【ライター望月の駅弁膝栗毛】
奥羽山脈の山並みをバックに大曲へ向かう、秋田新幹線E6系「こまち」。
盛岡~大曲間を結ぶ田沢湖線、そのルーツを辿ると、最初は軽便鉄道なんだそう。
昭和41(1966)年に全通、昭和57(1982)年に電化、平成9(1997)年にはレールの幅が1,435mmになって、東京から新幹線「こまち」が直通するようになりました。
田沢湖線は、日本有数の“大出世”路線でもあるんですね。
東京から大曲までは3時間10分あまり。
大曲駅近くから路線バスで35分ほどの所には、秘湯で知られる「岩倉温泉」があります。
バスの本数も比較的多く、鉄道&路線バス旅好きには、訪れやすい秘湯です。
「岩倉温泉」は去年(2017年)夏の豪雨被害を受け、今年1月、営業を再開したばかり。
ご主人によると、大人の胸くらいの高さの辺りまで水に浸かってしまったのだそうです。
そんな豪雨被害にも負けず、佐竹藩ゆかりの歴史ある温泉はしっかり湧き続けていました。
58.3℃、ph7.7、成分総計4580㎎/kgのナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩泉。
毎分700リットル湧き出すお湯は、男湯・女湯の間にある析出物がたっぷり付着した湯口から豪快に注がれており、浴槽からはどんどん掛け流されていきます。
手触りは少しヌメりがあり、体の芯から温まって、汗がなかなか止まらない効能豊かな温泉。
例年、6月下旬から7月にかけては、ホタルも飛び交うお宿だそうです。
秋田新幹線「こまち」の車内で、今年3月31日から登場した新しい駅弁に出逢いました。
「こまち」の進行方向が変わる大曲から秋田方面へ1駅・神宮寺駅近くに本社を構える「東北醤油」と、日本レストランエンタプライズ(NRE)秋田列車営業支店、さらに秋田米飯給食事業協同組合とのコラボ駅弁「味どうらくの里弁当」(750円)です。
「味どうらくの里」は、秋田では大メジャーな調味料(万能つゆ)!
醤油や麺つゆの代わりに使う方も多いという“秋田県民の味”なんだそうです。
【お品書き】
・味どうらくの里ごはん 錦糸卵のせ(秋田県産米使用)
・味どうらくの里漬込み焼き鮭(秋田県産)
・味どうらくの里で漬けた鶏肉の照焼き
・味どうらくの里で炊いた煮物(人参・椎茸・うずらの卵・筍スライス・三角こんにゃく)
・金平ごぼう
・かまぼこ酢漬
・ごま入り野沢菜
・紅生姜
「味どうらくの里」を入れて炊いた味付けご飯の上に、「味どうらくの里」で漬け焼きした大きめの鮭と、ゴロッとした鶏肉が載っています。
ベースは同じでも、食材の違いで、異なった味わいが楽しめるようになっています。
「秋田米飯給食事業協同組合」が製造、販売はNRE秋田列車営業支店が手掛けます。
駅弁を手掛けるのは初めてという秋田米飯によりますと、春の花見や行楽シーズンに合わせて、観光や帰省される方向けに、去年(2017年)11月から企画を立ち上げたのだそう。
NREや東北醤油の皆さんと何度も試食を繰り返しながら、完成させたということです。
「こまち」の車販のほか、秋田駅では在来線改札内売店の「駅弁屋」で販売されています。
秋田駅の売店では、わざわざ入場券を買って弁当を買いに来られた方もいたそうです。
「こまち」の車内販売や秋田駅のほかに、週末には、秋田県内のショッピングモールなどでも販売されるのが興味深いところ。
750円という比較的手軽な価格帯に設定されているのも、面白いところです。
普段、クルマ社会で暮らしている皆さんにも、“鉄道の食文化”に触れる機会となりそう。
そして旅行者にとっては何より、秋田ならではの調味料を使った味を体感できるのが嬉しい!
この大型連休は、新緑の中を走る“赤いこまち”に揺られながら、素晴らしい温泉と秋田ならではの食文化を体感されてみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/