ネットコミュニケーションの3つのY

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ネットコミュニケーションの3つのY

ネットを介したコミュニケーションでは、次の3つのYを頭に入れておくことをお勧めします。

1.Yasashisaやさしさ
その言葉は相手を傷つけることにならないか。言葉にしてしまうと消えないのがインターネットの世界です。発する前に言葉の使い方に注意しましょう。

2.Yasahii易しい
簡単に理解ができ、自分たちだけがわかる言語を使ってないか。伝えることだけを意識していると、本当に相手に伝わったのかを確認せず、まちがった理解のまま伝わっていくことがあります。短い言葉でしっかり内容を説明できているかを考えましょう。

3.Yuniquユニーク
唯一独特の情報であることを確認します。これは出典を明らかにすることと同じ意味です。考えもなく安易にシェアを繰り返すことで、唯一の内容から離れ、ただまとめただけになり、結局タイトルだけが一人歩きしていきます。それではフェイクニュースになってしまいます。

以上の3つのことを最低限意識してコミュニケーションをとれば、みなさんの発信力がグレードアップすることは間違いありません。会話はキャッチボールですので、投げられたボールを投げ返します。でもすぐに投げ返すのではなく、3つのYを考える時間を少しだけ持つことが何よりも大切です。これはネットに参加するマナーとも言えるでしょう。

「ネットコミュニケーションの3つのY」を実感した出来事がありましたので紹介します。

ネットコミュニケーションの3つのY

買ったばかりの品に不具合!? 顧客対応から学ぶ

紅葉狩りのシーズン、晴れていれば外に出て街路樹の色づきを楽しめる時期です。乾燥していて寒いので暖かいものがほしくなり、マイボトルを持ち歩く人も目にします。「マイボトル」は、保温(保冷)性が高い容器の通称として使っていますが、一般的には魔法瓶といいます。外気の影響をほとんど受けずに温度を保ち続けるので魔法のような瓶。夢が広がるネーミングです。さて我が家ではこのボトルと同じメーカーの炊飯器を使っています。新米の季節でもあり、毎日おいしいごはんを炊いてくれるこの炊飯器に、先日ある危機が訪れたのです。

 

 

買ったばかりなのに

3連休の夕方、冷蔵庫から缶ビールを出そうとした夫がキッチンで 「ねえ、この炊飯器の釜、ちょっと変じゃない?」と話しかけてきました。我が家の炊飯器は購入して3週間ほどでした。以前のものは内釜の塗装が剥げてしまったこと、二人暮らしには大きすぎるので小型のものに買い替えました。1万円もしなかったと記憶しています。その買ったばかりの炊飯器の内釜、よく見るとフタと接触する部分の色が変わっており、日がたつにつれて「塗装が剥げている」状態が進み、私も気になっていました。「ゴシゴシ洗ったり、液体に漬け込んだりしてないけど…」と答えると、「ちょっと聞いてみようか」と夫が言いました。

 

 

お客様相談室の対応

私たちは内釜の写真を撮り、メーカーのWebサイト上にあるお客様相談のページに行き、写真を添付する形で何が起こっているのか問い合わせてみることにしました。ここからは某メーカーの神対応のお話です。結論から言うと私たちは大変ハッピーな気持ちで現在も同じメーカーの炊飯器を使用しています。いったいどうなったのでしょうか。送信ボタンを送って10分足らず。自宅の電話が鳴りました。声の感じは少し年配の男性。ゆっくりとした安定的な声のトーンでこう話しました。

「お休みの時に申し訳ありません。メールを拝見しました。本日は担当者が不在なので状態は分かりかねますが、何か事故になっては大変と思いご連絡させていただきました。よろしければ交換させていただけないでしょうか」「えっ修理じゃなくて交換ですか!?」

あまりに素早い対応。修理を覚悟していた私は事態の急展開に驚き、言おうとしていた文句も引っ込んでしまいました。

「この製品は長く愛用されており稀なことで、会社としてもしっかり原因を追究したいと考えております。引き換えに新しい製品(同様のもの)をお送りしますが、お客様には当該商品を送り返す手間が生じてしまいます。不快な思いをさせた上にお手数をおかけして大変申し訳ありません」

 

 

スピードと第三者

オジサマ、なかなかの対応。インターネットを介したメールのやり取りはスピードがモノを言います。電話であれば、企業の営業時間内でなければつながらないと一般的には思っています。私たちも対応は翌週になり、返事にも数日間かかるだろうと思っていました。しかし、送信ボタンを押してから、ものの10分で電話がかかってきました。そして担当者はいないが交換するというスピード提案がなされました。このような場合、消費者側は「損をした」という気持ちがあるために、損を得に変えなければ納得しません。またそれは期待通りで当たり前。相手の感動を呼ぶには、期待以上の行動で心を動かすことが必要となるのです。私は修理を予想していたので、交換という対応はまさに期待以上でした。その後の手配も簡潔にて完璧。数分で電話は終わり、休日の時間をつぶさずに済みました。

お客様から電話があったとき、メーカー自身が「うちの商品に限って」あるいは「弊社のここが優れている点です」と自ら言うのは、営業の面からも当たり前のことです。しかし、実は消費者が「A社の商品は使いやすい」「B社の顧客対応は親身だった」など、会社以外の人が商品の価値を認めると、その信頼度はぐっとあがります。第三者のコメントが何よりも威力があるのです。私はこの出来事をFacebookに投稿したり、友人に話したい気持ちが湧いてきてしまいました。これがネットの拡散威力です。そして、私たちがこの商品を愛用していることは言うまでもありません。

 

 

自分は大丈夫

一方で、ネットを介すると悪い情報も瞬時に拡散してしまいます。秒速の勢いを持つ今の情報ネットワークを軽く思ってはいけません。間に人が入れば入るほど、憶測が憶測を呼び、全く違う情報になって伝播することは伝言ゲームでも明らかです。私たちは世界中とつながっているのです。そしてその実感がない分、落とし穴に陥りやすくなっています。「ちょっとひどくない?」と何の気なしに発したつぶやきが、無責任に広がっていくことをしっかりとイメージしておく必要があります。

「ネットコミュニケーションの3つのY」を心がけて、ネット生活をお楽しみください。

柿崎元子 メディアリテラシー

連載情報

柿崎元子のメディアリテラシー

1万人にインタビューした話し方のプロがコミュニケーションのポイントを発信

著者:柿崎元子フリーアナウンサー
テレビ東京、NHKでキャスターを務めたあと、通信社ブルームバーグで企業経営者を中心にのべ1万人にインタビューした実績を持つ。また30年のアナウンサーの経験から、人によって話し方の苦手意識にはある種の法則があることを発見し、伝え方に悩む人向けにパーソナルレッスンやコンサルティングを行なっている。ニッポン放送では週1のニュースデスクを担当。明治学院大学社会学部講師、東京工芸大学芸術学部講師。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修士
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