【ライター望月の駅弁膝栗毛】
コロナ禍にあって、元気な列車といえば「貨物列車」。
人が動けなくても、物を動かすことは、日本の元気につながります。
その貨物列車の先頭に立ってきた機関車も、世代交代が進んでいます。
全国の非電化区間を中心に活躍してきた、国鉄生まれのDD51形ディーゼル機関車も、定期的に見られるのは、名古屋周辺の一部となりました。
国鉄生まれの車両は、全国の主要路線で活躍できる汎用性も1つの特徴。
平成30(2018)年の西日本豪雨で運行できなくなった山陽本線の貨物列車の代替として、非電化の山陰本線経由で貨物列車が運行されたのは記憶に新しいところです。
また10年前(2011年)の東日本大震災では東北地方へ石油を運ぶため、同じく非電化の磐越西線経由で貨物列車が運行されました。
近年は貨物列車での運行が中心となっているDD51形ディーゼル機関車ですが、かつては旅客列車でも先頭に立っていました。
とくに、15年前の平成18(2006)年まで、山陰本線経由で東京~出雲市間に運行されていた、寝台特急「出雲」は、ご記憶の方が多いかも知れません。
平成10(1998)年までは、出雲市の先・浜田まで、毎日足を伸ばしていたんですよね。
そんな鉄道好きの心をくすぐる掛け紙の駅弁が、2020年の年末から登場しています。
三重県・紀勢本線の松阪駅弁としておなじみ「新竹商店」のロングセラー駅弁、「元祖特撰牛肉弁当(紀勢貨物と桜)」(1500円)です。
2010年代前半まで、紀勢本線でも活躍していたDD51形ディーゼル機関車が重連で牽引する貨物列車と満開の桜がコラボレーションした掛け紙となっています。
【おしながき】
・白飯(三重県産コシヒカリ)
・黒毛和牛ステーキ風
・ポテトフライ
・かまぼこ
・ごぼう
・れんこん
・昆布しぐれ煮
・香の物
「元祖特撰牛肉弁当」の鉄道掛け紙シリーズも、第27作となった「紀勢貨物と桜」。
貨物列車は毎日走っていても、桜とコラボできるのは、1年でもほんの一瞬です。
いつもの風景といまだけの風景を押さえた写真同様、いつもの味といまだけの掛け紙。
この日常と非日常の組み合わせが重なることが、定番駅弁の魅力を一層高めることに、つながっているように感じます。
DD51形ディーゼル機関車の「重連」といえば、平成27(2015)年まで、上野~札幌間で運行された、寝台特急「北斗星」も忘れることができません。
定期列車として運行される夜行列車もまた、日常と非日常のコラボレーション。
毎日走っていても、車内では乗客1人1人の“非日常”が展開されています。
だからこそ、いまなお「夜行列車」という響きに、多くの人が魅せられるのかも知れません。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/