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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
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話題のカレンダー『旧暦 棚田ごよみ』
『この時期にカレンダーの話?』と思うかもしれませんが、旧暦と、山の傾斜地に作られた棚田の風景が載っている、『旧暦 棚田ごよみ』というカレンダーが人気を呼んでいます。
平成25年版から発行して、今年で7年目……。
平成31年の旧暦の元日は2月5日(火)なので、いまは、旧暦だと平成30年の〝年の瀬〟なんですね!
旧暦は、明治5年12月2日をもって廃止され、その翌日から明治6年1月1日になり、新暦(太陽暦)に改められました。
近代化に向けて暦を欧米に合わせたのと、もう1つ、明治6年は旧暦のままだと閏月(うるうづき)があり、1年が13ヶ月……つまり財政難だった明治政府が、役人の給与13ヶ月分の支払いを免れたかった、とも言われています。
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写真には美しい棚田がたくさん載っている
そもそも旧暦とは月の満ち欠けを基準とした暦で、月の始まりは必ず夜空に月が見えない「新月(しんげつ)」で、15日か16日が「満月」……。こういった満ち欠けを繰り返して、1年が354日。しかしこれでは季節と日にちが毎年ずれていくので、およそ3年ごとに、ひと月増やした「閏月」を設けています。
そんな「月の満ち欠け」をデザインし、二十四節気・七十二侯も載っている『旧暦 棚田ごよみ』……壁掛けタイプで、毎月の写真は、こちらも時代から消えつつある「棚田」です。
「収穫が少なく苦労が多い『棚田』と、使いづらい『旧暦』、どちらもいま見直されているんですよ」と言うのは、写真家の青柳健二さん・60歳。
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『旧暦 棚田ごよみ』写真家の 青柳健二 さん
青柳さんが棚田に魅せられたのは、1992年のことでした。中国雲南省の奥地、少数民族が暮らす集落を訪ねたとき、簡易宿泊所の窓から見た明け方の風景に思わず息を飲みます。その村は標高1,500mの高地で、雲海が漂うなか、夜明けとともに何千、何万の棚田が現れました。
夢中でシャッターを切っていると、通りかかった農民に「何をやっているのかね?」と聞かれ、「この美しい棚田を撮っているんです」と答えると、「美しい? どこが?」と変な目で見られました。
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雲南省元江県 ハニ族村の棚田
「農民にとって、この棚田は苦しい労働の場でしかないんですね。畦道の幾何学模様や曲線は、自然と人間のぎりぎりのせめぎあいであって、人間の偉大さ、ちっぽけさ、勤勉さ、しぶとさを、あの農民のひと言で気づかされたような気がしましたね」
これがきっかけとなり、青柳さんは中国、ベトナム、ラオス、インドネシアのバリ島、フィリピン、韓国、イラン、スリランカ、ネパール、アフリカのマダガスカルまで、棚田を求めて旅をしました。
その旅の途中、中国や韓国、ベトナムでは、いまだに旧暦が使われて、農業やお祭りに欠かせないことを知ります。その後、日本の棚田にも目を向けた青柳さんは、3ヵ月かけて『日本の棚田百選』をすべて周ってみました。
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岐阜県恵那市坂折の棚田と満月
「棚田の規模では中国雲南省にはかないませんが、たとえば民家の裏に3枚か4枚かの小さな棚田があって、そこを老夫婦が黙々と農作業をしているのを見て、愛おしいと言うか、心を動かされましたね。先祖から受け継がれた棚田を守ろうとしている人たちの姿には頭が下がります」
時代の流れとともに消えつつあった「棚田」と「旧暦」が、平成が終わろうとしているいま、見直されています。棚田の景観は癒しの風景にもなっていて、都会から田植えや稲刈りをしに来たり、ライトアップされたり、棚田での結婚式など各地で様々なイベントが開かれています。太陽をたっぷりと浴びた「棚田米」の美味しさも評判です。
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山形県山辺町大蕨の棚田(上)と福岡県八女市鹿里棚田(下)
青柳さんの棚田を探す旅はいまも続いていて、かれこれ25年になります。
「何でいまさら棚田と旧暦なの? とよく聞かれるんですが、このカレンダーにつけられたキャッチコピーが全て物語っていると思うんですよ」
その言葉とは……『使いづらい、だけど美しい! 季節感のある暮らしを取り戻してみませんか?』
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新潟県十日町市星峠に立つ青柳さん
平成31年版「旧暦棚田ごよみ」
新暦の日付も入っているので日常のカレンダーとしても使えます。
平成31年旧暦一月(睦月)は、新暦2月5日からはじまります。
壁掛型の見開きタイプ。
※旧暦がわかる「ミニブック」が付いています。
イベント情報
改元の年に考えたい『今 なぜ棚田、旧暦なの?』
ゲストスピーカー:青柳健二(写真家)【内容 】
■トークセッション 青柳健二・旧暦チーム
司会:高桑智雄(NPO法人棚田ネットワーク事務局長)
■スライドショー「棚田と旧暦(仮)」青柳健二
■棚田米の試食 お米:石部、稲倉(予定)
■棚田ネット活動報告
■平成31年版「旧暦棚田ごよみ」の販売日時:2019年2月4日(月)旧暦大晦日 18:30〜20:30
参加費:500円
定員:20名(ラジオを聞いた人のために若干座席を用意)
会場:Visionary Work Garage
渋谷区富ヶ谷1-6-10 代々木公園ビル3F
NPO法人「棚田ネットワーク」ホームページ
https://tanada.or.jp
上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ