【ライター望月の駅弁膝栗毛】
外房の青い海を車窓の友に、終着・安房鴨川(あわ・かもがわ)に向けてラストスパートをかける、房総ビューエクスプレス・255系電車の特急「わかしお」号。
外房線は、かつての上総・安房国境・勝浦~安房鴨川間の車窓で海が楽しめます。
冬至を過ぎ、新しい年を迎えて、少しだけ力強さを取り戻して来た早春の日の光を浴びて、特急電車の走りも、いく分軽やかに感じられますね。
安房鴨川駅に降り立って5分も歩けば、そこはもう鴨川の海!
昭和40(1965)年に、日本で初めてのサーフィン大会が開かれた鴨川ということもあって、真冬でもサーファーの皆さんの姿が目立ちます。
海沿いの大きなホテルで休暇を過ごす方、あるいは海辺の大きな病院で療養中の方も、この美しい海の眺めに、大いに癒されていることでしょう。
(参考)鴨川市ホームページ
安房鴨川駅弁を手掛ける「南総軒」は、昭和4(1929)年創業の駅弁屋さん。
元々は“南総”の名の通り、上総の南端・勝浦の駅弁屋さんで、昭和47(1972)年の特急「わかしお」号の運行開始に合わせて、鴨川に進出しました。
その南総軒で、昭和30年代から販売されている駅弁が、「あわびちらし」(1,100円)。
ちょっぴり懐かしさを憶える掛け紙と、赤いプラスチック容器が目印です。
【おしながき】
・酢飯
・あわび
・蒸しうに
・ほたて煮
・筍煮
・椎茸煮
・蓮根
・玉子焼き
・ガリ
昔ながらの製法で作られた酢飯の上にはあわびに加え、うに、ほたての海の幸は勿論、玉子焼き、甘辛く煮た椎茸、筍などがたっぷり載っています。
南総軒によると、元々は地元で余った“キズもの”のあわびを使って作った駅弁とのこと。
昔ながらの綴じ紐と掛け紙、少し強めに効いた酢飯、家庭的な甘さの玉子焼き…どれをとっても懐かしくて、味わい深くて、心地よくて、ずっといつまでも守りたい駅弁です。
安房鴨川の駅弁は、駅改札外のNEWDAYSレジ横で販売されています。
255系電車と共に「わかしお」号として活躍するのが、E257系電車。
日中は5両、朝夕は繁忙期は5両を2つ繋いだ10両編成で運行しています。
早春の南房総で春の兆しを感じながら、特急「わかしお」号に揺られて、今年(2019年)で創業90周年を迎える老舗駅弁屋さんの味を楽しんでみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/