黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、株式会社「ものめぐり」の商品ジャーナリスト、北村森が出演。「商品ジャーナリスト」となった経緯について語った。
黒木)今週のゲストは株式会社「ものめぐり」の商品ジャーナリスト、北村森さんです。北村さんは日本のものづくりをテーマに、日本各地を取材していらっしゃるジャーナリストということですが、なぜ“商品ジャーナリスト”なのでしょうか?
北村)以前、ある人が言っていたのですよ。「日本には商品ジャーナリズムがない。よいものはよい、よくないものはよくない。そういうことを1つの価値基準をもって、冷静に分析するような文化が根付いていないよね」と。僕が雑誌の編集長を41歳で辞めて、独立するときに、あるテレビ局のプロデューサーさんが「商品ジャーナリストを名乗りなよ」と言ってくれて。それ以来、11年間“商品ジャーナリスト”という肩書きです。
黒木)商品ジャーナリスト。よい悪いだけではなく、きちんとしたものの価値や、商品は東京だけではなく日本各地に、いろいろなものがあるのだということを教える。
北村)教えるというのはおこがましいですけれど、「これはこういう見方をすれば商品の持ち味がわかるのではないか」とか、あるいは「何でこの商品はこうなっていないのか」とか。最近だと北陸の富山に行って、銅の器や銅の板に着色する工場を取材して来ました。
黒木)銅に着色する工場。
北村)そう。そもそも僕は、着色とは何かもわからないのですよ。聞いたら、「これは熱や薬品の力で銅を化けさせることです」と。それをどうやって伝統工芸の世界で、いまの21世紀に根付かせる商品にして行くのかを取材したり。あるいは、「これは日本一のさくらんぼではないか」と思った農園主に、よそとどこが違うのか、何をするとこんなにぷっくりして美味しい官能的なものになるのか、話を聞いたりしています。ものを作る、育むということはどういうことなのかを見据える、そんな感じです。
黒木)ものすごい数ですね。いま伺っただけで、さくらんぼから銅まで。
北村)そうです。言ってみれば、消費者がお金で買えるものすべてに、何とか目端を利かせたいなと思っています。
黒木)どういうものかを教える。
北村)伝える。ものを書いたり、ラジオやテレビで喋って、みなさんの使いっぱしりだと思って「こんなものを見て来ました」、「これはこう捉えるといいのではないか」ということをお話ししています。
黒木)そうしたら生産者など、いろいろな人たちや地方の活性化にもなりますし、原動力にもなるわけですよね。
北村)埋もれている商品を見つけたときの喜びは大きいですね。
黒木)埋もれたものとは、例えばどんなものがありますか?
北村)中小企業は、広告宣伝費をそれほどかけられないのですよ。「200%トマトジュース」というものがあって、埋もれていたと言うか、発売された直後のものをたまたま見つけたのです。三重県にある「トマトジュースとは甘さだ」と考えたトマト農園主が、7時間以上トマト果汁を煮詰めて、半分の量まで持って来るのですよ。それを丁寧に濾す。そうすると理屈上、200%ではないかと。そのジュースの価値とは何なのか、そもそもそうやって農業にいそしんでいる方が、そういうものを作るのはどういうことなのかと、僕自身が学んで伝えました。そうすると人気が出た。それは人気が出るだろうなと思いましたけれどね。僕はあくまで、売れればいいということではなく、「こんな商品がある」とただ単に伝えるだけです。独立したときから、来た仕事は断らないと決めているのですね。そうすると徐々に、例えば自治体だったり、千葉の企業だったり、商工団体から「一緒にものを作ってくれ」と言われることがある。そのときはジャーナリストを離れて、自分もプレイヤーとして「こうやって作るべきだ」と、飛び込んで行くケースもあります。
北村森(きたむら・もり)/株式会社「ものめぐり」商品ジャーナリスト
■1966年、富山県生まれ。慶應義塾大学卒業。
■1992年、日経ホーム出版社に入社。編集者兼記者として活動。
■2005年、「日経トレンディ」編集長に就任。2007年からは発行人を兼務。「消費者がお金で買えるもの全てをテーマに据える」を旗印に、低落傾向にあった販売部数を大きく立て直すことに成功。
■2008年に独立、フリージャーナリストの道へ。また編集者として活動する傍ら、メディアにも積極的に出演。2017年にはサイバー大学IT総合学部教授に就任。
■現在は、取材した日本のものづくりのいまを雑誌やWebで執筆する他、メディアにも数多く出演。海外も含め多忙な取材活動を行っている。
ENEOSプレゼンツ あさナビ(9月30日放送分より)
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 6:43-6:49
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳