【ライター望月の駅弁膝栗毛】
いよいよ「令和」の時代を迎えました。
合わせて日本列島を桜前線が北上、東北から北海道にもようやく春がやって来ました。
先日訪れた山形・霞城(かじょう)公園の桜は、ちょうど見ごろ。
満開のお堀端を、山形新幹線「つばさ」のE3系新幹線電車が駆け抜けて行きます。
令和最初の駅弁膝栗毛は、山形からスタートです。
県庁所在地・山形市の玄関、山形駅。
山形駅は、奥羽本線(山形新幹線)の他、仙台からの仙山線、寒河江(さがえ)方面に向かう左沢(あてらざわ)線の列車が乗り入れるターミナル駅です。
山形新幹線「つばさ」の始発列車も多く、ビジネスはもちろん、蔵王温泉や山寺をはじめとした観光地への拠点として、1日平均1万人あまりの皆さんが利用しています。
(参考)JR東日本ホームページ(各駅の乗車人員2017年度)
山形駅の駅弁を手掛けるのは、「合同会社もりべん」です。
駅近くの社屋には、旧社名「合資会社森弁当部」の文字を見ることができました。
「伊東」「小淵沢」「水戸」「出水」「長岡」「米沢」「松阪」「横浜」「姫路」「修善寺」「富山」「仙台」「一ノ関」「米沢」と巡って来た「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第15弾。
今回は、山形駅弁「もりべん」の厨房にお邪魔します。
今回、厨房にお邪魔して、製造工程を見せていただいたのは、もりべん随一の人気駅弁「山形特選牛めし」(1,200円)。
スリープ式の包装には、具がいっぱい入ったすき焼き鍋とさくらんぼが描かれていて、大きな「牛めし」の筆文字と山形訛りの言葉が躍ります。
さあ、この牛めしは、どのように作られているのでしょうか?
もりべんの社屋2階にある蒸気いっぱいの炊飯室では、山形米・はえぬきの白いご飯が、いい香りに包まれて炊きあがってきたところでした。
この炊き立てのご飯を盛り出すと、機械を使って冷やしていきます。
駅弁のご飯は、保存性を高めるために、炊きたてではなく、まずは冷やすのがポイント。
この冷やしたご飯を、手作業で折に詰めていくのです。
白いご飯が詰められた折にはまず、梅干しや香の物など、おかずを詰めていきます。
これらも箸を使って、1つ1つ手作業。
さらに白飯の上には錦糸玉子が載せられ、少し華やかな彩りに。
横には糸こんにゃく、しめじなどの煮物が載せられていきます。
肉をドーンと載せて一丁上がりの駅弁が多いなか、じつは手が込んだ牛めしなのです。
さあ、お待ちかね、牛肉の登場!
たれのいい匂いがしてきました。
山形県産黒毛和牛を使った牛肉のたれ焼きが、手際よく載せられていきます。
仕上げにもりべん自慢のたれがかけられて、ふたが閉じられます。
スリープ式の包装にもりべんの割り箸を挟み込んで、「山形特選牛めし」の完成です!
【おしながき】
・白飯(山形県産はえぬき)
・牛肉たれ焼き(山形県産黒毛和牛)
・糸こんにゃく醤油煮
・モリアザミとしめじの醤油煮
・錦糸玉子
・赤かぶ酢漬け
・ごましそ巻き
・さくらんぼ酢漬け
牛肉はもちろん、しそ巻きやきらりと光るサクランボの存在が山形らしさを感じさせます。
今回、「山形特選牛めし」を久しぶりにいただいたのですが、以前より牛肉がいい食感!
じつは牛のバラ肉だけを使っていたのを、肩バラ肉とのミックスにしたのだそうです。
首都圏の駅でもときどき見られる駅弁ですが、付添の煮物も1つ1つ手で盛り付けられている様子を見て、作り手の皆さんのあったかさも一緒に味わう駅弁だなぁと感じました。
霞城公園の前を通る奥羽本線は、山形新幹線「つばさ」などが走る標準軌(1,435mm)の線路と仙山線・左沢線の列車が走る狭軌(1,067mm)の線路が並列で敷かれています。
タイミングに恵まれると、新幹線の列車と在来線の列車がすれ違うことも…。
さあ、「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第15弾、次回は、「もりべん」の新作駅弁に注目していきます。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/