厳しい寒さが続く…忍び寄る季節病・AGシンドロームとは?
公開: 更新:
【報道部畑中デスクの独り言】
この冬の日本列島は厳しい寒波に見舞われています。首都圏では先月22日、今月1日と2週続けて雪に見舞われ、22日には東京都心で23センチの積雪を記録しました。路肩には依然として雪が解けずに残っているところがあります。
気象予報士としてのお話をさせていただきますと、この雪の原因は日本の南を通る、いわゆる「南岸低気圧」。温帯低気圧の一種で、太平洋高気圧に覆われる夏場以外にも普通に発生します。ただ、特に冬場はほぼ5日に1個の割合で発生、そして太平洋側に大雪をもたらす可能性があるため、注目されるわけです。
南岸低気圧は日本の南を通過する際、南から暖かく湿った空気を日本に運び、雨をもたらします。しかし、冬場はこれに加えて北からの強い寒気が降りてきています。湿った空気=水蒸気は上昇すると思い切り冷やされて水になり、氷になる…やがてそれが解けずに地上に落ちてくる…これが雪です。
では雪と雨の境目はどこになるのか? まず、経験則として言われている目安が、低気圧のコース、低気圧の中心が八丈島付近を通ると雪になるといわれます。これより北寄りだと、暖かく湿った空気が入ってくるので雪は解けて雨になりますし、南寄りだと、そもそも低気圧の影響は受けず、雨や雪そのものが降らないということになります。
そして、境目はその時の気温にも大きく左右されます。地上ではセ氏2度前後。さらに850hpa、上空にしておよそ1,500mの高さで-3度前後、この温度以下ですと、上空の氷は解けずに地上に落っこちてくるというわけです。
ただ、これはあくまでも目安…低気圧のコースがちょっとでもずれると、状況は大きく変わってきます。さらに冷たい風が北から吹いて来たり、地上の温度がもともと低かったりした場合、雨の予報でも雪になったり、降った雪がなかなか解けずに積雪を増やすこともあります。このように、様々な要素が絡んでくるために、大雪の予想は極めて難しいのです。特に今月1日、再び襲った大雪は先週降った雪が残っていたために、それがあたかも「保冷剤」のような役割を果たし、地上の気温低下に寄与したと指摘されています。
ニッポン放送では雪の予報があると、今後の見通し、交通機関の乱れを中心にきめ細かく情報をお伝えしています。特に交通機関の乱れ…「●●線が運転見合わせ」の情報は最も重要ですが、「▲▲線の遅れ」も侮れません。「遅れ」と一言で済む情報でも、各駅で大変厳しい現象をもたらすからです。
22日の雪の日、東京メトロ日比谷線では、中目黒駅で夕方のホームが電車を待つ客でいっぱいとなり、30分以上も足止めを食う事態になりました。私もその場に居合わせたのですが、電車は遅れる上に、遅れた電車はすし詰め状態、乗る人も降りる人も身動きが取れず、何度もドアの開閉が行われる…まさに遅れが遅れを呼ぶスパイラルに陥っていました。外からは横殴りの雪がホームに入り込んできます。もちろん傘などさすことはできません。中目黒駅には幸いホームドアが設置されていますが、それがなければ客がホームに転落しかねない緊迫した状況でした。降りる客は乗ろうとする人に押されて外に出られず、ある女性は車両とホームドアのわずかな隙間で「こわい、こわい」とおびえていました。何とか降りる人に道を空けようとしても、後ろからの圧力に押されてしまいます。けが人が出なかっただけ幸いでしたが…何度も経験しているものの、「電車の遅れ」はこれだけの混乱をきたすのだということを改めて痛感した次第です。
一方、雪がやんだ後も東京都心では連日氷点下の最低気温となるなど、凍える寒さが続きました。
「どうしても布団の中のぬくもりが忘れられなくて…」
都心で氷点下4度を記録した25日の朝、有楽町駅前で聞いた通勤を急ぐ人の声です。
そう、寒さに関するこの気持ちは「季節病」と言っていいかもしれません。大袈裟ですがインフルエンザに勝るとも劣らない病魔だと私は思います。それは名付けて…
AGシンドローム
このAGとは…?「ATO Gofun(あと5分)」のこと。本当にこの季節になると布団から出られなくなりますよね。「あと5分」「あと5分」と誘惑に負けて、ズルズルと起床時間が遅くなっていく…慢性化するとこれがなかなか治らないのです。
この“病気”には副作用もあります。私は少し早めに会社に着くように自宅を出発するため、普段乗る電車はラッシュアワーのピークから少し外れるのですが、これが5分遅れるとどうなるか?…ピーク時にぶち当たり、ぎゅうぎゅう詰めの苛酷な車内を体験することになるのです。まさに5分の「快楽」と引き換えに混雑の「地獄」を味わいます。それはその日の生活、モチベーションにも大きな影響を与えることになります。
5分の快楽をとりますか? 数十分の地獄をとりますか?…冬は快楽への“誘惑”とのあくなき戦いなのです。私もそんな戦いを肌で感じながら仕事へ向かう毎日です。