アニマルセラピーを愛猫と保護犬と続けて20年。女性獣医師の訪問活動に密着!

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【ペットと一緒に vol.77】

アニマルセラピー ボランティア Akiホリスティック動物病院 菅野晶子

ボランティアでアニマルセラピーの訪問活動を20年間続けてきた、Akiホリスティック動物病院(東京都八王子市)の院長である菅野晶子獣医師。高校時代からアニマルセラピーを行うのが夢だったと語る菅野さんの、訪問活動に密着。これまでの愛猫や愛犬とのアニマルセラピー活動も振り返ります。


高齢者との約25分間の触れ合いへ

2018年2月、東京都八王子市の介護老人保健施設“ハイネス憩の丘”に、5頭の犬と2頭の猫の姿がありました。3カ月に1度この施設で行われている、JAHA(公益社団法人 日本動物病院協会)のアニマルセラピー“人と動物のふれあい活動(CAPP コンパニオン・アニマル・パートナーシップ・プログラム)”に参加するためです。

今回のCAPP活動のリーダーで獣医師の菅野晶子さんは、福島の被災地出身の保護犬だった愛犬のウメちゃん(推定10歳)、愛猫のアサリちゃん(12歳)、愛猫のウニオくん(3歳)を、お母様と動物病院スタッフとともに同伴。

そのほかは、ゴールデン・レトリーバーのリンゴちゃん(10歳)、パンナちゃん(6歳)、ラブラドール・レトリーバーの玄太郎くん(12歳)、シェットランド・シープ・ドッグのインディーちゃん(6歳)という、長い付き合いの気心の知れたメンバーが集まっているそうです。

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ウニオくんは落ち着ける袋に入って参加

施設のスタッフとの事前ミーティングが終わると、いざ、18名が待つフロアへ。

ホールに入ると、犬や猫の姿を目にした入所者の顔がふっと明るくなります。

「どこまでもずっと俺のあとをついて来る、すごく利口な犬と暮らしていたなぁ」と、昔を思い出しながら、「おぉ、よしよし」と犬たちを撫でる男性は本当にうれしそうです。

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インディーちゃんを脚に挟んで、昔日のスタイルで撫で撫で

「私はね、猫を飼っていたのよ。かわいい猫ちゃんね~」と、アサリちゃんを抱っこして目を細める入所者の女性の膝で、ゴロゴロと喉を鳴らすアサリちゃん。

菅野さんのお母様によると、「アサリは10年目のベテラン。セラピー活動に入ると、お仕事モードの顔に変わるんですよ(笑)。ずっと動かず、みなさんに身をゆだねているんです。誰にでも撫でてもらうのが大好き」とのこと。まさに、天性のセラピーキャットなのかもしれません。

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アサリちゃんと流れるゆったりとしたひととき

「入所の方でも、犬派と猫派に分かれますね。もちろん、どちらも好きという方もいらっしゃますけど。そういう意味で、セラピードッグだけでなくセラピーキャットが来ると喜ばれるんです」(菅野さん)。


高校時代からの夢を実現して

菅野さんがアニマルセラピーに携わろうと思ったきっかけは、高校時代に遡るのだとか。

高校の社会福祉サークルに入っていた菅野さんは、障害者施設を訪問するなどの活動を行っていました。そんなこともあり、ある新聞記事が目に留まったと言います。

「横浜市の老人ホームで、セラピードッグとの触れ合い活動を開始したら、寝たきりの老人がゼロになったという内容でした。それってすごい! と、高校時代の私の胸が高鳴ったのを覚えています」。

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菅野さんと愛犬のウメちゃん

幼少の頃から動物が大好きで、殺処分ゼロを実現することを目指す女子高生であった菅野さんは、夢を実現するために迷わず獣医大学へ進学。

卒業後は、JAHAの会長を務めたことのある柴内裕子獣医師がいる赤坂動物病院に就職しました。柴内獣医師は、ご自身の愛犬(トイ・プードル)とCAPP活動を行っている、日本におけるアニマルセラピーの先駆的な存在でもあります。

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セラピードッグとの触れ合い

「赤坂動物病院に入ってから、アニマルセラピーに関してさらに学びを深め、すぐに私もCAPP活動への参加を始めました。地元の八王子で活動を初めてからは、20年になりますね」と、菅野さん。

ハイネス憩の丘にも、菅野さんにとっての初代セラピードッグのハナちゃんとセラピーキャットのタラオくんからスタートして、10年以上通っているそうです。

「実はハナは、20年ほど前からCAPP活動を続けている施設のすぐそばで拾ったんです。子犬と一緒にいた、心穏やかなお母さん犬でした。子犬には新しい家族を探して、ハナはうちで引き取りました。どこへ連れ行っても心配のない、セラピードッグとしての適性をすべて兼ね備えたようなコでしたね」(菅野さん)。

ハナちゃんは、推定15~16歳頃までセラピードッグとして活躍したのだそうです。

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真っ白な美犬のハナちゃん

「それに引き換え2代目のウメは、まだ若いからというのもありますが、ほかの犬に興味を持って鼻をクンクンしながら動いてしまったり(笑)。

すべての犬や猫が、動物介在活動に向いているわけではありません。特に猫は、外出自体や、犬と一緒にいることがストレスになる可能性も。慣れる見込みがあるならばゆっくりトレーニングができますが、動物に負担をかけないように活動するのが大切なんですよ」と、菅野さんはアニマルセラピーのむずかしさも教えてくださいました。


笑顔を引き出すセラピーアニマルの力はすごい!

ハイネスの入所者の方々が、希望される犬や猫とマンツーマンでゆったり触れ合ったあとは、犬たちが得意技を披露するお楽しみタイムが始まりました。

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ホール中央での犬たちによる学芸会!

みんなが伏せて待っている姿に、「お~、偉いね~」と感嘆の声が漏れたかと思えば、ゴロンゴロンとダイナミックに転がるパンナちゃんやリンゴちゃんの様子に笑い声が響いたり、子どものようにおんぶされるインディーちゃんを見て驚いたり……。

入所者の方々は、スタッフのみなさんも一緒に盛り上がっていました。

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ゴロンと転がるリンゴちゃん

CAPPのメンバーによると、「たまに同席される入所者のご家族から、『家族に会ってもそれほど笑顔にならないのに、セラピードッグと触れ合うと笑顔が満開です。動物の力ってスゴイ!』と聞くこともめずらしくありません」とのこと。

さらに、施設のスタッフの方からは「さっきまで寝込んでいらしたのに、アニマルセラピーの時間が来ると誰よりも先にホールに向かう方もいるんですよ」とか、「スタッフが頑張っても引き出せない笑顔が、動物たちによって自然に出るんです」という声もよく聞かれるそうです。

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最後はアサリちゃんがハウスに入って「またニャ~」

病院や介護施設に限らず、小学校や幼稚園や保育園など、もっと小さな単位で身近に動物との触れ合い活動を行えるような環境を作りたいと、今後の目標を語る菅野さん。

「CAPPのボランティア活動は、自分が元気をいただけるから続けていけると思っています。本当に楽しいんですよ」と、こぼれる笑顔が、入所者の方々の笑顔とともに筆者の心に残っています。

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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