわShu*Kura」、上越妙高~新潟間の時は「柳都Shu*Kura」となります。
いずれの場合も長岡経由で運行され、長岡では比較的長めの停車時間が設けられています。

きつねいなりと鮭菊ずし

きつねいなりと鮭菊ずし

その長岡駅で駅弁を販売する「池田屋」の目下最新作は、「きつねいなりと鮭菊ずし」(1,050円)。
平成27(2015)年5月に登場しました。
可愛らしいきつねの絵を手掛けているのは、ツイッターで17,000近いフォロワーを持つというイラストレーターのtamaさんという方。
池田屋の永橋ひかる専務がダメ元で思い切ってアタックしたら、タイミングよくOKを頂けたそう。

きつねいなりと鮭菊ずし

きつねいなりと鮭菊ずし

面白いのは、掛け紙がポストカードになっていること。
普通、駅弁の掛け紙は、集めている人以外にはごみになってしまうもの。
ただ、それが「ハガキ」で、「とても可愛かった」ら、持って帰ってもらえるんじゃないかというところから始まった駅弁だそうです。
旅の思い出を記すもよし、子供に喜んでもらえるような一言を書くもよし、旦那から奥さんへ普段はあまり書けないメッセージを託すもよし・・・そんな情景を思い浮かべてのハガキなんですね。

きつねいなりと鮭菊ずし

きつねいなりと鮭菊ずし

実は企画から発売までは、およそ3か月という“突貫”だったとか。
最初から完全に女の人をメインターゲットに据えて、量を軽めに抑えたといいます。
でも、思いのほか、女性以外にも、中高年層の“少しでいいからイイものを・・・”という嗜好の人たちにも響いて、既に長岡駅では2番人気、リピーターも多くいる駅弁なんだそうです。
確かに東京までの1時間半でいただくには、ちょうどいい量なんですよね。

きつねいなりと鮭菊ずし

きつねいなりと鮭菊ずし

「鮭ずし・菊ずし・いなり」という3つの手玉寿しにデザートの笹団子まで付いた可愛らしい駅弁。
菊ずしには「おもいのほか」「かきのもと」という2種類の食用菊をブレンドしているといいます。
また、いなり寿しには、長岡の豆腐屋さん「吉田屋」の名物、「長岡黒いなり」を使用。
長岡の老舗の味を受け継ぎ、2日かけてじっくり煮たお揚げが酢飯を丸くまろやかに包みます。
池田屋十八番の鮭の寿しと合わせて、「長岡」の食文化がギュッと詰まっている駅弁です。

まちなかキャンパス長岡

まちなかキャンパス長岡

さあ、これに続く「池田屋」の新作駅弁は、一体どんなモノになるのか?
やって来たのは、長岡駅からほど近い「まちなかキャンパス長岡」。
ココを会場に、ブランドコンサルタントの小出正三氏を発起人として、平成23(2011)年から地元の有志が集まって行われている草の根の交流会が、「みんな大学@越後長岡」です。
訪れた日は、4月から月イチで行われてきた“新作駅弁開発会議”のラストとなる4回目でした。

永橋ひかる

「池田屋」永橋ひかる専務

テーマは、「池田屋」創業130周年記念の新作駅弁。
メンバーには、長岡周辺の建築家の方から主婦の方、さらには自分で飲食店やバーを経営されている方など、多種多様な業種の方が15人ほど集まりました。
池田屋の永橋ひかる専務も、普段はほどんど1人で企画・販売をしている中で、「地元の皆さんに集まっていただいて、駅弁作りが出来るのは本当に有難い」と話します。

吉岡秀樹

吉岡秀樹氏

今回、「みんな大学@越後長岡」のメンバーによる新作駅弁の開発を発案したのは、地元の“チョット面白い歯医者さん”こと、吉岡秀樹さん。
この日は、永橋専務と共に“駅弁会議”の進行を務められていました。
ココまでの3回、「新潟・長岡らしさ」、「SNS(インスタ)映え」などを考慮に入れながら、出来るだけフリーダムに、自由な発想を大事にしながら、議論を積み重ねてきたようです。

駅弁 分析

東京駅「駅弁屋・祭」で販売されている駅弁の分析

興味深かったのが、長岡の皆さんによる東京駅「駅弁屋・祭」で販売されている駅弁の分析です。
「みんな大学」では、「池田屋」の従来の駅弁だけでなく、東京駅で有名駅弁を調達して試食。
独自の視点で評価をしていました。
見た目の評価が高かったのが、「牛肉どまん中」と「山形おもてなし弁当」という米沢2社の駅弁。
中味の評価が高かったのが、「えび千両ちらし」(新潟駅)、「かきめし」(厚岸駅)。
「えび千両ちらし」の評価が高いのは、やはり“地元贔屓”なところもあるのかな!?

神楽南蛮風みそ煮

山古志ゆかりの神楽南蛮風みそ煮

枝豆

新潟の夏は、やっぱり「枝豆」!

車麩

長岡には「車麩」だってあります!

この日は、参加者の皆さんが「新作駅弁」にあったら嬉しいおかずも持ち寄って行われました。
山古志特産の「神楽南蛮」をイメージしたおかずや夏の新潟らしく「枝豆」を使ったおかず。
さらには、越後名物の「車麩」など、地元食材を使った手作りの品がズラリと並びました。
改めて思うのは、新潟って米はもちろん、野菜がホントに美味しい土地なんですよね!
果たして、この中から「新作駅弁」に採用されるおかずは登場するのか???

プレゼン

参加者の皆さんによるプレゼン

プレゼン

参加者の皆さんによるプレゼン

会議では、チームごとに「新作駅弁」の案や、新作駅弁のキャッチフレーズなども提案されました。
花火や食器など新潟の名物にちなんだものはもちろん、出張帰りなど、食べるシチュエーションにこだわったものも登場。
合わせて「中が見えないのは不安」「子供がいるとこぼすので駅弁を選びにくい」といった現状の駅弁に対する女性からの意見などもあり、それを乗り越える提案も行われていました。
「土地柄だなぁ」と思わされたのは、どの弁当の案も、ご飯と一緒に「日本酒を呑む」ということが“デフォルト(前提)”で構成されていること。
県民1人当たりの日本酒消費量が全国トップにして、16の酒蔵を持つ「長岡市」ならではですね。
酒1杯で睡眠導入剤になってしまう私からすると、圧倒されるばかりです。

小出正三

小出正三氏

おしまいに「みんな大学@越後長岡」発起人で、ブランドコンサルタントの小出正三氏が、4回にわたって行われた“新作駅弁開発会議”をまとめて一言。
「長岡にはいいものがあるのに、いい表現が出来ていない。ポイントをしっかり伝えて、心も満たせる駅弁に・・・」という点を指摘して提案されたアイディアを「池田屋」に託し、お開きとなりました。


この日の会議のダイジェストは、動画でもアップされています。

永橋ひかる

池田屋・永橋ひかる専務

永橋専務は、「地元の皆さんと一緒に“駅弁会議”が出来たのは、SNSの力が大きい」と話します。
また、出来るだけ縛りを無くしてフリーダムに考えていただいたことで、長年、駅弁に関わっている人からはまず出てこない発想もいただくことが出来たといいます。
「池田屋創業130周年」の記念駅弁は、今後、秋ごろをめどにプロトタイプを作って、地元のイベントなどで試験販売を行い、来年春ごろの商品化を目指す予定だということです。

E129系

E129系

昭和30年代の「八戸小唄寿司」をはじめ、地元の皆さんと「駅弁」を共同開発するスタイルは、しばしば見られてきた光景です。
その中にあって、SNSを使って参加者を募り、議論をオープンにして「新作駅弁作り」を行うのは、今の時代ならではの「駅弁」ではないかと思います。
また、普段は駅弁と接点が少ない人も巻き込んで駅弁作りを行うことで、クルマ社会の地方の皆さんにとっては、「駅弁文化」への興味・関心を引く機会にもなっているように感じました。

創業130周年の小さくても“ひかる”駅弁屋さん、長岡「池田屋」。
そのラインナップに、一体、どんな駅弁が加わるのか?
「駅弁膝栗毛」でも、新作駅弁の誕生まで、じっくりと追いかけていきたいと思います。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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