米沢駅「牛肉道場」(1,250円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.14「松川弁当店」編④)

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

E3系新幹線電車「つばさ」、奥羽本線・高畠~赤湯間

紫のカラーリングが目立つ、山形新幹線「つばさ」のE3系新幹線電車。
平成26(2014)年から登場した現在の塗色は、山形県の鳥「おしどり」の飾り羽根をモチーフに、山形らしく「紅花」にちなんだ黄色・赤がグラデーションで表現されています。
真っ白な雪原に伸びた単線の2本のレールの上を颯爽と駆け抜ける流線型の車体は、遠くから見ても、その鮮やかな姿が目立ちますね。

(参考)JR東日本ニュースリリース・2014年3月4日分

松川弁当店・林真人代表取締役

そんな山形新幹線「つばさ」でもおなじみ、米沢駅「松川弁当店」の駅弁。
山形新幹線は、初の“ミニ新幹線”として、平成4(1992)年7月1日に開業しました。
早いもので開業から、四半世紀あまり。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第14弾、松川弁当店・林真人社長のインタビュー、この1990年代から2000年代の大きな変化について、伺って行きます。

●まずは「新幹線開業」まで頑張ろう!

400系新幹線電車「つばさ」(2007年撮影)

―新幹線開業まで、大きなご苦労があった米沢の駅弁ですが、ちょうど林社長が米沢に戻られたころと重なりますね?

当時、私はふぐを扱える料理屋をやりたくて、東京の専門学校に通っていました。
しかし、父が病気で倒れたために、長男である私が米沢に戻ることになりました。
数年後に迫った山形新幹線の開業に向けて大きな不安がありましたが、まずは新幹線ができるまでは頑張ることにしました。
新幹線で列車がスピードアップしても、(駅弁屋として)頑張れるかどうかは、その段階で、改めて見極めようということで会社に入ったと記憶しています。


―いきなり「駅弁」の現場へ…ご苦労はありましたか?

駅弁の立ち売りで苦労した点は、(特に冬場に)弁当が冷たくなってしまうことでした。
私が最初に携わった頃は、立ち売りの籠に発泡スチロールを敷き詰めて、その上から、毛布にくるんで駅弁を売ったものですが、それでも冷たくなってしまうんです。
お客様から「箸が立たない」とまで言われたこともありました。
だから、少しでも温かい駅弁を食べていただきたいという思いが強くなりました。


●東北初の加熱式駅弁の成功&新幹線開業に合わせ新作開発!

牛肉道場

―確かに冬の米沢は冷えますよね?

じつは、私が戻って来たとき、松川弁当店では1つのプロジェクトが進んでいました。
それは東北地方では初めての導入となる、紐を引っ張って蒸気で温めるタイプの「加熱式容器」を使ったすきやき弁当の開発で、私も参加することになりました。
完成してお客様に温かいお弁当を召し上がっていただけるようになったのは、私自身、駅弁に携わって最初の大きな喜びではなかったかと思います。


―商品開発にも携わって行ったんですね?

加熱式容器の駅弁に続いて、開発を担当したのが「牛肉道場」(1,250円)です。
これは、平成4(1992)年の山形新幹線開業に合わせて登場させました。
「牛肉道場」は秘伝のたれでじっくり煮込んだ牛肉とそぼろの駅弁です。
お陰さまで発売開始以来、お客様から根強い支持をいただくことができました。
いまではすっかり「松川弁当店」の定番人気商品となっています。


●実は「車内販売」が売れる! 山形新幹線(注)

E3系新幹線電車「つばさ」(旧塗装)、奥羽本線・かみのやま温泉駅(2012年撮影)

―山形新幹線が開業して…いかがでしたか?

開業当初は、もの珍しさも手伝って、とても多くの方に山形へお越しいただきました。
新幹線で東京へ乗り換えなしで行けるようにもなりましたので、便利にはなりました。
ただ、駅の停車時間も、お客様の乗車時間も短くなりましたので、(従来と同じような)駅弁として販売するのは、とても難しくなりました。
やはり「2時間」程度の乗車時間がある列車でないと、駅弁は厳しいと感じています。


―ただ、「つばさ」で米沢の駅弁を買い求められる方も多いですよね?

実は山形新幹線には、お客様が車内販売をよく使って下さる特徴があります。
「つばさ」は途中下車されるお客様が少なくて、1度乗ったら東京まで、山形・新庄までとなりまして、乗車時間が長く、車内販売でお求めになるお客様が多いんです。
加えて、何かものを売りに来ると思わず買ってしまう、山形の皆さんの「人の良さ」に助けられている点も大きいと思います。

(松川弁当店・林真人代表取締役インタビュー、つづく)

(注)今年1月のインタビュー時には、まだ車内販売の縮小は発表されていませんでした。
3月16日以降の対応については、来週の記事のなかでご紹介します。

牛肉道場

【おしながき】
・白飯(山形県産はえぬき)
・牛肉煮
・牛肉そぼろ
・煮物(人参、ごぼう、椎茸、絹さや)
・にしん入り昆布巻
・はじかみ
・しそ巻
・醤油漬

牛肉道場

牛肉煮とそぼろ…強力なライバル駅弁と共に切磋琢磨しながら、新幹線がやって来た米沢の駅弁をリードしてきた松川弁当店の「牛肉道場」。
今回、改めていただいて、みそが隠し味という牛肉のコクのある味わいは秀逸!
そして道場には、にしん入りの昆布巻・しそ巻と、米沢らしいおかずが入っているんです。
「牛肉道場」、ご無沙汰してたなぁというアナタ、この機会にまた手に取ってみては?

この「牛肉道場」を送り出した翌年の平成5(1993)年、なんと27歳で「松川弁当店」の代表取締役に就任した林社長は、全国随一のブランド牛「米沢牛」をふんだんに使った駅弁を世に送り出して行きます。
次回は、バリエーション豊かな「米沢牛」駅弁の背景を伺います。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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