【ライター望月の駅弁膝栗毛】
京王線の有料座席指定制列車「京王ライナー」。
下り列車は、平日夜8時以降の運行ですが、土休日は新宿16時20分発の京王相模原線直通・橋本行きから運行が始まります。
新宿のまちをいっぱい歩いて、駅直結の京王百貨店でいっぱい買い物をした後でも、ゆったり座って、家路につくことができるのは、とても有難いですね。
この時期、大きな手提げ袋を持って、京王百貨店新宿店から出てくる方の多くは、恐らく21日(火)まで開催中の「第55回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」に行ってきた方。
帰りの列車は、全国各地から集まった駅弁屋さんの実演駅弁、あるいは輸送駅弁、さらには全国のご当地の味を、我が家でいただくのが楽しみでたまらないひとときです。
今回も、この駅弁大会を手掛けている、京王百貨店新宿店・堀江英喜統括マネージャーのインタビュー、続編をお届けします。
●2020年ならではの「駅弁大会」を!
―「カニ駅弁対決」に加えて、今回もさまざまな“対決”シリーズがありますね?
「金」や「メダル」にこだわった「黄金の駅弁対決」もやります。
神戸駅弁・淡路屋さんの「ひっぱりだこ飯」は、従来も「金のひっぱりだこ飯」がありましたが、今回は「銀」の器も作っていただき、金・銀に合わせて、従来の壺型容器を「銅」に見立てて、3つの色の器をお楽しみいただけるようにしました。
一方で、牛肉駅弁の人気は根強いものがありますので、米沢駅弁・新杵屋さんには牛肉どまん中の新作「ビビンバどまん中」、佐賀県・武雄温泉駅の「カイロ堂」さんには、佐賀牛の希少な部位である「ザブトン」を使った3種の牛肉弁当を作っていただきました。
―注目の駅弁、敢えて1つ挙げるなら?
おなじみ、横川駅・荻野屋さんの「峠の釜めし」でしょうか。
今回は50回大会以来5年ぶりに、特別に“店内調理”で販売します。
これまでお昼時に大変お待たせしてしまい、完売しておしまいということも多かったんですが、店内調理をしていただくことで、お客様がお待ちいただく時間を軽減することができました。
さらに夕方時間帯でも、お客様にお求めいただけるようになりました。
●おかずのディテールにもこだわった「復刻駅弁」!
―今回、作るのが大変だった駅弁はありますか?
昭和39年にちなんだ、「復刻駅弁対決」の“復刻”です。
名古屋の「松浦商店」さんには、「復刻版 とり御飯」を作っていただきましたが、このなかで、当時は当たり前に使われていた、鶏肉の「チューリップ」を復刻させるのが大変でした。
昔はお弁当のおかずにも、骨の先に花が咲いたような、鶏肉のチューリップが当たり前のように入っていましたよね?
―いまは「チューリップ」、ないんですか?
鶏肉の「チューリップ」は、作るのにとても手間がかかるんです。
ですので、いまではほとんどなくなってしまいました。
さらに、昭和39(1964)年当時を知る方も、だんだんと少なくなってきています。
掛け紙をはじめとした見た目の復刻だけでなく、できるだけ当時のものに近づけるように、中身の復刻にもこだわりましたので、本当に苦労しましたね。
●駅弁大会では「食べくらべ」を楽しもう!
―堀江さんとしては、今回が統括マネージャーとして初めての駅弁大会だったそうですが、ご苦労も多かったのでは?
前任者が作った流れを引き継ぎながら、去年(2019年)6月からやってきました。
コチラの思いと、取引先のみなさんの考えをすり合わせていくのが難しかったです。
私自身としては、各地で頑張っておられる家族経営のような小さい駅弁屋さんにも、駅弁大会を通じて、もっとスポットライトを当てていきたいと思っています。
ただ、それぞれのお店の事情で、残念ながら出店が叶わなかったお店が何軒もありました。
―お客様には、どんな形で、この駅弁大会を楽しんでいただきたいですか?
これほどの種類の駅弁が一堂に会することは、ほとんどありません。
まずは、「食べくらべ」を楽しんでいただきたいと思います。
そして、1度ではまず全てを網羅することはできませんので、1度と云わず、ぜひ何度でも足をお運びいただきたいと思います。
オリンピックイヤーですから、お時間のある方は“5回”以上お越しいただけたら嬉しいです!
(京王百貨店新宿店・堀江英喜統括マネージャー、インタビューおわり)
昭和12(1937)年発売の「親子めし」をルーツに持ち、現在は「天下とり御飯」の名前で販売されている名古屋・松浦商店随一の歴史を誇る駅弁「とり御飯」。
今回は「復刻版 とり御飯」(1080円)として、実演販売が行われています。
昨年、松浦商店に伺って歴代の掛け紙を見せていただきましたが、今回は昭和30年代に使われていた掛け紙をベースに復刻されたことがわかります。
【おしながき】
・とりご飯(鶏だし炊き込みご飯・鶏そぼろ・玉子そぼろ)
・チキンカツ
・鶏肉チューリップ
・鶏肉の牛蒡巻き
・煮物(蓮根・椎茸・うずらの卵)
・玉子巻き
・蒲鉾
・なます
・おひたし
・香の物
レトロな掛け紙を外すと、おなじみの「とり御飯」が登場!
鶏だしで炊き込まれたごはんが足りなくなってしまいそうなくらい、たっぷり載った鶏&玉子のそぼろも健在です。
ちなみに、この掛け紙が残されていた昭和30年代当時の「とり御飯」の価格は「100円」。
ロングセラー駅弁の掛け紙は、貨幣価値の変化も分かる、歴史的な資料とも云えそうです。
昭和39(1964)年は、新幹線が開業し、日本の鉄道界にとっても、大きな変化があった年。
駅弁もまた、「列車の高速化」という、新たな時代の波との闘いが始まった年です。
東京~名古屋間で言えば、昭和39(1964)年の開業当時「ひかり」で2時間29分でしたが、いまの「のぞみ」は、ほぼ同じ所要時間で、新大阪に到着してしまいます。
そんな時代の荒波を乗り越えて生き残ってきた駅弁であることに思いを馳せていただくと、より一層、美味しくいただくことができることでしょう。
京王の駅弁大会特集、会期中はさまざまな駅弁をご紹介していきます!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/