【ライター望月の駅弁膝栗毛】
平成29(2017)年から、架線のない男鹿線で活躍するEV-E801系電車「ACCUM」。
JR九州BEC819系電車(DENCHA)をカスタマイズして作られたバッテリーで走る電車です。
東日本には栃木の烏山線で活躍する「ACCUM」がいますが、こちらは直流の電気に対応。
交流電化区間の蓄電池電車は、九州で開発されたこともあり、大きなLEDの行先案内など、東日本にいながら、見た目は“九州っぽい”雰囲気を感じることができる車両です。
(参考)JR東日本秋田支社ニュースリリース・2015年11月20日分
一方、男鹿線では、まだ国鉄時代からのキハ40・48形気動車も活躍しています。
特に朝夕は4~5両の比較的長い編成を組んで、登下校の高校生たちをいっぱい乗せて、秋田~男鹿間を往復する気動車列車もあります。
ただ、2020年度以降、男鹿線もEV-E801系電車で統一されることが発表されています。
新型のバッテリー電車と旧型の気動車の共演が見られるのも、いまのうちです。
(参考)JR東日本秋田支社ニュースリリース・2019年12月3日分
そんな男鹿線ゆかりの駅弁と言えば、「男鹿しょっつる塩焼きそば」(780円)。
男鹿には、日本三大魚醤のひとつとされる「ハタハタしょっつる」を使った、「男鹿しょっつる焼きそば」というご当地グルメがあります。
製造する「関根屋」によると、平成30(2018)年に「男鹿のナマハゲ」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを記念して開発された駅弁で、スリーブ式の包装にも謳われています。
(参考)男鹿市ホームページほか
【おしながき】
・焼きそば
・目玉焼き
・揚げ海鮮ボール
・筍
・パプリカ(赤・黄)
・紅しょうが
魚醤の「しょっつる」がベースということもあって、普通のソース焼きそばとはひと味違った、女性のみなさんに人気のタイ料理・パッタイのようにも感じられるユニークな味わいです。
冷めても美味しい麺を実現すべく、海藻を練り込んだことで、そばはツルっとした食感。
加熱式容器としなかったのは、魚醤の再加熱による生臭さを回避するためなんだそう。
小麦麺、魚醤という難易度の高い食材を活かし、見事、「駅弁」の焼きそばに仕上げました。
もちろん、レンジ対応容器となっていますので、お好みでチンしていただくことも可能です。
雪が降りつける船越水道を、男鹿線のディーゼルカーが渡って行きます。
橋梁から見える八郎潟の防潮水門は、男鹿線を代表する車窓のひとつです。
水門の向こうには調整池と、戦後、オランダの「技術協力」で干拓された農地が広がります。
昔の八郎潟はどんな風景だったかと思いを馳せる一方、「戦争に負ける」ことは、結果的に日本で2番目に広い湖を差し出さなければならないほど、残念なことであるとも感じました。
漁場を奪われた漁師のみなさんの悔しさ、ゼロから開拓に取り組んだ農家の方のスピリット。
水門1つにも、さまざまな人の思いが交錯しています。
(参考)大潟村ホームページ
男鹿線の列車は、追分から奥羽本線に乗り入れ、全て秋田発着で運行されています。
奥羽本線の秋田~土崎間には、令和3(2021)年3月をめどに、新たに「泉外旭川(いずみそとあさひかわ)」駅が開業することも発表されました。
男鹿線の列車が電車化されると、秋田周辺の普通列車も、概ね3ドアの「電車」で統一。
秋田の鉄道風景もまた、変わっていきそうです。
(参考)JR東日本秋田支社ニュースリリース・2020年2月20日分
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/