【ライター望月の駅弁膝栗毛】
吾妻連峰をバックに、会津の中心都市・会津若松を目指す719系電車。
仙台エリアで活躍してきた719系電車も、最近は新型車両への置き換えが進んでいるため、磐越西線の快速列車が随一の花形列車です。
貫通扉に描かれた赤いキャラクターは、会津の赤べこから生まれた「あかべぇ」。
郡山で東北新幹線に連絡して、会津若松への速達輸送を担います。
会津のキャラクター「あかべぇ」となれば、やっぱり磐梯山バックの719系もイイですね。
土・休日の719系電車は、スイーツをいただくことが出来る観光列車として人気を集めている「フルーティアふくしま」も連結して運行されます。
ちなみにこの辺りは、千円札でおなじみ、野口英世博士の故郷として知られる地域。
博士の記念館へは、猪苗代駅から路線バスが運行されており、10分ほどで到着します。
磐越西線の磐梯山を眺めながら、あるいは帰りの東北新幹線で「会津の旅」の余韻に浸っていただきたい駅弁といえば、郡山駅の「三代目小原庄助べんとう」(1,100円)です。
「小原庄助べんとう」は、昭和57(1982)年、東北新幹線の開業記念駅弁として、郡山駅弁の「福豆屋」が発売し、既に35年以上のロングセラーとなっている駅弁。
実はこの6月下旬に3回目のリニューアルが行われ、商品名に“三代目”の冠が付きました。
今回、長年にわたって使われた手提げのボックスタイプの容器から、昔ながらの掛け紙に綴じ紐をかけるタイプに大きくリニューアル。
「福豆屋」によると、最近の物価高騰に加え、列車のみならずスペースの狭いバスでいただく人も増えていることから、あまり場所を取らないタイプにしたのだそう。
その掛け紙には、大正13(1924)年以来続く、「福豆屋」の沿革を記載し、初代から二代目に代替わりした頃とされる会津磐梯山をイメージした絵が描かれました。
一層、磐越西線の車窓にピッタリな駅弁にバージョンアップした格好です。
【お品書き】
(上段)
・焼鮭
・にしん昆布巻
・海老磯辺揚げ
・豆みそ
・鶏肉の酒粕味噌焼
・煮物(人参、竹の子、椎茸)
・なめこそばの実あえ
・手まり餅
(下段)
・しめじご飯 菜の花醤油漬けのせ
・白飯 刻み梅のせ
“三代目”になって、改めて下段が「ご飯の重」、上段が「おかずの重」となりました。
おかずは、メインの焼鮭や会津の酒蔵の酒粕を使った鶏肉の酒粕味噌焼きはそのままに、一部が入れ替わり、従来の海老の天ぷらが一口大の磯辺揚げに。
にしんの甘露煮も昆布巻へリニューアルされ、会津の食文化を織り込みながら、現代の人が「より食べやすい」駅弁を意識したように感じられます。
「福豆屋」によると、今回のリニューアルポイントは、何といっても「手まり餅」!
元々、小原庄助さんだけに“呑兵衛”向け駅弁でしたが、女性ファンも多くなってきたことから
お店初代のルーツである「和菓子」を、何とかして入れたかったといいます。
会津ゆかりの素朴な食材の中で、より輝きを増した「福豆屋」らしさ。
ロングセラー駅弁には、時代に合わせて変わることが出来る、しなやかな強さがあります。
「福豆屋」の初代の方は、磐梯山と猪苗代湖の美しさに魅せられて、磐越西線・猪苗代、翁島(おきなしま)の両駅にも食堂や土産物店を開いていたといいます。
小原庄助さんの民謡のメロディと共に、「福豆屋」の磐梯山・猪苗代への温かい思いも一層伝わってくるようになった「三代目小原庄助べんとう」。
この夏は、磐越西線の車窓から磐梯山を眺めながら、リニューアルされた郡山の名物駅弁を味わってみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/