【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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E721系1000番台・快速「仙台シティラビット」、東北本線・大河原~船岡間
東北地方を北上中の桜前線。
仙台近郊を代表する桜の名所といえば「白石川堤一目千本桜」です。
ココは東北本線の列車と桜、さらには蔵王連峰との共演も楽しめる名所!
見ごろには、大河原~船岡間で、列車の減速運転も行われています。
福島~仙台間を走る、E721系・快速「仙台シティラビット」もゆっくり通過していきました。
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E721系1000番台・普通列車、東北本線・船岡~大河原間
白石川の堤防沿いに続く、桜色の帯は圧巻!
3年前、「白石川堤一目千本桜」と東北本線の線路を挟んで隣接するもう1つの桜の名所「船岡城址公園」が「しばた千桜橋」によって結ばれ、気軽に行き来できるようになりました。
その桜色の帯に沿うように、4両編成のE721系電車がゆっくりと走っていきます。
ちなみに、このE721系(1000番台)の車体にも、「さくら色」の帯が巻かれています。
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網焼き牛たん弁当
さて、仙台を代表する駅弁といえば、何と言っても「牛たん」!
“仙台の駅弁=牛たん”のイメージを持つ方も多いことでしょう。
中でも、大正9(1920)年創業で、仙台駅弁を手掛ける「こばやし」の「網焼き牛たん弁当」(1,050円)は、早いもので発売から30年近いロングセラー駅弁となりました。
紐を引っ張って、蒸気で温める加熱式容器でもおなじみですね。
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網焼き牛たん弁当
【お品書き】
・麦飯 (米は宮城県産環境保全米「ひとめぼれ」使用)
・牛たん焼き
・花人参煮
・万来漬け(胡瓜、大根、人参、みょうが、菊、しその実)
・七味唐辛子
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網焼き牛たん弁当
この駅弁が出た当時、まだまだ仙台の牛たんの知名度は高くなかったといいます。
やがて、この「網焼き牛たん弁当」を手にした方が、仙台から新幹線に乗り込んで、シューッという音と共に紐を引っ張り、辺りの座席に牛たんの美味しい香りが漂うようになりました。
この食欲をそそる音と香りが、仙台の牛たん知名度向上に一役買い、今のような牛たん人気に繋がったとも云われているんですね。
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E721系1000番台・普通列車、東北本線・大河原~船岡間
今年は見ごろが早く、この地域の桜まつりも4/15で終わってしまった所もあったそうです。
各地の桜と鉄道を観ながら感じることは、毎年「同じ桜の景色は無い」ということ。
1年経てば、桜の枝も伸びて花の付き方も変わりますし、車両の世代交代もあります。
私自身、4年ぶりの一目千本桜でしたが、その時とは空の青が違った雰囲気でした。
人生で「ただ一度きり」しか楽しめないのが、“その年の桜”なんですよね。
ちなみに、我が家にはここ15年分くらいの「網焼き牛たん弁当」の上蓋がありますが、駅弁の掛け紙の類も、年を追うごとにデザインが少しずつ変わったりするもの。
実は駅弁もまた“一期一会”の世界なのです。
春が来たら桜、仙台に来たら牛たん。
春の訪れを楽しむように、ご当地を訪ねたら、その土地ならではの味を楽しみたいものです。
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/