【ライター望月の駅弁膝栗毛】
鉄道好きには常識ですが、JR中央本線は東京と名古屋を結ぶ路線です。
ただ、直通する定期列車は無く、実質、東京~塩尻間はJR東日本の中央東線、名古屋~塩尻間はJR東海の中央西線に分かれており、列車もそれぞれ松本方面へ直通しています。
そのなか、この夏は信州の観光キャンペーンの一環として、新宿から中央西線の南木曽(なぎそ)まで臨時特急「木曽あずさ」号が、国鉄形の189系電車で運行されました。
逆に名古屋からはJR東海383系電車による特急「諏訪しなの」号が、中央東線・小淵沢まで直通運転されました。
そんな小淵沢の駅弁を手掛ける「丸政」は、中央本線の駅弁文化を担う駅弁屋さん。
この秋は、新宿向けに新作駅弁「内藤とうがらし 新宿焼肉弁当」(1,100円)を開発しました。
丸政は新宿駅向けに製造している「新宿弁当」以来、東京都内で地元・早稲田大学の学生などを巻き込んで展開中の「内藤とうがらしプロジェクト」と共同で駅弁開発を行っています。
今回は、東京駅の「駅弁屋 祭」で実演販売されていたものをいただいてみました。
【お品書き】
・内藤とうがらしの出汁で炊いたご飯
・牛肉の炭火焼
・玉子焼
・煮物(人参、椎茸)
・さくら漬け
・内藤とうがらし
興味深いのは、何といっても「内藤とうがらし」で炊いたご飯!
「丸政」によると、とうがらしで炊いたご飯は出汁が出てうま味だけが残り、辛味は飛んでしまうそうで、私も最初は恐る恐るご飯に口を付けますと・・・ビックリ!全く辛くない!!
「内藤とうがらしプロジェクト」では、内藤とうがらしが風味づけに使われていたという昔の文献から成分分析を行い、アミノ酸のうま味成分が多いことに着目、この出汁ご飯となったそう。
ご飯へのこだわりは駅弁各社によって違うので、駅弁食べ歩きの醍醐味でもありますが、とうがらし出汁のご飯というのは、ちょっと面白いチャレンジですよね。
もちろん焼肉は、丸政が「信州牛御瓣當」で培った炭火焼ですので安定の味。
肉のうま味とご飯のうま味が両方で楽しめるようになっています。
新宿の由来となった、甲州街道の内藤新宿は、信州高遠・内藤藩の屋敷に因んだもの。
その界隈で江戸時代、盛んに栽培されていたのが、「内藤とうがらし」でした。
歴史的な背景を踏まえれば、「内藤とうがらし」は江戸~甲州~信州を結んだ食文化。
街道・鉄道は、人・モノを結ぶだけでなく、文化をも結んできました。
週末、新宿~小淵沢間で運行される快速「ホリデー快速ビューやまなし」は、オール2階建・ボックスシート(普通車)の215系電車による駅弁向きの電車。
いつもより少し高めの視点と、いつもより少し遅めの速さを楽しみながら、内藤とうがらしの歴史に思いを馳せて、中央本線の駅弁旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/