殺処分寸前の半身麻痺の子猫が、保護猫カフェの看板“美猫”に!

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【ペットと一緒に vol.85】

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本連載で大反響をいただいた保護猫カフェの記事に登場した、あなごちゃん。実は、死の淵から、しらさぎ動物病院の常安有希先生やスタッフの献身的なサポートで奇跡の復活を遂げた猫でもあります。今回は、あなごちゃんを中心に、ハンディキャップを抱えていたために常安家に迎え入れられた保護猫たちのエピソードをご紹介します。


半身マヒの子猫の運命は

保護猫カフェ“しらさぎカフェ”で過ごす常安有希さんに、いつも寄り添っている美猫のあなごちゃんは、昨年の初夏に北関東の動物愛護センターからレスキューされた猫だそうです。

「殺処分の順番が、次に迫っていた子猫です。交通事故に遭ったようで下半身がマヒしていて、正直、先は長くはないと思いましたね。それで、動物病院で預かって『猫が大好きな人たちが見届けてあげるからね』って、治療を開始したんです」と、獣医師として保護猫を多く治療してきた有希さんは振り返ります。

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しらさぎ動物病院に運ばれて13日目のあなごちゃん

あなごちゃんにレントゲン検査をしてみると、背骨がずれていて、横隔膜ヘルニアもあったことが判明。

しかも、喘ぎ呼吸が続き、うんちやおしっこも麻痺のために自力でできません。

ところが予定していた手術の日、胸に飛び出していた臓器がお腹に戻り、呼吸が落ち着いてきたので手術を中止して様子を見ることに。

「とはいっても寄生虫や原因不明の発熱があって、治療の日々は続きました。日に日に弱っていく小さな猫を前にある日『これが最後のごはんかな?』って声をかけながら食事を差し出しました。すると、驚くことにモリモリと食べ始めて(笑)。翌朝から、驚異的な回復を見せ始めたんです」(有希さん)。


奇跡が起きた!

体力を取り戻したあなごちゃんに、レーザー治療や鍼灸治療も取り入れながら、有希さんはできる限りのサポートを施しました。

病院のスタッフも、あなごちゃんが体を動かしたくなるように、手作りおもちゃで遊びに誘ったり、少し離れたところから呼んでみたりと、リハビリに励んだそうです。

「そうしたら、奇跡が! 忘れもしない7月24日、あなごが初めて腰を上げて歩いたんです。っていうか、走ったんですよ。もう、うれしくて、うれしくて」と、有希さん。

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スタッフのあとを追って、初めて歩いたあなごちゃん

(動画は、しらさぎ動物病院のfacebookページ下記リンクからご覧いただけます。
https://www.facebook.com/shirasagi.ah/videos/1423311037724116/

治療とリハビリの成果が実り、あなごちゃんはそれから自力で排泄できるほどになったそうです。

「あまりの美猫ぶりに、保護猫カフェのアイドルと呼ばれるようになったんですよ(笑)」(有希さん)。

当然、あなごちゃんの里親希望者も何人も現れたそうですが、

「この背骨の状態などから考えると、シニア期からは再び自力での排泄が不可能になると予想されます。きっと介護が大変になるので、お譲りはしないで我が家で引き取りました」とのこと。

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「私、カフェのアイドルって呼ばれているみたいだニャ~ン」

もうすぐ1歳になるあなごちゃんは、今はカフェのお客様と一緒に遊んだり、新しく里親募集のためにやってくる子猫の面倒を見たりと、すっかり保護猫カフェの看板猫としての仕事ぶりも板についてきたとか。


ハンディキャップを背負う保護猫たちは……

カフェに併設されている動物病院には、推定15歳の黒猫のクロちゃんもいます。

「クロも、捨て猫でした。片目が見えていなくてハンデを背負っているので、やはり我が家で面倒をみると決めました」と、有希さん。

動物病院の階上の自宅には、同じく黒猫のアロンくん、そして繁殖場の崩壊現場からレスキューされたアメリカン・ショートヘアーのグーグーちゃんがいます。

「グーグーは病気で治療が必要でした。病気の猫ちゃんたちを一般家庭にお譲りするのは、やはりむずかしくなるので、我が家の一員に」。

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常安家で暮らすアロンくん(左)とグーグーちゃん(右)

さらに、2世帯住宅に暮らす常安健介院長の実家にも、保護猫カフェで里親を募集せずに引き取った三毛猫のきなこちゃんがいます。

「きなこは、猫白血病ウイルスに感染していたんです。アロンとグーグー、クロやあなごに感染してしまう恐れがあるので、行き先に悩んでいたところ、夫の両親が『うちは犬しかいないから感染しないよね? おいで~』と言ってくれたんですよ」(有希さん)。

猫白血病ウイルスに対する有効な治療法はなく、きなこちゃんの余命はあと数年。それでも、自分の運命を知る由もないきなこちゃんは、老犬のトムくんと仲良く楽しい日々を過ごしているのだそうです。

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シー・ズーのトムくんとも仲良しのきなこちゃん

「獣医師になったおかげで、こうしてハンデのある猫たちを救うことができるのは心からうれしいです」と、有希さんはゴロゴロと喉を鳴らすあなごちゃんを撫でながら微笑んでいました。

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エプロン姿でカフェに立つ常安有希先生

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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