あけの語りびと

プロボクサー・ナァツ選手 一度は辞めたジムで初めての新人王に

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

プロボクサー ワチュク・ナァツさん

JR青梅線、拝島と福生の間に「牛浜」という駅があります。その駅を降りて、5分ほど歩くと、住宅街に「マーベラスボクシングジム」が見えて来ます。

このジムを経営するのは、岡橋勲さん・63歳。リングの周りでは、サンドバッグやパンチングボールを相手に、練習生が汗を流しています。

そのなかに、ひときわ目をひくボクサーがいます。太い腕、厚い胸板、見事に割れた腹筋、そして汗が光る褐色の肌。

彼の名は、ワチュク・ナァツさん。父親はナイジェリア人、母親は日本人で、1997年に福生市で生まれた、23歳のプロボクサーです。小学生のころはサッカー少年でしたが、中学では不良の道へ……。

「友だちと遊ぶ方が楽しくなって、サッカーは中2でやめました。夜遊びに明け暮れ、学校へはほとんど行きませんでした」と笑う彼の左の目尻に、ふた粒、涙のタトゥーがあります。

写真提供:マーベラスボクシングジム

「アメリカに大好きなラッパーがいて、彼をマネして、14~15歳のときにタトゥーを入れました。いやぁ、父親にめちゃくちゃ怒られましたね」

中学3年のとき、格闘技好きの父親に連れられてジムに来ますが、正直なところ「かったるいな……」と思ったそうです。そんな態度の彼を見て、岡橋会長は「続かないだろうなと思ったら、1ヵ月で来なくなりましたよ」と語ります。

中学を卒業して、16歳のときは何もせずプラプラと過ごし、17歳から友人の紹介で、道路の工事現場で働き始めます。そのころから、彼の心が次第に変わって行きます。

「仕事が終わって家にいると、暇を持て余して、刺激のあることをしたくなったんです。あと、有名になりたくて……」

そこで、再びマーベラスボクシングジムの門を叩きます。

写真提供:マーベラスボクシングジム

岡橋会長は、そのときの様子を振り返ります。

「プロになりたいと真剣な目つきで言って来たので、お前だったら努力次第で日本チャンピオンになれる、と励ましました」

19歳で本格的にボクシングを始め、20歳の春にプロテスト合格。その秋のデビュー戦は得意の左フックで、3ラウンド、TKO勝ち。その後も快進撃が続きます。

2018年、「東日本新人王」のミドル級で優勝し、東西のチャンプが日本一を争う「全日本ミドル級新人王決定戦」で、判定の末に勝利をもぎ取ります。マーベラスボクシングジムにとって、初めての新人王でした。

いままでの戦績は、8戦6勝(3KO)2分。負けたことがありません。ランキングは、日本ミドル級13位。

写真提供:マーベラスボクシングジム

現在は羽村市の「北将建設」に勤務し、仕事が終われば6時からジムでトレーニング。縄跳び、パンチングボール、シャドーボクシングで体が温まると、岡橋会長を相手に「ミット打ち」が始まります。

練習が終了するのは夜9時半。呼吸が乱れ、ロープに体をあずけたまま、しばらく動けません。

「奴ほど練習をするプロはいないと思うよ。朝はランニングをして、1日、工事現場で力仕事をして、その後にトレーニングだからね」

どんなに練習が辛くても、彼は弱音を吐きません。

「朝のランニングにお父さんが付き合ってくれるし、試合にはお母さんが見に来てくれる。会社の社長や職場の人たちが、大勢で応援に来てくれるし、岡橋会長やジムの仲間も僕を支えてくれる。試合に勝ったときの、みんなの喜ぶ顔を見るのが僕はいちばん嬉しい。だから、どんなに辛い練習も乗り越えることができるんです」

写真提供:マーベラスボクシングジム

ナァツ選手の次の試合は、11月7日、後楽園ホールで行われます。ノンタイトル戦ですが、対戦相手は、WBOアジア太平洋スーパーウェルター級王者の井上岳志選手・30歳。世界チャンピオンに最も近い相手に、「もちろん勝つ自信はあります」と余裕の笑みを浮かべます。

涙のタトゥーが嬉し涙になるのか……11月7日、最強の相手に挑みます。

写真提供:マーベラスボクシングジム

■マーベラスボクシングジム
会長:岡橋勲
住所:東京都福生市志茂139
電話番号:042-552-9063

マーベラスボクシングジム・公式ブログ
https://ameblo.jp/akihikog/

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上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

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