何が住んでも不思議のない書店『青猫書房』の魅力
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
東京・北区赤羽。JR赤羽駅東口を出て、まっすぐ歩いて行くと、「ララガーデン」という赤羽スズラン通り商店街があります。
長いアーケードから、道を2つほど入った住宅エリアとの境に、4階建ての白いお洒落なビルが見えて来ます。その1階にある『青猫書房』という、子どもの本屋さんのお話です。
店主の岩瀬惠子さんは、66歳。赤羽で生まれ育った、根っからの赤羽っ子です。
若いころは港区の公務員をされていて、赤坂図書館に勤務し、日比谷図書館で研修を受けました。絵本や児童書とはどんなものなのか、それを身につけたのが、このころでした。
仕事にやりがいを感じていた7年目、人事異動の話が……。
「結婚して子どもが欲しかったので、勤めを辞めたんです。そうしたら3人の子に恵まれて、それからは、しばらく絵本や児童書を子どもたちと楽しむ日々が続きましたね」
惠子さんは3人兄弟の真ん中で、兄と弟がいました。ところが、32歳のときに3つ上の兄が、さらに35歳のときには4つ下の弟が、病気で亡くなってしまいます。
あまりに突然のことで、両親が悲しみに暮れてしまいますが、それを慰めてくれたのは、幼い3人の子どもの笑顔でした。
子育てが一段落した40代、惠子さんは測量会社に就職。経理事務の傍ら、何と「測量士」の資格まで取りました。よく工事現場で、小さな望遠鏡を覗いていますよね。忙しいときは惠子さんも現場に立って測量するそうです。
50代になると、両親が持っていた土地の相続対策で、マンション経営の話が持ち上がります。そこで惠子さんは、自分の今後の人生を考えます。
2階から上を賃貸住宅にして、1階は自分が自由に使えるスペースをつくれないものか……。そのときも、本屋さんのことは夢のまた夢でした。
「児童書の出版社『童話屋』の田中社長と話をする機会がありました。高校の先輩だったので、冗談半分で『素人には本屋なんて無理ですよね?』と聞いたら、田中さんが『本当にやりたいなら応援するよ』と言ってくれて、その一言で本気になってしまったんです」
惠子さんは都内でも珍しい、木造4階建のビルを建てます。
「赤羽は気さくで飾らないお店が多いんですが、あまり文化的な場所がないので、赤羽っぽくない、ちょっと目立つ木造のビルを建てたんです。でも、かなり予算オーバーしてしまいました」
周囲の応援もあって、2014年12月に『青猫書房』を開店。ところが翌年の6月、出版取次の会社が倒産! 事前に渡していた保証金が半分しか戻らず、いきなりの試練が待っていました。
「店を始めて最初の2~3年は必死でしたね。本屋さんの経営は、構造的に利益を出すのが難しいんです。それなのに黒字にしようと頑張ったら、辛くて苦しくて面白くなくて、ストレスで体調を崩してしまいました。このままでは、兄や弟のように死んでしまう……。そこまで追い詰められたときに思ったんです。『この店は本が好きで始めたんだ! 私の〝道楽〟だと思って、楽しくやろう!』と。そう開き直ったら、気持ちがすっと楽になりました」
惠子さんは、普段は測量会社で働き、お店に立つのは週末が中心。平日の店番は娘さんが担当しています。この仕事をしていて、嬉しいことも待っていました。
「お母さんにおんぶされていた赤ちゃんが、いつの間にか大きくなって、ランドセルを背負ってお店に来てくれたことですね!」
『青猫書房』のパンフレットに、素敵な文章を見つけました。その一文をご紹介します。
『「子ども」と「大人になった子ども」のみなさんへ。
東京、北の果て赤羽、荒川近く。子どもの本「青猫書房」は、ひそやかに営業しております。
河童も狐も青猫も、はたまた魔女やら妖精、鬼までも。何が住んでお茶をしていても不思議のない書店。
庭に根付いたオリーブとハナミズキの木の下で、どんなものが集うのか。是非一度お遊びにいらして下さい』
■子どもの本『青猫書房』
電話:03-3901-4080
住所:東京都北区赤羽2-28-8 TimberHouse 1F
営業時間:
・夏季(4月~9月)11時~19時
・冬季(10月~3月)11時~18時
・火曜定休
ホームページ https://aoneko-shobou.jp
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