【ライター望月の駅弁膝栗毛】
磐越東線・三春駅を出たばかりのキハ110系気動車。
さっそくエンジンを大きな音と共にうならせて、黒い煙を上らせ、登り坂に挑みます。
福島県の中通りと浜通りを結ぶ磐越東線は、去年(2017年)全通100周年を迎えました。
郡山~いわき間は普通列車でおよそ1時間半ですが、通しの列車はわずか5本程度。
多くの列車は、郡山~小野新町間の運行となっています。
三春駅を夕方6時前に出た小野新町行の列車は2両編成。
車内は部活動を終え、家路につく育ちざかりの生徒たちが通路までいっぱいの様子です。
生徒たちのお家では、ご家族の方が、あったかい夕飯を用意されているのでしょうか。
下校列車って、年齢を重ねると、微笑ましくて、何となくいいものに見えますよね。
ま、私自身は1人で帰るほうが好きだったので、わざと遅い列車を選んでいたのですが。
とはいえ、親子で楽しむ食事というのは、誰もが持っている“食事の原風景”。
そんな親子で楽しめる駅弁をコンセプトに、今年(2018年)3月から、郡山駅弁の「福豆屋」が、今年夏ごろまでの期間限定で販売しているのが、「のりのりパンダちゃん」(950円)です。
そう、今や名物駅弁となった「海苔のりべん」の姉妹品が登場!
可愛らしい親子パンダの掛け紙を見れば、思わず気分もノリノリです。
【お品書き】
・白飯(焼海苔、おかか、ごま、梅干、昆布佃煮)
・玉子焼
・焼鮭
・煮物(えびいも、人参ほか)
・きんぴらごぼう
・かまぼこ
・赤かぶ漬
可愛らしい掛け紙を外すと、これまた焼海苔の親子パンダちゃんが登場!
「福豆屋」によりますと、人気の「海苔のりべん」を親子で一緒に楽しめる方法はないかという思いから、昨今のパンダ人気にあやかって登場させたのだそうです。
確かに「海苔のりべん」の美味しさは年齢を重ねると、十分分かりますが、お子さんを連れた若いお母さんには、“懐かしい、レトロ”といった雰囲気の駅弁はハードルが高いですよね。
元々の「海苔のりべん」という駅弁が、社長さんのお母様との思い出から生まれた駅弁。
その意味でも、「親子パンダ」としたところが見事だと思います。
話題性に乗りながら、駅弁のコンセプトにもブレの無い、手に取って気分のいい姉妹品です。
福豆屋の方も「お出かけの時、お子さんもおかあさんといっしょに食べてほしい」とのこと。
大型連休には郡山から「やまびこ」に乗って、上野のパンダを観に行く方もいることでしょう。
パンダの愛くるしさの向こうから、母と子の絆の温かさと駅弁文化を次世代に繋ぎたいというアツい思いが伝わってきました。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/