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写真家・小島康敬が10代で「人生は短い」と悟ったきっかけ
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
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写真家・小島康敬さん
人生は長いのか、短いのか……。今回ご紹介する小島康敬さんは、若くして「人生は短い」と知り、生きる道を変えた方です。
東京の目黒区に生まれ育った小島さんは、現在43歳。体育と美術が好きな子供でした。
高校はラグビー推薦で、名門・国学院久我山へ。センターバックとして期待されますが、1年目に足首を怪我し、それが治らないまま、不完全燃焼で高校時代を終えます。
国学院大学に進学すると、ラグビーから離れ、アルバイトで貯めたお金で世界中を放浪する旅に出ます。カメラが好きで、旅先の写真を撮るのが趣味でした。
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New York(写真提供:小島康敬)
大学を卒業し、一般企業に就職するものの、28歳で小島さんは大きな決断をします。
「趣味ではなく、写真家として人生を歩いて行きたい」
なぜ、そう思ったのでしょうか?
「人生は永遠に続くと思っていた10代のころ、中学と高校の2人の親友を亡くしたことが大きかったですね。人生は短いのだとわかって、自身のやりたいことを貫いて来ました」
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Tokyo(左)、New York(右)(写真提供:小島康敬)
小島さんは、写真の本場であるニューヨーク「国際写真センター」の写真学校で、1年間、写真の技術を学びます。卒業した年に、小島さんはサラリーマン時代に知り合った女性と結婚しますが、生活は別居婚状態……。
「1年で帰ると言いながら、『あと2年だけ!』を3回使いました。奥さんから〝詐欺師〟と言われましたね」と、小島さんは笑います。
結局、7年の月日をニューヨークで暮らした小島さんですが、この間、カメラを人に向けられないという苦しい時期もあったそうです。
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Tokyo(写真提供:小島康敬)
写真家としてスタートした、2007年。バージニア工科大学で、銃乱射事件が発生します。容疑者のアジア人学生と小島さんの顔が似ていたことから、街で指を刺され、白い目で見られて、写真が撮れなくなってしまいました。
さらに、ニューヨークに滞在するためのビザのことや、お金の心配、さまざまなストレスが重なって、パニック障害を発症してしまいます。
その後から小島さんの作風が変わります。被写体が建物や風景になり、そこに人の姿はありません。
「なぜ人は大都市に住むのか、という単純な疑問がありました。ニューヨークや東京には、人を惹きつける何かがあって、大都市の持つ欲深さに興味が生まれて行ったのです」
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Tokyo(写真提供:小島康敬)
ニューヨーク生活5年目の2011年、文化庁の新進芸術家海外研修制度に受かり、奨学金を得たことで、奥さんと生まれたばかりの長女を呼び寄せることができました。家族と暮らすことで、心に安らぎが生まれます。
その後、小島さんは数々の写真コンテストで受賞し、ニューヨークと東京で個展を開催。待望の写真集も出版します。その写真集の編集者がドイツ人だったことから、2015年、活動の場をベルリンに移します。
「ベルリンはみんな急がない。街のリズムがゆっくりだけれど、ゆるすぎない。そんな生活スタイルが、いまの自分に合っています。収入はベルリンの建築事務所から、ビルなどの建築物を記録用に撮影する仕事で得ています。息子も生まれ、4人家族になり、貧乏ながらも充実した生活です。でも、僕みたいな夢を追う者が家族にひとりでもいると、周囲にひどく迷惑を掛けることを知りました。早く恩返しができるよう、精進したいですね」
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New York(左)、Tokyo(右)(写真提供:小島康敬)
そんな小島さんの夢は、ニューヨーク近代美術館(MoMA モマ)と、ロンドンの近現代美術館「テート・モダン」に、自分の作品が所蔵・展示されること。
「妻からは『孤高でいて』と、ずっと言われていました。人と違うことをしているのだから、自分の信念を貫き通せ、ということだと思います。友の死、親の支援、そして妻の応援があったからこそ、写真家としての、いまの自分があると思っています」
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個展「Unconscious|Berlin」
■小島康敬さんの公式サイト
https://yasutakakojima.com
■小島康敬 個展「Unconscious|Berlin」
日時:9/28(月)~10/4(日)
展示:フォトギャラリー「Place M」
住所:東京都新宿区新宿1-2-11 近代ビル3F
■グループ展『東京好奇心2020渋谷』
※小島康敬さんも写真を出展
日時:10/20(火)~11/12(木)
展示:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
グループ展 公式サイト
http://www.tokyocuriosity.jp